日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC30] 火山・火成活動および長期予測

2024年5月30日(木) 15:30 〜 16:45 コンベンションホール (CH-A) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:長谷川 健(茨城大学理学部地球環境科学コース)、上澤 真平(電力中央研究所 サステナブルシステム研究本部 地質・地下環境研究部門)、及川 輝樹(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、清杉 孝司(神戸大学理学研究科惑星学専攻)、座長:上澤 真平(電力中央研究所 サステナブルシステム研究本部 地質・地下環境研究部門)、及川 輝樹(国立研究開発法人産業技術総合研究所)

16:30 〜 16:45

[SVC30-10] 露頭規模の新第三紀環状岩体:その形成とマグマの動き

*山路 敦1 (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:環状コンプレックス、火道、ストーピング、応力場、節理系、松浦玄武岩

露頭規模の火成環状岩体を長崎県の海岸で見出した。この岩体は東西約15 m、南北10 m、上から見てしずく状をなす。母岩は緩傾斜した漸新世の地層である。この規模の環状岩体は世界的にも極めて珍しい。直立する一枚の板状岩脈の延長線上に存在することから、本岩体は岩脈の幅広くなった部分、すなわちbud (蕾)とされてきた(鎌田, 1982)。蕾から環状岩体に発展した可能性を否定しないが、現在は蕾ではない。

後述する理由から、これは火道パイプのひとつだったと考えられ、露頭では火道のなかのマグマの動きが垣間見られる。全体的に玄武岩質であることから、この岩体は周囲の標高約140 m以上に残る、松浦玄武岩の一部を供給した火道の充填物であったらしい。すなわち、火口直下の深さ150 mほどのところが見えていると考えられる。この岩体はおおむね内側に傾いた幅約1 mの環状岩脈に取り巻かれていて、全体的形状はダイアトリームのルートゾーンとその供給岩脈に似るが、そうであるとしたらマグマ水蒸気爆発によらずに拡大した非典型的ダイアトリームである。周囲の母岩には爆発を示す亀裂も火砕脈も存在しないし、岩体中には母岩の混入もない。

環状岩脈は亀裂群や気泡の数密度の違いによる明瞭な流理構造をもつ。流理はほぼ環に沿っているが「不整合関係」の流理群もある。この「不整合」は、環状岩脈の形成と破壊が繰り返されたことを意味する。環状岩脈の内側は、東部の4割ほどを残して侵食で失われており、残存するのは高さ約1.5 mの貫入岩である。凝灰質のものも母岩のブロックも含まれない。そこでは厚さ数十cmの舌状貫入岩体が折り重なっている。最上位の一枚は水平に近い姿勢で、その端は斜めに裂けて2枚の'fingers'に別れ、その一方が他方に乗り上げる。舌状岩は柱状節理をもつ表皮とそれに覆われた塊状部からなる。舌状岩の間は貫入角礫で、柱状節理から角礫に漸移するところがある。環状岩脈とのあいだにもこの角礫岩が詰まっている。環状岩脈の内側の玄武岩は気泡が少ないかわりに、苦鉄質のゼノリスをふくむ。環状岩脈にゼノリスはない。したがって、環状岩脈とは異なる時期に現在残る内部ができたことは明らかだが、急冷縁など貫入順を示す証拠は露頭条件が悪くて確認できなかった。環状岩体内部では水平に近い舌状岩の貫入時に、その上にあった火道充填物をプラグ状に押し上げたではずである。プラグと母岩とのあいだの隙間に環状岩脈が形成されたのだろう。

環状岩脈は周囲の母岩との境界にそって急冷縁を持つ。断層関係ではない。環状岩脈と母岩との境界面は滑らかではなく、多面体的な部分がある。これはストーピングで火道がしだいに拡大したことを示す。環状岩体がしずく状なのは、拡大したての角(かど)が残っているのはなかろうか。

次の理由でこの岩体は南北方向のσHminのもと、松浦玄武岩が噴出した後期中新世~鮮新世にできたと考えられる。この岩体は東西方向に伸長し、また、環状岩脈に切られる板状岩脈も同方向だからである。さらに周囲には、この方向の系統節理がある。環状岩体の周囲で系統節理は環状岩脈を避けるように湾曲する。この湾曲は、マグマのように母岩より柔らかい物質で満たされた円孔をもつ弾性岩体中の応力場で説明できる。つまり系統節理をつくった伸張応力場のときに、この火道はマグマで満たされていたと考えられる。