[S-VC28] 火山の熱水系

[SVC28-07] 霧島火山硫黄山の湯だまりに溶存するポリチオン酸イオン

*木川田 喜一¹、鈴木 絵美里²、柴野 夏海²、陳 怡帆² (1.上智大学理工学部、2.上智大学大学院理工学研究科)

キーワード：霧島火山、えびの高原硫黄山、ポリチオン酸、硫黄化学種、湯だまり、火口湖

活動的火口湖の溶存成分組成は，熱水卓越型火山の活動評価における最も重要な観測項目のひとつである．いくつかの火山では，火口湖湖水における溶存ポリチオン酸イオンの生成と消失が火山活動と良い対応を示すことが知られている．
霧島火山の硫黄山では2018年に水蒸気噴火を生じ，その火口に湯だまりを形成した．湯だまりにおいては現在も火山ガスと共に熱水の噴出が継続しており，きわめて活動的な火口湖の様相を呈している．硫黄山の湯だまりの化学組成は，火山活動の盛衰に応じて大きく変動していることが指摘されているが，湯だまりにポリチオン酸イオンが存在するかどうかについては明らかにされていない．本研究では，2018年以降2023年までに採水された21点の硫黄山の湯だまりの試料水を対象に溶存硫黄化学種の再定量を行い，ポリチオン酸イオンが存在するかどうかについて確認した．その結果，2018年11月，2022年11月，2023年5月に採取された試料水においてポリチオン酸イオンの存在が確認された．全溶存硫黄化学種に占めるポリチオン酸の割合としては，硫黄のモル比で見た場合，それぞれ，大凡4％，23％，7％と見積もられた．ポリチオン酸イオンの割合の高低は，Cl/SO₄濃度比の変化と良い対応があるように見え，湯だまりに供給される火山ガスの組成変化に対応していることが推察される．