日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC29] 火山の監視と活動評価

2024年5月31日(金) 09:00 〜 10:30 コンベンションホール (CH-A) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:高木 朗充(気象庁気象研究所)、宗包 浩志(国土地理院)、大湊 隆雄(東京大学地震研究所)、座長:大湊 隆雄(東京大学地震研究所)、金子 隆之(東京大学・地震研究所)

09:30 〜 09:45

[SVC29-03] 箱根大涌谷園地内でのラドン連続測定

*熊谷 英憲1,2萬年 一剛3 (1.学習院女子大学、2.国立研究開発法人海洋研究開発機構、3.神奈川県温泉地学研究所)

キーワード:ラドン計測、箱根火山、水蒸気噴火、大涌谷、火山ガス

突発的に噴火に襲われ、人命が脅かされた例は今世紀に入っても複数を数える。これは、顕著なマグマ移動を伴わない場合には噴火準備過程が明瞭な現象として表れにくいことに起因しよう。いわゆる水蒸気噴火の場合がこれに該当し、このような火山防災上でも重要な水蒸気噴火の兆候把握をめざし、科学研究費の助成を受けて(課題番号:21K04602)、観測研究を箱根大涌谷にて実施している。計画ではヘリウムガス濃度の連続観測を最終目標として、気体透過性の違いを利用してヘリウムガスを単離する機材の設計試作を行っている。これに並行して長期の現場観測を実現するために、腐食性火山ガスが充満する環境下での機材の耐久性試験と火山ガス濃度の変動タイムスケールの予備観測とを兼ねたラドン連続観測も行っている。ラドン計測装置はドイツ連邦共和国Saphymo GmbH製の可搬型ラドン計Alpha GUARD2000 (2010年製造)である。内部に有効容積500mLの電離チャンバを有し、高電圧を印加したチャンバ内に環境大気を導入し、ラドンの壊変による放射線を計測する。チャンバ内で放射性核種が壊変し放出する荷電粒子による電磁パルスを計測するため、ガンマ線への感度は高くない。また、ペーパーフィルターを介して環境大気を導入するという試料導入方式からは実質全ラドンを核種の区別なく計測すると期待される。腐食を軽減する目的でプラスチック製コンテナボックス(サンボックス、株式会社サンコー)に装置を収め、ペーパーフィルターを通して純正付属品の小型空気ポンプ(Alpha Pump)によりボックス外の大気を圧送している。貫通穴はコーキング材で塞ぎ、ボックス蓋部にはパッキン(特殊発泡ゴム(EPDM)隙間テープ・トラスコ中山)を挟んで密閉度が高まるよう工夫した。10分間で計数管内空気が入れ替わるようにポンプ流量を0.05L/minに設定、データは計測器本体に蓄積し、定期的にデータ蓄積用の純正データベース(DataExpert)をインストールしたWindowsPCに取り込む。
ラドン濃度は、屋外ドライエリアということもあり国内平均(家屋内)より低く、観測期間を通じた平均は6Bq/m3の程度である。ここで、日本における屋内ラドンの平均濃度は16Bq/m3の程度である(Suzuki et al., 2010; 環境省, 2015)。変動はおおむね計数の平方根の程度ではあるものの、計数誤差の程度を超えてパルス的に増大することがあり、多くの場合、次の計測値となる10分後の値は増大前の水準に戻る。観測地点は千メートルを超える標高であるため、観測期間を通じて大気圧は900hPa内外であるが、これの標準大気圧への補正は行っていない。パルス状の瞬時値の増大が頻繁になることによる10-15日程度および3-5日程度の周期が認められるほか、9月24日を境に以降のラドン濃度は高まっている。このラドン濃度の変化は、最大値が大きくなっただけでなく、ベースラインの増大とみなせる。9月のデータ回収は13日13時に実施しているので、機材に触れたことによる計測環境の変化や中断の影響ではない。これら周期に変化がないか引き続き注視するとともに、先のラドン濃度増についても検討を続ける予定である。ヘリウム観測装置の設置までの間、観測を継続する計画としている。