日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT37] 地震観測・処理システム

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:林田 拓己(国立研究開発法人建築研究所 国際地震工学センター)、友澤 裕介(鹿島建設)

17:15 〜 18:45

[STT37-P01] N-net沖合システムの海洋敷設工事

*三好 崇之1植平 賢司1望月 将志1西澤 あずさ1上野 友岳1青井 真1篠原 雅尚1,2武田 哲也1功刀 卓1棚田 俊收1 (1.防災科研、2.東大地震研)

キーワード:N-net、海洋敷設工事、南海トラフ地震

駿河・南海トラフ沿いでは巨大地震と津波が約90-150年の繰り返し間隔で発生してきたことが知られており、その度に大きな被害が生じている。海底で地震を観測しその活動を監視するために、気象庁気象研究所が東海沖にケーブル式の海底観測網を1978年に敷設して以来、想定される南海トラフ地震の震源域をカバーするように観測網が敷設されてきたが、南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)はその最西端に位置する観測網となる。
N-netは高知県の室戸ジオパーク陸上局と宮崎県の串間陸上局を結ぶ沖合システムと沿岸システムの2システムから構成される。このうち、2023年10月から2024年1月にかけて沖合システムの海洋敷設工事を実施した。海洋敷設工事で設置した主な海底部機器は、観測装置18台、分岐装置2台、終端装置2台、海底ケーブル約900km等である。使用した船舶は、KDDIケーブルインフィニティ(KCI;総トン数9766トン)である。KCIは、ケーブルタンク、ドラムケーブルエンジン、ケーブルシーブ等を備え、ケーブルの敷設同時埋設が可能な鋤式埋設機、ケーブルの後埋設を可能とするROVを搭載している。海洋敷設工事の概要は、海底ケーブルを陸上局に接続するケーブル陸揚げ、ケーブル埋設区間の掃海、海底ケーブルと観測装置等を敷設する海底ケーブル敷設および海底ケーブル敷設同時埋設、他の海底ケーブルとの交差を含む区間や埋設が不十分な箇所をROVを用いて埋設する後埋設等である。ケーブルおよび観測装置の埋設は、大型船の錨や漁業の底引き網等によるケーブルの損傷を防ぐために実施し、水深1,000m以浅の海底を対象とした。沖合システムで埋設した観測装置は串間陸上局に最も近い1点のみである。なお、沿岸部の工事を短期間とするため、ケーブル陸揚げは沿岸システム分も実施した。
 海洋敷設工事では、随時、船舶から給電し、海底部機器の機械的特性、電気的特性、光学的特性が健全であるかどうかを船舶上で確認した。とくに観測装置の試験は、船積後、投入前、着底後、Lay Block敷設完了後、Final Splice実施前のタイミングで実施し、いずれの試験も観測装置の各センサで得られたデータを解析し、次の工程に進んで良いかを都度判断した。観測装置の試験では、各センサからデータが取得できることに加えて、搭載された2組の加速度計、速度計、水圧計で計測された時刻歴データとパワースペクトル密度について、2組で出力に矛盾がないこと、また、加速度計については各成分のベクトル和が1G相当となること、水圧計については着底後に水深相当の圧力値を示すこと等を試験で確認した。いずれの試験でも大きな問題はなく、室戸ジオパーク陸上局から串間陸上局まで、観測装置18台等を含めて海底ケーブルでつなげることができた。
海洋敷設工事後は、沖合システム全体を対象とした総合試験を経て、各センサのデータの品質が確保されていることを確認したのちに、沖合システムの運用やデータ提供を行う予定である。