10:15 〜 10:30
[SVC29-06] 箱根火山における火山活発化指数の試作
キーワード:火山の監視、火山活発化指数、箱根火山
神奈川県温泉地学研究所における箱根火山の観測研究では、地震(通常の火山性地震、深部低周波地震)、地殻変動(GNSS, 傾斜、光波)、地下水の連続観測に加えて、大涌谷や上湯噴気地帯での定期的な火山ガス測定、DOASによる二酸化硫黄放出量の測定など、多様で大量のデータが取得されている。しかし、データが多項目・多数となるほどデータの解釈が難しくなるため、火山活発化の判断がしばしば困難となる場合がある。また、データを要約して、火山の状況を地域住民や防災関係機関向けにわかりやすく説明するときに苦慮する。そこで本研究では、多様なデータを使って火山活発化を判断できるとされる、火山活発化指数(Volcanic unrest index, VUI; Potter et al., 2015)の箱根火山への導入可能性を見極めるため、指数を算定する項目や基準の変更を行った。
火山活発化指数(VUI)では、さまざまなパラメータ(=観測項目)を、地震、地殻変動、地熱・ガスからなる3つの大項目のいずれかに分類する。大項目ごとのパラメータ数は同じになるよう調整される。箱根火山ではPotter et al. (2015) に則ってパラメータ数を、大項目ひとつあたり3、全部で9とした。VUIの算定はパラメータ毎に、設定した基準に基づいて、0から4の指数を決定することから始まる。しかし、箱根火山では常に噴気活動や一定レベルの火山性地震が観測され、こうした活動が全くみられない火山より明らかに活動レベルが高い。Potter et al. (2015) はこうした火山を “warmer volcano”とよび、平常状態をVUI=1とすることを推奨しているが、本研究ではこれに従った。最終的には、9パラメータの指数の平均をとり四捨五入することで最終的な指数(VUI=1〜4の整数値)を得る。用いたパラメータは以下の通りである。
大項目「地震」では、群発地震の継続時間、地震発生数(または発生率)、浅部の低周波地震・微動の発生状況を設定した。大項目「地殻変動」では、箱根を横切る長い基線である国土地理院GEONET小田原−裾野2の基線長の変化量、浅い変動を示す短いGNSS基線および傾斜の変動など、地下水・温泉水の流量の変化・昇温を設定した。大項目「地熱・ガス」では蒸気井の暴噴の有無、二酸化硫黄噴出量、火山ガスの組成を設定した。
パラメータ毎の指数の基準の作成においては、Potter et al. (2015) で、マグマ熱水噴火 (Browne and Lawless, 2001)はVUI=3相当の活発化とされているが、箱根火山2015年噴火もマグマ熱水噴火と考え、同年6月前後の各パラメータの指数が3となるよう、基準を設定した.以上のような準備を経て、2001年1月から2023年12月にえられた実際の観測データに対して、毎月の活動度の評価を試みた。観測開始以前など、該当期間に観測結果が存在しない項目については空欄として平均化から除去した。
その結果は以下の通りである。2015年の噴火(6月29日〜7月1日)と前後についてみると、3月まではVUI=1、4月がVUI=2、5月・6月がVUI=3、7月・8月がVUI=2、9月以降がVUI=1となり、噴火発生をピークに徐々にVUIが上昇し、発生後に減少する様子が確認できた。また、2013年や2019年の火山活発化においては最高でVUI=2となった。観測項目が少なかった2001年の活発化に適用した場合は最大でVUI=3となった。これらの結果は、研究者の感覚とも概ね一致する。また、特定の観測にVUIが大きく影響されるような不都合はほとんど見受けられなかった。このことから、多様な観測項目を使って火山活発化を判断する上で、火山活発化指数(VUI)は有効な手法であると考えられる。さらに、リアルタイムで計算するためのデータ管理方法の整理や、例えばマッチドフィルタ法で深部低周波地震の発生数や背景のノイズレベルに隠れて検出されるような微弱な火山性微動などの観測データなど、最近の研究で明らかになった火山活発化の兆候についてもVUIの計算へ追加可能であるかなど検討を進めている。
火山活発化指数(VUI)では、さまざまなパラメータ(=観測項目)を、地震、地殻変動、地熱・ガスからなる3つの大項目のいずれかに分類する。大項目ごとのパラメータ数は同じになるよう調整される。箱根火山ではPotter et al. (2015) に則ってパラメータ数を、大項目ひとつあたり3、全部で9とした。VUIの算定はパラメータ毎に、設定した基準に基づいて、0から4の指数を決定することから始まる。しかし、箱根火山では常に噴気活動や一定レベルの火山性地震が観測され、こうした活動が全くみられない火山より明らかに活動レベルが高い。Potter et al. (2015) はこうした火山を “warmer volcano”とよび、平常状態をVUI=1とすることを推奨しているが、本研究ではこれに従った。最終的には、9パラメータの指数の平均をとり四捨五入することで最終的な指数(VUI=1〜4の整数値)を得る。用いたパラメータは以下の通りである。
大項目「地震」では、群発地震の継続時間、地震発生数(または発生率)、浅部の低周波地震・微動の発生状況を設定した。大項目「地殻変動」では、箱根を横切る長い基線である国土地理院GEONET小田原−裾野2の基線長の変化量、浅い変動を示す短いGNSS基線および傾斜の変動など、地下水・温泉水の流量の変化・昇温を設定した。大項目「地熱・ガス」では蒸気井の暴噴の有無、二酸化硫黄噴出量、火山ガスの組成を設定した。
パラメータ毎の指数の基準の作成においては、Potter et al. (2015) で、マグマ熱水噴火 (Browne and Lawless, 2001)はVUI=3相当の活発化とされているが、箱根火山2015年噴火もマグマ熱水噴火と考え、同年6月前後の各パラメータの指数が3となるよう、基準を設定した.以上のような準備を経て、2001年1月から2023年12月にえられた実際の観測データに対して、毎月の活動度の評価を試みた。観測開始以前など、該当期間に観測結果が存在しない項目については空欄として平均化から除去した。
その結果は以下の通りである。2015年の噴火(6月29日〜7月1日)と前後についてみると、3月まではVUI=1、4月がVUI=2、5月・6月がVUI=3、7月・8月がVUI=2、9月以降がVUI=1となり、噴火発生をピークに徐々にVUIが上昇し、発生後に減少する様子が確認できた。また、2013年や2019年の火山活発化においては最高でVUI=2となった。観測項目が少なかった2001年の活発化に適用した場合は最大でVUI=3となった。これらの結果は、研究者の感覚とも概ね一致する。また、特定の観測にVUIが大きく影響されるような不都合はほとんど見受けられなかった。このことから、多様な観測項目を使って火山活発化を判断する上で、火山活発化指数(VUI)は有効な手法であると考えられる。さらに、リアルタイムで計算するためのデータ管理方法の整理や、例えばマッチドフィルタ法で深部低周波地震の発生数や背景のノイズレベルに隠れて検出されるような微弱な火山性微動などの観測データなど、最近の研究で明らかになった火山活発化の兆候についてもVUIの計算へ追加可能であるかなど検討を進めている。