日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-12] 人工知能が拓く地球惑星科学の将来

2024年5月26日(日) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:長尾 大道(東京大学地震研究所)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、飯田 佑輔(新潟大学)、中野 満寿男(海洋研究開発機構)、座長:長尾 大道(東京大学地震研究所)、飯田 佑輔(新潟大学)、中野 満寿男(海洋研究開発機構)、加納 将行(東北大学理学研究科)


11:15 〜 11:35

[U12-02] 機械学習による地震学の牽引

★招待講演

*久保 久彦1直井 誠2加納 将行3 (1.国立研究開発法人防災科学技術研究所、2.北海道大学、3.東北大学)

キーワード:機械学習、地震学、地震カタログ作成、地震活動解析、地震動予測、地殻変動データ

近年、ディープラーニングを含む機械学習技術は目覚ましい発展を遂げ、地震学を含む様々な科学分野で大きな研究成果を生み出している。ここでは、地震学のいくつかの分野における機械学習の応用事例をレビューし、機械学習を用いることの長所と難しさについて議論する。
まず、地震カタログの作成に関する研究として、イベントの検出・分類、到着時刻のピッキング、類似波形の探索、焦点メカニズムの解析、古地震記録の解析などの要素プロセスに関する研究を紹介する。次に、地震リスク評価や地震動解析に関する研究を紹介する。さらに、地震動予測に関する研究もレビューする。これらの研究は、出力が地震動指標値もしくは地震動時系列か、入力が特徴量もしくは時系列かによって、4つのグループに分類される。加えて不均衡な地震動データが機械学習モデルに与える影響と、その問題に対するアプローチについて議論する。最後に、地殻変動に関連する測地データの解析について、クラスタリング解析と地震および非地震性現象に起因する測地信号の検出に焦点を当てる。
機械学習技術はこれらの分野を大きく発展させたが、課題も残っている。例えば、自然データセットにおける不均衡は多くの場合で問題であり、誤評価や誤った解釈を引き起こす可能性がある。この問題に対処する効果的なアプローチには、データの増強、ドメイン知識の同時利用、転移学習などがある。深層学習のブラックボックス性に起因する課題もあるが、PINN、作用素学習、BNN、XAIなどの最新技術を用いることができる。機械学習の効率性・正確性・柔軟性は、地震学における様々なタスクへの適用の原動力となっている。機械学習が効果的に解決できる地震学の問題はまだまだ残っており、機械学習の適用は地震学の知見をさらに広げ、発展させていくだろう。