日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC28] 火山の熱水系

2024年5月30日(木) 09:00 〜 10:15 コンベンションホール (CH-A) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、神田 径(東京工業大学科学技術創成研究院多元レジリエンス研究センター)、谷口 無我(気象庁気象研究所)、座長:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、神田 径(東京工業大学科学技術創成研究院多元レジリエンス研究センター)

09:15 〜 09:30

[SVC28-02] 大岳・八丁原地熱地帯における坑井内DASを用いた地熱調査

*笠原 順三1,2羽佐田 葉子1,5、三ケ田 均1,4大沼 寛1、藤瀬 吉博3 (1.エンジニアリング協会、2.静岡大学、3.WELMA、4.京都大学、5.大和探査)

キーワード:地熱開発、超臨界水、DAS、八丁原地熱

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、次世代地熱資源として期待される超臨界資源の研究開発を推進している。九州の大岳・八丁原地熱地帯の位置する九重地域は、本プロジェクトにおける候補地点の1つとして挙げられている。著者らはこれまで6カ所の地熱フィールドにおいて地熱坑井内に設置した光ファイバーを用いた地震波の測定(DAS: Distributed Acoustic Sensing)と温度の測定(DTS: Distributed Temperature Sensing)を行ってきた。
2023年(10月10日~24日)には、この九重町の大岳・八丁原地熱地帯の地熱構造を把握することを目的として、DASと人工震源を使用した弾性波探査を実施した。
本探査においては、H-26坑井の深度1,600 mまで光ファイバーを挿入し、12箇所の人工震源を使用した。地表においても26台の地震計を設置した。調査期間中に最大マグニチュード1.2の微小地震が30回以上観測された。
観測したDAS及び地表地震計による観測結果を用い解析を行った。大岳・八丁原地熱地帯のP波速度構造を求めた。このP波速度構造によれば、地表から深さ約800 mのゾーンは主に粘土鉱物からなる変質帯に相当し、800 m以深でP波速度は4.3 km/s以上、1,100 m以深では約4.7 km/sに増加する。また、強い地震波の反射面は深さ2~2.5 km付近に分布し、この反射面は今まで提案されている地熱/地質モデルの基盤岩付近に位置する。
速度構造として本研究で求めた結果を利用し、求めた速度構造を用いて計算した理論走時をもとに3次元のグリッドサーチ法を行い、O-C(観測走時と計算走時の差)が最小になる震源を求めた。この震源決定では、DAS及び地表地震計の到達時間の適合性は非常に良好であった。調査期間中に求まった微小地震の震源分布の多くは、大岳地熱発電所と八丁原地熱発電所の間の領域に分布した。ほとんどの震源は2.2~4 kmであった。震源が八丁原発電所と大岳発電所の中間に位置し、深さも生産井、還元井より深いことから九重地区に存在する火山性地震活動の一部であると考えられる。