10:45 〜 11:00
[SVC26-07] 2022年1月15日Hunga Tonga=Hunga Ha’apai火山の大規模噴火開始約15分前に発生した前駆的地震活動

キーワード:火山噴火、フンガトンガ=フンガハアパイ、火山性地震、火山モニタリング、噴火推移
2022年1月15日にトンガ沖のHunga Tonga=Hunga Ha’apai(HTHH)火山において発生した大規模噴火は、噴煙高度50kmを超え、7000km以上離れた日本にも津波などの影響を及ぼすような、近年最大規模の噴火であった。世界中の様々な観測機器によって噴火に伴うシグナルが捉えられ、その巨大な噴火が大気にもたらした影響や波動の時空間発展などが研究されてきた。しかし、1月15日04:00(以下すべてUTC)ごろから始まる大規模噴火について、その端緒がいつであったかということや前駆過程そのものについてはまだ明らかにされていない。
Cronin et al. (2023, IAVCEI)は1月15日02:57に小噴火があったことを指摘し、主噴火の端緒と考えた。しかし、衛星画像や地震波形による解析によると、この小噴火は前日から続く散発的な噴火の一部であり、大規模噴火の最初とは考えられない(堀内他・JpGU2023)。また、噴火直後に国内の津波調査や聞き取り調査を行った報告書(Borrero et al., 2022, Pure Appl.Geophys.)では噴火開始時刻が03:47とされているが、その根拠は明記されていない。本研究は、火山からの距離が共に750km程度である二つの地震観測点で観測された03:47ごろの振動に注目し、より詳細に解析を行い、大規模噴火に伴う地下イベントがいつ始まったのかということについて明らかにすることを目的とする。
使用するデータは、MSVF(フィジー・想定噴火口から758km)およびFUTU(ウォリスフツナ・同752km)の広帯域地震計3成分データをIRIS Web Servicesよりダウンロードしたものである。計測器の応答を補正した後に0.15 Hz以下のローパスフィルターをかけ、1Hzにデシメーションした。
まず、振動をRayleigh波であると仮定する。Rayliegh波のparticle motionを考えると、地震波形における水平速度成分とヒルベルト変換を施した上下速度成分はゼロ又は180度の位相ずれを持つはずである。したがって、両者の相互相関の絶対値が遅延時間ゼロ付近で高くなると予想される。この仮定に基づいて東西速度と上下速度のcross spectral densityとcoherenceを調べた結果、0.04-0.08Hzの周波数帯においてシグナルのパワーと相関が高くなることが確認された。すなわち、振動が0.04-0.08Hzに卓越するRayleigh波によるものであると確認した。さらに、ヒルベルト変換後の上下動成分と東西成分の相互相関関数、および南北成分との相互相関関数の比から求めた、Rayleigh波の波源方向はMSVF、FUTU観測点共にHTHH火山方向であることが分かった。
次に、03:47の振動と04:14:45にHTHH直下で発生したM5.8の地震におけるRayleigh波の両方においてシグナル強度の強い0.07-0.09Hzに周波数帯をさらに限定し、MSVFとFUTUの相互相関関数における到達時刻の差を比較した。M5.8地震の波は、MSVFへの到達が28秒から32秒(平均31秒)FUTUに対して遅れており、03:47頃の振動についてはMSVFへの到達が23秒から40秒(平均33秒)遅れていた。二つの振動における到達時刻差のずれは10秒以内であり、相互相関関数を64秒の窓を4秒ずつずらして計算したこと、着目した周波数帯の周期が10秒以上であることから、両者の時刻差は一致していると解釈することが出来る。方向、振動の到達時刻差とも、この振動がHTHHからのRayleigh波であることを支持しており、大規模噴火の前駆的な地震であると解釈できる。また、M5.8地震のFUTUにおけるRayleigh波のピーク到達時刻は04:18:45であり、地震発生から4分後であった。同様に、前駆的振動のFUTUにおけるピーク到達時刻03:50:13から、その発生時刻は03:46過ぎとなる。
前日からの地震波形推移を解析しても今回発見した振動はその大きさや相関の高さから特異である。一方、衛星画像には特段の変化が見られない。本研究の結果は、03:46頃、大規模噴火につながる何らかのイベントが地下または海底で発生したことを示し、Borrero et al. (2022)の報告を裏付けるものであるといえる。
Cronin et al. (2023, IAVCEI)は1月15日02:57に小噴火があったことを指摘し、主噴火の端緒と考えた。しかし、衛星画像や地震波形による解析によると、この小噴火は前日から続く散発的な噴火の一部であり、大規模噴火の最初とは考えられない(堀内他・JpGU2023)。また、噴火直後に国内の津波調査や聞き取り調査を行った報告書(Borrero et al., 2022, Pure Appl.Geophys.)では噴火開始時刻が03:47とされているが、その根拠は明記されていない。本研究は、火山からの距離が共に750km程度である二つの地震観測点で観測された03:47ごろの振動に注目し、より詳細に解析を行い、大規模噴火に伴う地下イベントがいつ始まったのかということについて明らかにすることを目的とする。
使用するデータは、MSVF(フィジー・想定噴火口から758km)およびFUTU(ウォリスフツナ・同752km)の広帯域地震計3成分データをIRIS Web Servicesよりダウンロードしたものである。計測器の応答を補正した後に0.15 Hz以下のローパスフィルターをかけ、1Hzにデシメーションした。
まず、振動をRayleigh波であると仮定する。Rayliegh波のparticle motionを考えると、地震波形における水平速度成分とヒルベルト変換を施した上下速度成分はゼロ又は180度の位相ずれを持つはずである。したがって、両者の相互相関の絶対値が遅延時間ゼロ付近で高くなると予想される。この仮定に基づいて東西速度と上下速度のcross spectral densityとcoherenceを調べた結果、0.04-0.08Hzの周波数帯においてシグナルのパワーと相関が高くなることが確認された。すなわち、振動が0.04-0.08Hzに卓越するRayleigh波によるものであると確認した。さらに、ヒルベルト変換後の上下動成分と東西成分の相互相関関数、および南北成分との相互相関関数の比から求めた、Rayleigh波の波源方向はMSVF、FUTU観測点共にHTHH火山方向であることが分かった。
次に、03:47の振動と04:14:45にHTHH直下で発生したM5.8の地震におけるRayleigh波の両方においてシグナル強度の強い0.07-0.09Hzに周波数帯をさらに限定し、MSVFとFUTUの相互相関関数における到達時刻の差を比較した。M5.8地震の波は、MSVFへの到達が28秒から32秒(平均31秒)FUTUに対して遅れており、03:47頃の振動についてはMSVFへの到達が23秒から40秒(平均33秒)遅れていた。二つの振動における到達時刻差のずれは10秒以内であり、相互相関関数を64秒の窓を4秒ずつずらして計算したこと、着目した周波数帯の周期が10秒以上であることから、両者の時刻差は一致していると解釈することが出来る。方向、振動の到達時刻差とも、この振動がHTHHからのRayleigh波であることを支持しており、大規模噴火の前駆的な地震であると解釈できる。また、M5.8地震のFUTUにおけるRayleigh波のピーク到達時刻は04:18:45であり、地震発生から4分後であった。同様に、前駆的振動のFUTUにおけるピーク到達時刻03:50:13から、その発生時刻は03:46過ぎとなる。
前日からの地震波形推移を解析しても今回発見した振動はその大きさや相関の高さから特異である。一方、衛星画像には特段の変化が見られない。本研究の結果は、03:46頃、大規模噴火につながる何らかのイベントが地下または海底で発生したことを示し、Borrero et al. (2022)の報告を裏付けるものであるといえる。