17:15 〜 18:45
[SVC26-P20] 光海底ケーブルを用いたDAS観測による鬼界カルデラの地震活動
キーワード:分布型音響センシング、鬼界カルデラ、火山活動
はじめに:
鹿児島県南方に位置する鬼界カルデラは130ka、95ka、そして7.3kaにカルデラ形成を伴う巨大噴火を起こした火山として知られ、カルデラ壁に位置する薩摩硫黄島に形成した硫黄岳は活発な活動が続いている。近年の調査によって、カルデラ中央に形成した溶岩ドームは7.3ka噴火より後に形成されたものであることが分かった(Tatsumi et al. 2018)。しかし、そのほとんどが海底下にあるため、火山の構造や近年の活動については不明な点が多い。
鬼界カルデラの構造調査及び活動把握のための新しい観測手法開発のため、海洋研究開発機構と神戸大学は合同で2021年に鬼界カルデラ周辺に設置された光海底ケーブルを用いて分布型音響センシング(DAS)観測を行った(中野ほか, 2021)。2週間の観測を2回行い、観測期間中に溶岩ドーム下で起きた地震が数個検出された。シグナルは硫黄島-竹島を結ぶケーブルで明瞭に記録された。この結果は溶岩ドーム下で現在も火山活動が継続している事を示唆している。しかし、観測期間が短かったため、活動度を詳しく評価するためには長期間継続した観測が必要である。
本研究では鬼界カルデラの活動評価のため、より長い期間の継続したDAS観測を行った。
観測:
本研究では前回の観測と同様、鹿児島県三島村の保有するブロードバンド通信用の光海底ケーブルを用いてDAS観測を行った。DAS観測にはAP Sensing社製N5226B R120を用いた。このモデルは光ケーブルに沿って最大120kmまでの歪を測定可能である。従って枕崎-竹島および竹島-硫黄島を結ぶケーブルを竹島においてパッチコードで接続することにより、枕崎-硫黄島間を一本のケーブルとしてDAS観測を行った。観測は2023年8月から11月中旬の約4か月間行った。
解析と結果:
得られたDAS歪速度記録に2-20Hzのバンドパスフィルタを掛け、STA/LTAイベントトリガによって地震イベントを検出した。トリガ時刻から気象庁一元化震源カタログに該当するイベントを抽出した。観測期間中、観測エリアから半径約200km以内、マグニチュード0から5のイベントが約500個記録された。また、気象庁一元化震源カタログに該当イベントが無い地震も数十個記録されていた。これらは光海底ケーブルの近隣で起きた小規模な地震であると考えられる。
これら気象庁カタログに該当するものの無いイベントについて、予備的に震源決定を行った。顕著な相をS波である仮定して初動を読み取り、震源決定を行った。ただし初動は必ずしも明瞭でないため震源位置の不確定は大きい。震源決定の結果、5個程度のイベントについて震源が硫黄岳から溶岩ドーム下のカルデラ内に決まった。
本観測によって、カルデラ内では継続して地震活動があることが分かった。しかしその数は4カ月の間に数個程度であり、カルデラ下の地震活動は活発とは言い難い。
今後の課題:
本研究で観測されたカルデラ内の地震の多くは振幅が小さいため、ケーブルの限られた区間でしか初動が読み取れず、震源決定の誤差も大きい。従ってDASの高密度観測を活用した解析、すなわち隣接チャンネルでの走時差や、振幅分布などと合わせた震源決定により震源位置の精度の向上が必要である。また、機械学習によるイベント検出と初動読み取りによる精度の向上も検討していきたい。
謝辞:
本研究では鹿児島県三島村の光海底ケーブルを使用させていただきました。本研究はJSPS科研費 JP22H00251およびJP21H05205の助成を受けたものです。記して感謝いたします。
鹿児島県南方に位置する鬼界カルデラは130ka、95ka、そして7.3kaにカルデラ形成を伴う巨大噴火を起こした火山として知られ、カルデラ壁に位置する薩摩硫黄島に形成した硫黄岳は活発な活動が続いている。近年の調査によって、カルデラ中央に形成した溶岩ドームは7.3ka噴火より後に形成されたものであることが分かった(Tatsumi et al. 2018)。しかし、そのほとんどが海底下にあるため、火山の構造や近年の活動については不明な点が多い。
鬼界カルデラの構造調査及び活動把握のための新しい観測手法開発のため、海洋研究開発機構と神戸大学は合同で2021年に鬼界カルデラ周辺に設置された光海底ケーブルを用いて分布型音響センシング(DAS)観測を行った(中野ほか, 2021)。2週間の観測を2回行い、観測期間中に溶岩ドーム下で起きた地震が数個検出された。シグナルは硫黄島-竹島を結ぶケーブルで明瞭に記録された。この結果は溶岩ドーム下で現在も火山活動が継続している事を示唆している。しかし、観測期間が短かったため、活動度を詳しく評価するためには長期間継続した観測が必要である。
本研究では鬼界カルデラの活動評価のため、より長い期間の継続したDAS観測を行った。
観測:
本研究では前回の観測と同様、鹿児島県三島村の保有するブロードバンド通信用の光海底ケーブルを用いてDAS観測を行った。DAS観測にはAP Sensing社製N5226B R120を用いた。このモデルは光ケーブルに沿って最大120kmまでの歪を測定可能である。従って枕崎-竹島および竹島-硫黄島を結ぶケーブルを竹島においてパッチコードで接続することにより、枕崎-硫黄島間を一本のケーブルとしてDAS観測を行った。観測は2023年8月から11月中旬の約4か月間行った。
解析と結果:
得られたDAS歪速度記録に2-20Hzのバンドパスフィルタを掛け、STA/LTAイベントトリガによって地震イベントを検出した。トリガ時刻から気象庁一元化震源カタログに該当するイベントを抽出した。観測期間中、観測エリアから半径約200km以内、マグニチュード0から5のイベントが約500個記録された。また、気象庁一元化震源カタログに該当イベントが無い地震も数十個記録されていた。これらは光海底ケーブルの近隣で起きた小規模な地震であると考えられる。
これら気象庁カタログに該当するものの無いイベントについて、予備的に震源決定を行った。顕著な相をS波である仮定して初動を読み取り、震源決定を行った。ただし初動は必ずしも明瞭でないため震源位置の不確定は大きい。震源決定の結果、5個程度のイベントについて震源が硫黄岳から溶岩ドーム下のカルデラ内に決まった。
本観測によって、カルデラ内では継続して地震活動があることが分かった。しかしその数は4カ月の間に数個程度であり、カルデラ下の地震活動は活発とは言い難い。
今後の課題:
本研究で観測されたカルデラ内の地震の多くは振幅が小さいため、ケーブルの限られた区間でしか初動が読み取れず、震源決定の誤差も大きい。従ってDASの高密度観測を活用した解析、すなわち隣接チャンネルでの走時差や、振幅分布などと合わせた震源決定により震源位置の精度の向上が必要である。また、機械学習によるイベント検出と初動読み取りによる精度の向上も検討していきたい。
謝辞:
本研究では鹿児島県三島村の光海底ケーブルを使用させていただきました。本研究はJSPS科研費 JP22H00251およびJP21H05205の助成を受けたものです。記して感謝いたします。