日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC26] 活動的⽕⼭

2024年5月28日(火) 09:00 〜 10:30 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)、座長:及川 純(東京大学地震研究所)、廣瀬 郁(東北大学大学院理学研究科)

10:00 〜 10:15

[SVC26-05] ウェーブレット散乱変換に基づく2023年硫黄島翁浜沖噴火期間中の地震計連続記録分類

*廣瀬 郁1上田 英樹2小園 誠史2長井 雅史2 (1.東北大学大学院理学研究科、2.防災科学技術研究所)

キーワード:硫黄島、孤立型微動、ウェーブレット散乱変換

はじめに
小笠原硫黄島は活発な地震活動・地殻変動・地熱活動を続けるカルデラ火山であり,島内や沖合で小規模噴火を繰り返している。島内の地震計連続記録の解析は,活動的な硫黄島の火山活動を常時モニタリングするために重要である。本発表では,2023年10月21日に翁浜沖で始まった噴火活動期間中の地震計連続記録の分類を行った結果を報告する。

手法
防災科研眼鏡岩観測点の地震計上下動成分を解析に用いた。解析期間は噴火開始前の2023.10.10から噴火期間中の2023.11.30までである。まず計算コスト低減のために地震計連続記録を100 Hzから50 Hzにダウンサンプリングし,0.5 Hzのハイパスフィルターを適用した。その後,連続記録を60秒間長のセグメントに分割し,Seydoux et al. (2020)の方法に基づきウェーブレット散乱変換を適用した。ウェーブレット散乱変換は,多重のウェーブレット変換による畳み込み処理とプーリング処理を行うことで,時系列データの時間周波数特性を抽象化した特徴量であるウェーブレット散乱係数を計算する手法である。本研究では,0.78-25 Hzの範囲に中心周波数を持つウェーブレットを用意し,1次と2次のウェーブレット散乱係数を計算した。得られたウェーブレット散乱係数を全て連結したウェーブレット散乱係数ベクトルを用いて,60秒間の波形のクラスタリングを行った。まず,60秒ごとのウェーブレット散乱係数ベクトルに対してICAを適用して次元数を10に減らし,その後階層型クラスタリングを行うことで60秒間の地震計連続記録を教師なし分類した。

結果
階層型クラスタリングにより,60秒間の地震計連続記録を15個のクラスターに分類した。孤立型微動,火山性地震,人間活動に起因するシグナル,それ以外の雑微動からなるクラスターがそれぞれ確認されたほか,10/12-10/15,11/19に検出数が増加するクラスターも見られた。次に,15個のクラスター内で再度階層型クラスタリングを行い,噴火が始まった10月21日以降に検出数の増加が見られたクラスターを抽出した。孤立型微動は噴火活動が活発化している期間(10/25-11/4, 11/11-11/16, 11/20-11/22)に検出数が増加していた。火山性地震の検出数は10/25と11/14-11/25に急増したが,噴火との対応は解釈が難しい。10/27-10/28および11/21-11/23に検出数が増加するクラスターも見られた。このクラスターに属する地震の波形には,孤立型微動に10数Hzの高周波のシグナルが重畳している特徴が見られた。10/31には新島が,11/20以降は噴出口が火砕丘中央に確認されていることから,陸地の形成および噴出口が海面上に出たことにより高周波のシグナルが励起された可能性がある。10/12-10/15,11/19に検出数が増加するクラスターについては,検出数が増加するタイミングは噴火活動開始前/休止期にあたるため,噴火活動との関連についてはさらなる検討が必要である。

謝辞: 防災科研V-netの地震計連続記録を使用させていただきました。