[U-11] CO環境の生命惑星化学

[U11-P10] アルカリ深海熱水噴出孔を模した反応装置による硫化鉱物が関与する触媒作用の再現

*種村 晶^1,2、山本 正浩^1,2、北台 紀夫² (1.横浜市立大学、2.海洋研究開発機構)

キーワード：熱水噴出孔、化学進化、生命起源、原始代謝、流体反応装置、無機触媒

生命の起源を考えるにあたっては、生命活動に関与する物質が非生物的合成により発生したことを想定する必要がある。この前提に基づき、深海の熱水噴出域において生命が派生したとするシナリオについても研究が進められている。熱水と海水の反応により生じる金属硫化物は化学反応における無機触媒として作用し、現在の生物が持つ酵素の役割を担うことで反応の進行を促した。加えて化学反応の材料分子や反応を進行させる還元力が持続的に供給されることから、この地点において原始的な代謝経路が発生し、生命を構成する物質が生じた可能性がある。本研究の目指すところは、冥王代の地球環境中において発生したと考えられる連続的な化学反応を再現し、生命を構成する物質の合成過程を明らかにすることである。しかしながら、生命発生当時の環境において発生した反応を直接観測することは不可能である。そのため、仮説の検証を進めるには類似した環境を人工的に再構築する必要がある。そこで、本研究では古代の熱水環境条件を模擬することのできる反応装置を作成した。硫化物イオンに富んだアルカリ熱水および金属イオンに富んだ酸性海水をそれぞれ作成し、流速・圧力・温度を制御しながら装置内部の流路に設置した多孔質ガラスのパイプを介して反応させた。多孔質ガラスの表面には硫化金属を主成分とする鉱物からなるチムニー壁が形成され、材料分子を投入することで触媒反応による生体分子の合成が期待される。本発表では金属触媒によるアミノ酸合成に焦点を当てた研究の進捗を報告する。