17:15 〜 18:45
[SVC31-P08] 定量的火山灰情報の開発状況
キーワード:航空気象、噴煙モデル、大気輸送モデル、定量的情報
導入
火山灰が飛散すると、被爆した航空機のエンジンが停止したり、飛行場に堆積して航空機の離着陸を妨げたりすることがある。このような被害を回避するため、国際民間航空機関(ICAO)は、世界気象機関(WMO)の協力を得て、火山灰の分布や拡散予測を含む航空路火山灰情報(VAA)を提供する航空路火山灰情報センターの設置を勧告し、世界9か所のVAACを指名した。日本では、気象庁が運用する東京航空路火山灰情報センター(東京VAAC)が、民間航空会社や航空関係機関等に対してVAAを提供している。
VAAは火山灰の拡散領域のみを実況・予測する情報であるが、利用者からの要望を受け、火山灰の濃度やその確率を予測する「定量的火山灰情報(QVA, 図参照)」を新たに導入することがICAOで検討されている。現在、東京VAACは気象研究所と連携して、QVA提供開始に向けた技術開発を進めている。VAAに使用されている現行モデルからの主要な改善点は、一次元噴煙モデル「NIKS-1D」(Ishii et al., 2022)を開発・導入し、噴煙から大気中に放出される火山灰粒子を定量的に計算できるようになった点である。本発表では、東京VAACのQVA開発状況について述べる。
NIKS-1Dの詳細
VAAに用いている現行噴煙モデルではSuzuki(1983)の近似関数に則って噴煙内に粒子が分布されている。今回導入するNIKS-1Dは、噴煙のダイナミクスに基づいて噴煙から放出される粒子量を計算する物理モデルである(注:”NIKS”は開発者4名の頭文字)。火口直上で上昇する噴煙柱の運動は噴煙柱モデル(Woods 1988; Bursik 2001)によって、浮力中立高度(NBL)を流れる噴煙の運動は風下重力流モデル(Bursik et al. 1992)によって記述する。それぞれのプロセスに粒子沈降モデル(Martin and Nokes 1988; Koyaguchi et al. 2009)を結合すれば、運動する噴煙から離脱する粒子量、および噴煙内に残存し続ける粒子量を求めることができる。その粒子量を気象庁開発の移流拡散モデル「JMA-ATM」(Shimbori and Ishii 2021)に入力し、大気中の火山灰粒子の運動を計算することによって、定量的な火山灰濃度予測が得られる。
火山灰が飛散すると、被爆した航空機のエンジンが停止したり、飛行場に堆積して航空機の離着陸を妨げたりすることがある。このような被害を回避するため、国際民間航空機関(ICAO)は、世界気象機関(WMO)の協力を得て、火山灰の分布や拡散予測を含む航空路火山灰情報(VAA)を提供する航空路火山灰情報センターの設置を勧告し、世界9か所のVAACを指名した。日本では、気象庁が運用する東京航空路火山灰情報センター(東京VAAC)が、民間航空会社や航空関係機関等に対してVAAを提供している。
VAAは火山灰の拡散領域のみを実況・予測する情報であるが、利用者からの要望を受け、火山灰の濃度やその確率を予測する「定量的火山灰情報(QVA, 図参照)」を新たに導入することがICAOで検討されている。現在、東京VAACは気象研究所と連携して、QVA提供開始に向けた技術開発を進めている。VAAに使用されている現行モデルからの主要な改善点は、一次元噴煙モデル「NIKS-1D」(Ishii et al., 2022)を開発・導入し、噴煙から大気中に放出される火山灰粒子を定量的に計算できるようになった点である。本発表では、東京VAACのQVA開発状況について述べる。
NIKS-1Dの詳細
VAAに用いている現行噴煙モデルではSuzuki(1983)の近似関数に則って噴煙内に粒子が分布されている。今回導入するNIKS-1Dは、噴煙のダイナミクスに基づいて噴煙から放出される粒子量を計算する物理モデルである(注:”NIKS”は開発者4名の頭文字)。火口直上で上昇する噴煙柱の運動は噴煙柱モデル(Woods 1988; Bursik 2001)によって、浮力中立高度(NBL)を流れる噴煙の運動は風下重力流モデル(Bursik et al. 1992)によって記述する。それぞれのプロセスに粒子沈降モデル(Martin and Nokes 1988; Koyaguchi et al. 2009)を結合すれば、運動する噴煙から離脱する粒子量、および噴煙内に残存し続ける粒子量を求めることができる。その粒子量を気象庁開発の移流拡散モデル「JMA-ATM」(Shimbori and Ishii 2021)に入力し、大気中の火山灰粒子の運動を計算することによって、定量的な火山灰濃度予測が得られる。