11:45 〜 12:00
[STT36-10] 新幹線の既設光ファイバーケーブルを用いたDASによる早期地震諸元推定手法の開発
キーワード:DAS、EEW、新幹線、既設光ファイバーケーブル
新幹線の地震計で使われている早期地震警報(EEW)の地震諸元推定アルゴリズムは、単独観測点のデータのみを用いて震央距離やマグニチュードなどを推定している。単独観測点での処理は、推定精度が悪いデメリットがある一方、即時に警報を発令できるメリットがある。新幹線のEEWアルゴリズムは、沿線(約20km毎)や海岸に設置された地震計で取得したP波初動直後の短いデータ(通常1~2秒)を用いて地震諸元を推定する。しかしながら、震央距離は倍半分、震央方位は±30°、マグニチュードは±0.6程度の推定誤差があり、出力される警報は観測点毎の推定結果に依存する。
Distributed Acoustic Sensing(DAS)は、光ファイバーケーブル内の不純物で散乱する散乱光の位相変化を用いて、ケーブルに沿った歪み変化を計測する。本技術は数m毎にデータを計測できるため、ほぼ同時刻(例えば0.5秒以内)に地震波を複数点で検知することが可能である。したがって、複数観測点のデータを用いた震源決定手法を適用できること、さらに各点のデータを用いて推定したマグニチュードの結果を統計的(例えば、平均や中央値など)に評価することができ、警報の高精度化に繋がる可能性がある。本研究では、新幹線の既設光ファイバーケーブルを用いたDASによって取得した地震データを使用し、地震波検知後、迅速に地震諸元を推定する手法を紹介する。
九州新幹線沿線の既設光ファイバーケーブルにDASを適用し自然地震観測を実施した(Katakami et al., 2024)。観測期間は、2022年1月から2月、2023年2月から3月、2023年12月から2024年4月であり、2022年は新八代駅から新大牟田駅の約75km、2023と2024年は新八代駅から久留米駅までの約100kmの既設ケーブルを使用した。DASはAPセンシング社のものを使用し、interrogatorを最南端の新八代駅に設置した。
本発表では、リアルタイムで震源とマグニチュードを随時推定する手法を開発した。また、早期警報に使用するために、計算コストをできるだけ抑えることにも注意した。Yin et al. (2023) において、DASで計測されたひずみ速度、マグニチュードおよび震源距離の回帰式が示されている。九州新幹線沿線のDAS観測で取得した地震データのP波到来時刻から1秒間の最大ひずみ速度と、震源距離、気象庁マグニチュードの値を用いて上記回帰式のパラメータを設定し九州新幹線沿線のDASデータにおけるマグニチュードスケーリング式を算出した。震源をリアルタイムで決定するために、STA/LTAを基本としたP波到来時刻およびS波到来時刻をロバストにリアルタイムで決定する手法を開発した。読み取ったP波の到来時刻が10チャンネルを超過すると、hypomh (Hirata and Matsu’ura, 1987)を用いて震源決定し、推定した結果を初期値として入力する。次にP波を検知したチャンネル数が20を超過すると再度hypomhで震源決定し初期値を更新する。これを、P波を検知したチャンネル数が500になるまで繰り返し実施した。
観測期間中に発生したMj2.0以上、震源距離150km以下で発生した地震データに対し開発した手法を適用した。一番最初にP波を検知してから1秒経過するまでに取得したP波到来時刻のデータを用いて、震源距離が100km未満で発生した地震に対しては、震源誤差が数km程度で決定することができた。一方、震源距離が100kmを超えると、震源誤差が大きい結果となった。これは、観測点配置(100km程度)に対し、震源距離が大きくなることで有意な走時差を取得することが困難になることに起因すると考えられる。震源距離が100km未満の地震において、震源誤差が10km未満で決定された地震に対し、Mdasを推定した。それぞれのチャンネルでP波検知後1秒間のひずみ速度の最大値を算出し、マグニチュードスケーリング式に代入した。結果、±0.5程度の誤差でMdasを推定できることがわかった。
Distributed Acoustic Sensing(DAS)は、光ファイバーケーブル内の不純物で散乱する散乱光の位相変化を用いて、ケーブルに沿った歪み変化を計測する。本技術は数m毎にデータを計測できるため、ほぼ同時刻(例えば0.5秒以内)に地震波を複数点で検知することが可能である。したがって、複数観測点のデータを用いた震源決定手法を適用できること、さらに各点のデータを用いて推定したマグニチュードの結果を統計的(例えば、平均や中央値など)に評価することができ、警報の高精度化に繋がる可能性がある。本研究では、新幹線の既設光ファイバーケーブルを用いたDASによって取得した地震データを使用し、地震波検知後、迅速に地震諸元を推定する手法を紹介する。
九州新幹線沿線の既設光ファイバーケーブルにDASを適用し自然地震観測を実施した(Katakami et al., 2024)。観測期間は、2022年1月から2月、2023年2月から3月、2023年12月から2024年4月であり、2022年は新八代駅から新大牟田駅の約75km、2023と2024年は新八代駅から久留米駅までの約100kmの既設ケーブルを使用した。DASはAPセンシング社のものを使用し、interrogatorを最南端の新八代駅に設置した。
本発表では、リアルタイムで震源とマグニチュードを随時推定する手法を開発した。また、早期警報に使用するために、計算コストをできるだけ抑えることにも注意した。Yin et al. (2023) において、DASで計測されたひずみ速度、マグニチュードおよび震源距離の回帰式が示されている。九州新幹線沿線のDAS観測で取得した地震データのP波到来時刻から1秒間の最大ひずみ速度と、震源距離、気象庁マグニチュードの値を用いて上記回帰式のパラメータを設定し九州新幹線沿線のDASデータにおけるマグニチュードスケーリング式を算出した。震源をリアルタイムで決定するために、STA/LTAを基本としたP波到来時刻およびS波到来時刻をロバストにリアルタイムで決定する手法を開発した。読み取ったP波の到来時刻が10チャンネルを超過すると、hypomh (Hirata and Matsu’ura, 1987)を用いて震源決定し、推定した結果を初期値として入力する。次にP波を検知したチャンネル数が20を超過すると再度hypomhで震源決定し初期値を更新する。これを、P波を検知したチャンネル数が500になるまで繰り返し実施した。
観測期間中に発生したMj2.0以上、震源距離150km以下で発生した地震データに対し開発した手法を適用した。一番最初にP波を検知してから1秒経過するまでに取得したP波到来時刻のデータを用いて、震源距離が100km未満で発生した地震に対しては、震源誤差が数km程度で決定することができた。一方、震源距離が100kmを超えると、震源誤差が大きい結果となった。これは、観測点配置(100km程度)に対し、震源距離が大きくなることで有意な走時差を取得することが困難になることに起因すると考えられる。震源距離が100km未満の地震において、震源誤差が10km未満で決定された地震に対し、Mdasを推定した。それぞれのチャンネルでP波検知後1秒間のひずみ速度の最大値を算出し、マグニチュードスケーリング式に代入した。結果、±0.5程度の誤差でMdasを推定できることがわかった。