日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC31] 火山噴火のメカニズム

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:無盡 真弓(東北大学)、田中 良(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、丸石 崇史(防災科学技術研究所)、村松 弾(東京大学地震研究所)

17:15 〜 18:45

[SVC31-P04] 気泡と結晶を含む低粘度マグマのアナログ引張実験:破壊における力の測定と破壊の様子の観察

*小田 沙也加1並木 敦子1 (1.名古屋大学)

キーワード:マグマ、破砕

爆発的噴火は大きな被害を起こしやすく、そのメカニズムを知ることは重要である。爆発的な噴火を引き起こすのに必要なメカニズムには、マグマの破砕がある。マグマの破砕とは、連続したマグマが粉々になりガスと火山砕屑物となる現象である。低粘度マグマは一般に溶岩流を流す噴火を起こすが、マグマ中に結晶が含まれるとマグマの性質が変化し、脆性破壊が可能となる(Moitra et al., 2018)。ここで、マグマには気泡も含まれるが、気泡の役割は明らかではない。結晶と気泡がマグマの破壊の仕方にどのように影響するかを明らかにするため、気泡と結晶を含む低粘度マグマのアナログ引張実験を行った。
2種類の粘性率(~10 Pa s、250-500 Pa s)の水あめを液相として用い、純粋な液体、気泡を含む流体、結晶を含む流体、気泡と結晶を含む流体の計8種類の懸濁液を作成した。結晶は直径~100μmのプラスチック粒子で代用した。作成した懸濁液を一定速度で引張して、液の挙動を観察し、液にかかる力を測定した。
結晶を含む液は小さい変位で破壊が生じるが、結晶を含まない液は糸状の構造を作り、破壊が生じない。気泡を含む流体について、250-500Pa sの流体は糸状に伸びて破壊されないが、~10Pa sの流体は引張を受けて切れた後、表面張力による液滴を形成する。結晶を含む流体について、250-500Pa sの流体は亀裂により小さい変位で破壊されるが、~10Pa sの流体には亀裂は生じず大きい変位で破壊が起こる。引張時に液にかかる力は、変位が増加するにつれて小さくなる。液相の粘性率が250-500Pa sの流体にかかる力は含有物の種類によらず~10Pa sの流体にかかる力より大きい。したがって、液相の粘性率は引張変形時と破砕の挙動を決定する上で重要な役割を果たしていると言える。
実験により、懸濁液が気泡と結晶を多く含むほど、より小さい変位で破壊が起きることが明らかになった。この結果を説明するため、気泡and/or結晶の間に存在する液相の厚みδを考察した。これは気泡と結晶の体積分率を用いて推定される値である。液相の厚みδが大きいほど、破壊に必要な変位は大きくなることが明確に示された。つまり、小さい変位で破壊が起こるほど液相が薄くなるということを示唆する。液相の粘性率が250-500 Pa sの気泡のみを含む流体は、そのようなδでは破壊が生じなかったが、液相の粘性率が~10 Pa sの流体では破壊が起こった。これは、粘性応力と表面張力の比であるCapillary数の違いによるものと考えられる。また、本研究では、脆性と延性の中間的な破壊様式を発見した。これは懸濁液中に気泡が含まれるために生じた可能性がある。気泡や結晶の含有量と液相の粘性率を組み合わせることで、軽石やペレの毛、ペレの涙といった火山砕屑物の多様な形態を説明できると考えらえる。