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[SVC28-01] 箱根大涌谷噴気地帯西部の地下比抵抗構造
キーワード:大涌谷、箱根火山、噴気地帯、CSAMT、蒸気ポケット、蒸気過熱型温泉
箱根火山大涌谷噴気地帯は、南北に走る分水嶺を境に東西に分かれる。東部は深い谷が発達しており、噴気地帯は主として谷中に発達する。2015年6月に発生した熱水噴火では火口が新たに開口したほか、活動活発化に関連して多数の噴気孔が形成されて現在も活動中である。一方、西部は灌木が発達する冠ヶ岳の斜面に噴気が点在し、坊主地獄が特徴的に見られる。2015年噴火の前後で、特に目立った表面活動の活発化は認められなかったが、噴火後にいくつかの地点で湧水のCl/SO4比に増加が見られるようになった(菊川, 2021)。
箱根火山ではMT探査により大涌谷付近を頂部とし全山に広がる、ベル型の低比抵抗構造が発達し、スメクタイトを含み熱水を遮蔽するキャップロック構造と解釈されているが、その頂部は大涌谷付近にある(Yoshimura et al., 2018)。噴火中心となった東部ではこれまでCSAMT法や、MT法による探査により地下の比抵抗構造が明らかになり、ベル型の低比抵抗構造として認識できるキャップ層が浅くなるとともに、キャップ層内に蒸気だまりとみられる高比抵抗部が認められた(Seki et al., 2020; Mannen et al., 2019)。一方、西部は探査対象からわずかに外れており、詳しい比抵抗構造は不明であった。
そこで、我々は大涌谷噴気地帯西部を含む大涌谷噴気地帯全域の浅部低比抵抗構造を明らかにするため2021・2022年の2回にわけて、CSAMT探査を実施した。測定領域は東西約1300 m・南北約1000 mで測定点数は53点で測定点間距離はおおよそ200mである。発振源は測定領域の約2 km南に約2500 m離して設置した2つの電極群で、周波数は1〜5120Hzの23種とした。データ品質や概略の比抵抗構造を把握するための1次元逆解析の後、2次元逆解析を行い、東西方向の比抵抗断面を得た。ボスティックデプスによる推定探査深度は約500mであった。
その結果、大涌谷西部では全般的にキャップ層とみられる低比抵抗構造が地表付近から厚さ200m〜300mで発達するものの、「玉子茶屋噴気」と「西の噴気」(萬年, 2009)の中間付近の直径約200mの範囲では地表付近から厚さ100m程度に薄くなることがわかった。また玉子茶屋噴気から、2号湧泉(宮下ほか, 2022)付近にかけて、キャップ層内の浅部(深さ100m)に、東西300m、厚さ50mほどの局所的な高比抵抗部が認められた。キャップ層内の局所的な高比抵抗層は、2015年噴火中心で解釈されたように、蒸気だまりかも知れない。同様のキャップ層内高比抵抗部は、大涌谷の北にあるE噴気(原田ほか, 2012)の直下深さ150m付近でも認められ、噴気地帯の直下に多くみられる構造なのかもしれない。地球化学的な研究からは、地下で天水が火山性蒸気によって温められて形成される蒸気過熱型温泉の存在が提案されている(e.g. Henley and Ellis, 1983)。キャップ層内の高比抵抗部は、こうしたタイプの温泉形成場である可能性があり注目される。
箱根火山ではMT探査により大涌谷付近を頂部とし全山に広がる、ベル型の低比抵抗構造が発達し、スメクタイトを含み熱水を遮蔽するキャップロック構造と解釈されているが、その頂部は大涌谷付近にある(Yoshimura et al., 2018)。噴火中心となった東部ではこれまでCSAMT法や、MT法による探査により地下の比抵抗構造が明らかになり、ベル型の低比抵抗構造として認識できるキャップ層が浅くなるとともに、キャップ層内に蒸気だまりとみられる高比抵抗部が認められた(Seki et al., 2020; Mannen et al., 2019)。一方、西部は探査対象からわずかに外れており、詳しい比抵抗構造は不明であった。
そこで、我々は大涌谷噴気地帯西部を含む大涌谷噴気地帯全域の浅部低比抵抗構造を明らかにするため2021・2022年の2回にわけて、CSAMT探査を実施した。測定領域は東西約1300 m・南北約1000 mで測定点数は53点で測定点間距離はおおよそ200mである。発振源は測定領域の約2 km南に約2500 m離して設置した2つの電極群で、周波数は1〜5120Hzの23種とした。データ品質や概略の比抵抗構造を把握するための1次元逆解析の後、2次元逆解析を行い、東西方向の比抵抗断面を得た。ボスティックデプスによる推定探査深度は約500mであった。
その結果、大涌谷西部では全般的にキャップ層とみられる低比抵抗構造が地表付近から厚さ200m〜300mで発達するものの、「玉子茶屋噴気」と「西の噴気」(萬年, 2009)の中間付近の直径約200mの範囲では地表付近から厚さ100m程度に薄くなることがわかった。また玉子茶屋噴気から、2号湧泉(宮下ほか, 2022)付近にかけて、キャップ層内の浅部(深さ100m)に、東西300m、厚さ50mほどの局所的な高比抵抗部が認められた。キャップ層内の局所的な高比抵抗層は、2015年噴火中心で解釈されたように、蒸気だまりかも知れない。同様のキャップ層内高比抵抗部は、大涌谷の北にあるE噴気(原田ほか, 2012)の直下深さ150m付近でも認められ、噴気地帯の直下に多くみられる構造なのかもしれない。地球化学的な研究からは、地下で天水が火山性蒸気によって温められて形成される蒸気過熱型温泉の存在が提案されている(e.g. Henley and Ellis, 1983)。キャップ層内の高比抵抗部は、こうしたタイプの温泉形成場である可能性があり注目される。