[S-TT39] ハイパフォーマンスコンピューティングが拓く固体地球科学の未来

[STT39-04] FEM解析における地表地形のモデル化が地震動評価結果に与える影響

*西本 昌¹、山本 優¹、縣 亮一郎²、廣部 紗也子²、日吉 善久²、堀 高峰² (1.大成建設株式会社、2.海洋研究開発機構)

キーワード：長周期地震動、3次元有限要素法、海溝型巨大地震、地表地形

今後発生が懸念される海溝型地震では，長周期地震動が発生し，超高層建築物や免震建築物等の固有周期が長い建築物に大きな影響を与える可能性がある．有効な事前対策を行うためには，工学的に適切な地震動評価が重要である．
近年のスーパーコンピュータの著しい性能向上により，大規模な有限要素モデルを構築して地震動評価を行う例が増えている．有限要素法による解析は，3次元の地盤不整形をモデル化することができる．一方で，地表地形のモデル化方法の違いにより，評価結果に差がでる可能性を指摘している報告もある．そこで，本検討では，地表地形のモデル化について下記3方法の有限要素モデルを作成し，地震動評価結果に与える影響を分析する．
　① 陸域・海域とも地形をモデル化
　② 陸域のみ地形をモデル化し，海域はフラットになるように地層構造を移動
　③ 陸域・海域ともフラットになるように地層構造を移動

地震動評価は，地震動計算用大規模3D-FEM計算プログラム「E-wave FEM」を用い，スーパーコンピュータ「富岳」で計算した．地下構造は防災科研の浅部・深部統合地盤モデルの下部に地震本部の全国1次地下構造モデルのプレート構造を接続した．計算対象周期3.3秒以上で1波長あたり概ね5要素の大きさとなるよう，四面体2次要素に分割した．要素分割には「地球シミュレータ」を用いた．

以上の解析手法，地下構造モデルを用いて長周期地震動を計算し，地形のモデル化方法の差異が，海溝型巨大地震による長周期地震動の強さの空間的な分布に与える影響を分析した結果を報告する．

謝辞：本研究は，文部科学省「富岳」成果創出加速プログラム「大規模数値シミュレーションによる地震発生から地震動・地盤増幅評価までの統合的予測システムの構築とその社会実装」（JPMXP1020200203）および令和5年度地球シミュレータ公募課題「大規模地震動評価プログラム「E-wave FEM」を用いた長周期地震動評価の工学利用に向けた研究」の一環として実施されたものです．また，スーパーコンピュータ「富岳」，海洋研究開発機構の地球シミュレータの計算資源の提供を受け，実施しました．本解析結果は，東京大学地震研究所が開発中のコードを「富岳」PJにおいて提供していただき，JAMSTECが独自に改変・運用し得られたものです．また，地震調査研究推進本部の全国1次地下構造モデル，防災科学技術研究所の深部地盤構造を使用しました．関係各位に記して謝意を表します．