日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT37] 地震観測・処理システム

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:林田 拓己(国立研究開発法人建築研究所 国際地震工学センター)、友澤 裕介(鹿島建設)

17:15 〜 18:45

[STT37-P02] ガラス球海底地震計の長期観測化と広帯域観測対応化

*東 龍介1鈴木 秀市1、佐藤 真樹子1日野 亮太1、齋藤 和男2、酒主 美樹雄2、荻原 宏之2 (1.東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター、2.アディコ株式会社)

キーワード:自己浮上式ガラス球海底地震計、省電力化した新ロガーの開発、広帯域センサーの搭載

ここ十数年で基盤化が進んだケーブル式海底地震観測網によって、より多くの研究者が海域データにアクセス出来るようになり、海域地震研究が目覚ましく発展した。一方で、基盤観測網のデメリットには、観測点配置の自由度がなく稠密でないこと、センサーの仕様変更ができないことが挙げられる。したがって、震源精度の高度化や超低周波地震観測を狙った広帯域直上観測に対して機動観測が担う役割は依然として大きい。
自己浮上式ガラス球海底地震計(OBS)を用いた機動観測は、2000年代により大きな容積のチタン製耐圧球(LTOBS)が開発され長期観測化し、2010年代には広帯域センサーが実装された。一方で、機動機材による広帯域観測の現況は、LTOBSに頼らざるを得ず、観測網の構築に十分な台数を確保できない場合もある。そこで我々は、従来は4.5 Hz速度センサーで運用してきたガラス球OBSの長期観測化・広帯域化を模索してきた。
ガラス球OBSは容積が小さいため、ロガーやセンサーのリチウム電池の搭載量が長期観測化・広帯域化のボトルネックであった。限られた容積を効率的に運用しつつ回収時の浮力を確保するためには、ロガーの小型軽量化と省電力化が求められる。今回我々は、アディコ(株)と共同で低消費電力の次世代OBSロガーを開発し、実海域での試験を重ねてきた。新ロガーの特色は、低消費・高性能A/Dの採用による収録の省電力化、内蔵GPS受信機による観測前後の時刻較正の自動化、端末とのBluetooth通信である。さらに、搭載したMEMSの姿勢監視によって収録期間中のモジュール電源を落とすことで、従来主力機種の4分の1程度の消費電力を達成している。新ロガーにより1年以上の長期観測が可能となり、同時に、広帯域センサー用電池の搭載スペースの確保も実現した。
我々は昨年、アディコ社製ロガーとNanometrics社製 Trillium Compact Horizon 120 (TCH120) を組み合わせたガラス球広帯域OBSを製作し、5月から11月にかけて実施した三陸沖海域試験で半年間のデータ収録に初めて成功しており、本発表にて観測状況を報告する。本観測のデータ収録は、差動±5 Vレンジの入力波形を、サンプリング周波数100Hzで24-bit A/D変換して行った。本稿の投稿時点で観測データの品質を未評価であるが、地震波形が3成分で良好に記録されていることを確認した。観測海域ではNanometrics社製 Trillium Compact 20またはLenartz社製1秒計を搭載したLTOBSも並行観測しており、それらと比較しながらガラス球広帯域OBSの品質評価を進めていく予定である。