日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-11] CO環境の生命惑星化学

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:上野 雄一郎(東京工業大学大学院地球惑星科学専攻)、北台 紀夫(海洋研究開発機構)、鈴木 志野(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)、尾崎 和海(東京工業大学)

17:15 〜 18:45

[U11-P13] 始原的または地球外の電気生態系探索を見据えた深海熱水噴出域での電気化学探査

*山本 正浩1川田 佳史1、高木 善弘1、小林 瑠那1,2、下新井田 康介1,2、設樂 真莉子1,2、谷崎 明子1、鹿島 裕之1、平井 美穂1高谷 雄太郎3野崎 達生1,4,3笠谷 貴史1、高井 研1 (1.海洋研究開発機構、2.横浜市立大学、3.東京大学、4.神戸大学)

キーワード:電気化学探査、電気合成、深海熱水噴出域

前生物的な同化代謝が深海熱水噴出域で発生する電気エネルギーによって駆動されたとする「電気化学進化説」が提唱され、それを証明するための研究が進められている。この仮説が正しいならば、「生命体」に進化した後も「細胞」の活動を維持するためのエネルギー源として電気を利用し続けるという選択肢は十分に考えられる。実際に現代の地球においても電気エネルギーを利用して生育できる微生物、いわゆる電気合成微生物が存在することが知られるようになってきている。それでは現代の地球の深海熱水噴出域噴出域には電気合成微生物は生存しているのだろうか? 電気合成生態系は形成されているのだろうか? この問題に答えることは、初期地球(天体)の生態系の形態を考える上で重要なヒントを与えることになる。
 本発表では、深海熱水噴出域で実施された電気化学探査による電気微生物生態系の探査について紹介する。
 我々は深海熱水噴出域の海底で電場計測を行いつつ岩石の採取を行った。採取した岩石試料について、導電性、鉱物組成、元素組成、微生物群集組成の解析を行なった。これらのデータを用いて多変量解析を行なったところ、高電場かつ高導電性の電気特性を持つ岩石試料において電気活性微生物と考えられる微生物種の存在率の上昇が見出された。特にこのうちの一種については電気合成微生物であることが示唆された。
 今回の結果は、深海熱水噴出域において従来知られる化学合成生態系以外にも電気合成生態系が形成され得ることを示唆している。同一の深海熱水噴出域内においても環境条件次第で化学合成が有利になる場合と電気合成が有利になる場合が生ずるため、生存可能領域が拡大されるのみならず、生存戦略の多様性によって系の堅牢性が増大することを意味している。このことは、始源的あるいは地球外の微生物生態系の環境を探索する上で電気の存在を考慮する必要性を支持しており、電気化学探査が強力なツールになることを示している。