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[SVC30-P09] テフラ層序からみた草津白根火山の完新世の噴火様式の推移
キーワード:テフラ層序、水蒸気噴火、草津白根火山
近年,御嶽山2014年噴火や草津白根山2018年噴火など小規模な水蒸気噴火による人的被害が発生している.このような噴火災害を軽減するためには,精密な観測だけでなく,小規模噴火を含む活動履歴の詳細(火口位置,噴火頻度,噴火規模)を明らかにすることが重要である.また,水蒸気噴火の発生源である熱水系の形成・維持・発達には,マグマ活動が影響している可能性が考えられる(高温の揮発性成分の供給,マグマの浅所貫入・移動による安定な地熱環境の擾乱等)ため,水蒸気噴火とマグマ噴火の時間空間的関連性についても検討する必要がある.
本研究で対象とした草津白根火山は,有史以降,水蒸気噴火を繰り返している活火山である.近年の主要な噴火活動場である白根火砕丘群と本白根火砕丘群について,最近,石崎ほか(2021),亀谷ほか(2020,2021)により噴出物層序が明らかになるとともに,沼田ほか(2023)により噴出量階段図に基づくマグマ噴火ポテンシャル評価も行われている.その一方で,小規模噴火の履歴や各火砕丘の噴火様式推移については未詳であった.
本研究では,地質調査,土壌の放射性炭素年代測定およびテフラの物質科学的解析をおこない,小規模噴火を含む噴火履歴を検討した.特に,白根火砕丘群と本白根火砕丘群における噴火の頻度・規模,噴火様式の推移を把握することを目的とした.その結果,以下のような活動推移が明らかになった.白根火砕丘群では約7600~約3800年前に比較的規模の大きなマグマ噴火と水蒸気噴火が発生し,それ以降は現在まで水蒸気噴火を10回以上繰り返している.本白根火砕丘群は約11000年~約1400年前の断続的なマグマ噴火により南西から北東へ火砕丘が順に形成されるとともに,約4800年前以降は水蒸気噴火が数回発生している.また,テフラ層の分布域と層厚から,本白根火砕丘群よりも白根火砕丘群のほうが水蒸気噴火の頻度・規模は共に大きいと推定される.
水蒸気噴火テフラに含まれる粒子構成比とX線回折分析から得られた石英とクリストバライトのX線ピーク強度の比(Qtz/Crs比)には以下の特徴がある.本白根火砕丘群のテフラはモザイク状石英岩片が主体で,変質した隠微晶質岩片が少なく,Qtz/Crs比が大きい.また,火山体に由来する未変質岩片も多いことから,本白根火砕丘群地下の熱水系は未発達もしくは発達過程にあると考えられる.これに対し,白根火砕丘群のテフラは変質した隠微晶質岩片が主体でQtz/Crs比が低く,未変質岩片も少ないことから,地下には成熟した熱水系が存在すると考えられる.こうした熱水系の成熟度の違いが水蒸気噴火の頻度や規模に影響していることが示唆される.
謝辞:本研究は「科学研究費補助金(23K13536)」,「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」,「株式会社パレオ・ラボ若手研究者を支援する研究助成(第13期)」の支援を受けました.記して感謝申し上げます.
本研究で対象とした草津白根火山は,有史以降,水蒸気噴火を繰り返している活火山である.近年の主要な噴火活動場である白根火砕丘群と本白根火砕丘群について,最近,石崎ほか(2021),亀谷ほか(2020,2021)により噴出物層序が明らかになるとともに,沼田ほか(2023)により噴出量階段図に基づくマグマ噴火ポテンシャル評価も行われている.その一方で,小規模噴火の履歴や各火砕丘の噴火様式推移については未詳であった.
本研究では,地質調査,土壌の放射性炭素年代測定およびテフラの物質科学的解析をおこない,小規模噴火を含む噴火履歴を検討した.特に,白根火砕丘群と本白根火砕丘群における噴火の頻度・規模,噴火様式の推移を把握することを目的とした.その結果,以下のような活動推移が明らかになった.白根火砕丘群では約7600~約3800年前に比較的規模の大きなマグマ噴火と水蒸気噴火が発生し,それ以降は現在まで水蒸気噴火を10回以上繰り返している.本白根火砕丘群は約11000年~約1400年前の断続的なマグマ噴火により南西から北東へ火砕丘が順に形成されるとともに,約4800年前以降は水蒸気噴火が数回発生している.また,テフラ層の分布域と層厚から,本白根火砕丘群よりも白根火砕丘群のほうが水蒸気噴火の頻度・規模は共に大きいと推定される.
水蒸気噴火テフラに含まれる粒子構成比とX線回折分析から得られた石英とクリストバライトのX線ピーク強度の比(Qtz/Crs比)には以下の特徴がある.本白根火砕丘群のテフラはモザイク状石英岩片が主体で,変質した隠微晶質岩片が少なく,Qtz/Crs比が大きい.また,火山体に由来する未変質岩片も多いことから,本白根火砕丘群地下の熱水系は未発達もしくは発達過程にあると考えられる.これに対し,白根火砕丘群のテフラは変質した隠微晶質岩片が主体でQtz/Crs比が低く,未変質岩片も少ないことから,地下には成熟した熱水系が存在すると考えられる.こうした熱水系の成熟度の違いが水蒸気噴火の頻度や規模に影響していることが示唆される.
謝辞:本研究は「科学研究費補助金(23K13536)」,「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」,「株式会社パレオ・ラボ若手研究者を支援する研究助成(第13期)」の支援を受けました.記して感謝申し上げます.