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[SVC26-03] 吾妻山で観測された調和振動型微動のスペクトル構造と非線形構造

キーワード:火山性地震、調和振動型微動、非線形振動
吾妻山は, 山形県と福島県の県境に位置する一連の火山群である. 有史以降は一切経山・大穴火口を中心に火山活動が見られており, 近年では, 2015~2016年, 2018~2019年, 2022~2023年に深部および浅部における地殻変動と, それに対応する地震活動の活発化などの火山活動の高まりが見られている. また, この活発化の際には, 火山性地震の震源が深部から浅部へ移動し, それに伴い流体の関与が考えられるBL型地震やN型地震が増加することが観測されており, 深部からの流体の供給が示唆されている. そのため, 流体の動きを理解することは吾妻山の火山活動を理解する上で重要であると言える. そこで本研究では, 2022~2023年の活動の際に観測された調和振動型イベントに着目し, 流体の移動のモデル化に必要となる波形のスペクトル構造や非線形構造といった波形の持つ特徴の検討を行った.
本研究では, 大穴火口近傍に位置する東北大学および気象庁の観測点の記録を使用した.スペクトル解析では, 調和振動型イベントのフーリエ・スペクトルを計算し, 各イベントについて観測点・成分間で共通したスペクトルピークを検出した. また, 非線形構造の解析では, 速度と変位による相図を用いて観測波形の持つ非線形性を検証し, その非線形性を定量化するためにGrassberger-Procaccia法によって再構成次元と相関次元を推定した.
その結果, 解析した全ての調和振動型イベントについて, 1~2 Hzの基底スペクトルピークに加えて複数のスペクトルピークを持つこと, また, 各イベントについて得られたピーク周波数はそれぞれ基底周波数のほぼ整数倍となることが示された. これらの特徴は, 吾妻山におけるN型地震に見られる不等間隔のスペクトルとは異なる. 速度-変位の相図では, 二次元平面で交差する周期性を持った軌跡を示す例も見られ, 一つのイベントの中で相図のパターンが変化する例も認められた. また, G-P法による解析により, 吾妻山の調和振動型イベントの相関次元は, 再構成次元が大きくなるにつれて2~3程度の値で飽和することが示された.
得られたスペクトル構造は, 調和振動型イベントが流体の流れによる自励振動によるものであることを示唆する. また, 相図からは, その流れによる振動が高次元のシステムで表される非線形振動であり, 流れを駆動する圧力勾配の時間変化によって相図に変化が生じることが解釈できる. G-P法で推定した相関次元は, 先行研究によって他火山で得られている流体流動による振動のものと同程度の値であり, 高い再構成次元での特徴も共通する. 従って, 解析した吾妻山の調和振動型イベントも同様に流体の流れによるカオス性を含む非線形振動であると結論付けられる.
今後は本研究で得られた特徴量を元にして火山性流体の流れの物理プロセスの推定を進め, 吾妻山の火山活動とその推移の理解を深めていく予定である.
本研究では, 大穴火口近傍に位置する東北大学および気象庁の観測点の記録を使用した.スペクトル解析では, 調和振動型イベントのフーリエ・スペクトルを計算し, 各イベントについて観測点・成分間で共通したスペクトルピークを検出した. また, 非線形構造の解析では, 速度と変位による相図を用いて観測波形の持つ非線形性を検証し, その非線形性を定量化するためにGrassberger-Procaccia法によって再構成次元と相関次元を推定した.
その結果, 解析した全ての調和振動型イベントについて, 1~2 Hzの基底スペクトルピークに加えて複数のスペクトルピークを持つこと, また, 各イベントについて得られたピーク周波数はそれぞれ基底周波数のほぼ整数倍となることが示された. これらの特徴は, 吾妻山におけるN型地震に見られる不等間隔のスペクトルとは異なる. 速度-変位の相図では, 二次元平面で交差する周期性を持った軌跡を示す例も見られ, 一つのイベントの中で相図のパターンが変化する例も認められた. また, G-P法による解析により, 吾妻山の調和振動型イベントの相関次元は, 再構成次元が大きくなるにつれて2~3程度の値で飽和することが示された.
得られたスペクトル構造は, 調和振動型イベントが流体の流れによる自励振動によるものであることを示唆する. また, 相図からは, その流れによる振動が高次元のシステムで表される非線形振動であり, 流れを駆動する圧力勾配の時間変化によって相図に変化が生じることが解釈できる. G-P法で推定した相関次元は, 先行研究によって他火山で得られている流体流動による振動のものと同程度の値であり, 高い再構成次元での特徴も共通する. 従って, 解析した吾妻山の調和振動型イベントも同様に流体の流れによるカオス性を含む非線形振動であると結論付けられる.
今後は本研究で得られた特徴量を元にして火山性流体の流れの物理プロセスの推定を進め, 吾妻山の火山活動とその推移の理解を深めていく予定である.