15:30 〜 15:45
[U14-07] 気候・環境問題に関連した総合的かつ統合的な研究協力の発展
★招待講演
キーワード:地球温暖化問題、IPCC、国際エネルギー機関、自然科学、社会科学
地球温暖化問題は、世界中の全ての国が即座に対処を求められるほど深刻な環境問題なので,これは地球科学の分野の中でも最重要の課題と位置付けられている.この解決には自然科学と社会科学の連携が求められる.しかしながら,課題があまりに大きいので,全体像を把握することが難しい.「地球温暖化による気温上昇は,2100年の時点で,産業革命以前と比べて2℃より低く保つ」との目標は,広く広報されているので,皆が認識している.IPCCは,1850年以降の累積CO2排出量は,現在2300Gtで,これが3800Gtになると世界の平均気温は2℃上昇してしまうと推定している.一方,エネルギーの専門家集団である国際エネルギー機関(IEA)は,化石燃料の消費量は今後とも現状以上に継続すると推定している.これは現実的な推定値であると評価されている. 両者の見解をあわせると,地球の平均気温は2070年の時点で2℃上昇してしまう. 半世紀後の世界予測は,IPCCとIEAで,大きく食い違っており,学際的な研究の取り組みが求められる. さて,考古学が関係した分野に,『日本人の成立や日本社会の進化』などを研究する分野がある. ヒトの移動や社会の変化には,気候変動が関わったという根強い考えがある. 私は気候・環境変動が直接的というより間接的に社会を左右すると考えている. 具体的には,気候・環境変動は「食料・生業・経済」「ヒト」「人間社会・文化・文明」という3本柱に,派生的に「技術革新」「風習・宗教・言語」「移動・集落」に影響を与えている. 全体として,気候・環境変動は日本の社会に影響を与えてきた. これらを解析するには,古気候・古環境学,考古学,人類学,歴史学,経済学,社会学など多分野が協力して研究する段階にまで,学問が発展してきたと考えている.
