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[U15-P05] 2024年能登半島地震における応力場に対する断層のすべりやすさの評価
キーワード:2024年能登半島地震、応力場、断層
2024年能登半島地震(M 7.6 )は、2024年1月1日に能登半島東部の深さおよそ15kmで発生した。能登半島の応力場は、東部でNW-SE方向に圧縮軸を持つ逆断層場、西部でNW-SE方向に圧縮軸を持つ横ずれ断層場となることが推定されている(Terakawa and Matsu’ura, 2009)。また、反射法地震探査により、この地域に高傾斜角(50-60°)の断層が存在することが推定されている(例えば、岡村, 2002)。それらの断層は日本海形成時の引張応力場により形成したものであるが、現在の圧縮応力場により逆断層(反転テクトニクス断層)として活動していると考えられている。また、能登半島では2020年から地震活動の増加が観測され、この活動には深部から供給された流体が関わっていることが推測されている(例えば、Nishimura et al., 2023; Yoshida et al., 2023; Okada et al., 2024)。
著者らは、これまでに日本海東縁地域や東北日本内陸部で生じた大規模地震を対象にSlip Tendency 法(Morris et al., 1996)を用いて断層のすべりやすさの評価を行った。日本海東縁地域では現在の応力場で形成された低傾斜角の逆断層が応力場に対してすべりやすい状態ですべっており、内陸部では高傾斜角の逆断層(反転テクトニクス断層)が応力場に対してすべりにくい状態ですべっていることが確認できた(Tagami et al., 2024)。
本研究では、2024年能登半島地震発生前の震源域周辺の応力場を推定し、本震に関連する断層のすべりやすさの評価を行う。他地域の結果との比較から能登半島周辺の断層の活動の特徴を示すとともに、能登半島地震を構成する断層群の連動破壊の原因を検討する。
データと手法
応力場はMichael(1984; 1987)の応力テンソルインバージョン法を用いて推定した。推定にはF-net(NIED)のモーメントテンソル解(期間:1997/1/1 – 2023/12/31、深さ:0 – 30 km)を使用した。応力場に対する断層のすべりやすさの評価はSlip Tendency法を用いた。使用した。応力場に対する断層のすべりやすさの評価はSlip Tendency法を用いた。また、Neves et al.(2009)のプログラムを用いて、応力によるすべり角とモデルのすべり角を比較した。断層モデルは先行研究によって推定された6つのモデルを使用した。
結果
1. 応力場
能登半島周辺の地域では逆断層型のメカニズム解が支配的である。メカニズム解の分布や傾向に基づき、東経137°を境に西と東で領域を分け、応力場を推定した。西側の地域は、逆断層型の応力場であり、応力比φ(=(σ2-σ3)/(σ1-σ3))=0.32、最大圧縮方向(SHmax)=109°を示した。東側の地域は、逆断層型の応力場でありφ=0.45、SHmax=130°を示し、西側の応力場に比べ、SHmaxがおよそ20°時計回りに回転した向きとなった。
2. ST値と計算rake
事前推定モデル
・国土交通省(日本海における大規模地震に関する調査検討会)モデル、日本海地震・津波調査プロジェクトモデル
各断層面のST値はそれぞれ0.7よりも大きい値であり、応力場に対してすべりやすい状態であった。計算されたすべり角とモデルのすべり角の差(すべり角差)はおよそ10°以内であった。日本海地震・津波調査プロジェクト断層モデルは国土交通省断層モデルに比べ、傾斜角が高角(50-60°)であるため、より小さいST値となったが、活動的であるとされる0.7程度の値であった。
能登半島地震のデータを基に作られたモデル
・気象庁CMT解、F-net MT解
どちらの応力場においても、ST値はおよそ0.7またはそれ以上であり、応力場に対してすべりやすい状態であった。すべり角差もおよそ10°以内であった。
・国土地理院断層モデル(2024/1/30付)、東北大・京都大・金沢大モデル(太田・山田、2024、地震予知連絡会会報、112巻、印刷中)
各断層面のST値はそれぞれ0.7よりも大きい値であり、応力場に対してすべりやすい状態であった。国土地理院モデルの断層2のすべり角は120°を超えるが、本研究で推定した応力場によるすべり角も同様に大きな値であった。東北大・京都大・金沢大モデルは浅部で高傾斜角、深部で低傾斜角の断層モデルであるが、一部を除いて0.7またはそれ以上の高いST値となった。
考察
能登半島地震の起震断層や関連する断層群はいずれも大きいST値を示し、能登半島地震前の応力場に対してすべりやすい傾向にあった。西側の領域では断層の走向と最大圧縮応力軸が斜交するため、高傾斜角の断層でもすべりやすい状態となる。この傾向は東北地方から北海道の日本海東縁地域における高角の断層がすべりにくい傾向(Tagami et al., 2024)と異なる能登半島周辺の特徴であると言える。 能登半島地震は複数の断層が連動破壊した地震であると推察される。各断層のすべり履歴などの他の要因を考慮する必要はあるが、断層群として概ねすべりやすい傾向にあることから、連動破壊や余震としての遅れ破壊を起こしても不自然でない条件(例えば、カイコウラ地震:Matsuno et al., 2022)にあった/あると推察される。
著者らは、これまでに日本海東縁地域や東北日本内陸部で生じた大規模地震を対象にSlip Tendency 法(Morris et al., 1996)を用いて断層のすべりやすさの評価を行った。日本海東縁地域では現在の応力場で形成された低傾斜角の逆断層が応力場に対してすべりやすい状態ですべっており、内陸部では高傾斜角の逆断層(反転テクトニクス断層)が応力場に対してすべりにくい状態ですべっていることが確認できた(Tagami et al., 2024)。
本研究では、2024年能登半島地震発生前の震源域周辺の応力場を推定し、本震に関連する断層のすべりやすさの評価を行う。他地域の結果との比較から能登半島周辺の断層の活動の特徴を示すとともに、能登半島地震を構成する断層群の連動破壊の原因を検討する。
データと手法
応力場はMichael(1984; 1987)の応力テンソルインバージョン法を用いて推定した。推定にはF-net(NIED)のモーメントテンソル解(期間:1997/1/1 – 2023/12/31、深さ:0 – 30 km)を使用した。応力場に対する断層のすべりやすさの評価はSlip Tendency法を用いた。使用した。応力場に対する断層のすべりやすさの評価はSlip Tendency法を用いた。また、Neves et al.(2009)のプログラムを用いて、応力によるすべり角とモデルのすべり角を比較した。断層モデルは先行研究によって推定された6つのモデルを使用した。
結果
1. 応力場
能登半島周辺の地域では逆断層型のメカニズム解が支配的である。メカニズム解の分布や傾向に基づき、東経137°を境に西と東で領域を分け、応力場を推定した。西側の地域は、逆断層型の応力場であり、応力比φ(=(σ2-σ3)/(σ1-σ3))=0.32、最大圧縮方向(SHmax)=109°を示した。東側の地域は、逆断層型の応力場でありφ=0.45、SHmax=130°を示し、西側の応力場に比べ、SHmaxがおよそ20°時計回りに回転した向きとなった。
2. ST値と計算rake
事前推定モデル
・国土交通省(日本海における大規模地震に関する調査検討会)モデル、日本海地震・津波調査プロジェクトモデル
各断層面のST値はそれぞれ0.7よりも大きい値であり、応力場に対してすべりやすい状態であった。計算されたすべり角とモデルのすべり角の差(すべり角差)はおよそ10°以内であった。日本海地震・津波調査プロジェクト断層モデルは国土交通省断層モデルに比べ、傾斜角が高角(50-60°)であるため、より小さいST値となったが、活動的であるとされる0.7程度の値であった。
能登半島地震のデータを基に作られたモデル
・気象庁CMT解、F-net MT解
どちらの応力場においても、ST値はおよそ0.7またはそれ以上であり、応力場に対してすべりやすい状態であった。すべり角差もおよそ10°以内であった。
・国土地理院断層モデル(2024/1/30付)、東北大・京都大・金沢大モデル(太田・山田、2024、地震予知連絡会会報、112巻、印刷中)
各断層面のST値はそれぞれ0.7よりも大きい値であり、応力場に対してすべりやすい状態であった。国土地理院モデルの断層2のすべり角は120°を超えるが、本研究で推定した応力場によるすべり角も同様に大きな値であった。東北大・京都大・金沢大モデルは浅部で高傾斜角、深部で低傾斜角の断層モデルであるが、一部を除いて0.7またはそれ以上の高いST値となった。
考察
能登半島地震の起震断層や関連する断層群はいずれも大きいST値を示し、能登半島地震前の応力場に対してすべりやすい傾向にあった。西側の領域では断層の走向と最大圧縮応力軸が斜交するため、高傾斜角の断層でもすべりやすい状態となる。この傾向は東北地方から北海道の日本海東縁地域における高角の断層がすべりにくい傾向(Tagami et al., 2024)と異なる能登半島周辺の特徴であると言える。 能登半島地震は複数の断層が連動破壊した地震であると推察される。各断層のすべり履歴などの他の要因を考慮する必要はあるが、断層群として概ねすべりやすい傾向にあることから、連動破壊や余震としての遅れ破壊を起こしても不自然でない条件(例えば、カイコウラ地震:Matsuno et al., 2022)にあった/あると推察される。