日本地球惑星科学連合2024年大会

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[J] ポスター発表

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[U-15] 2024年能登半島地震(1:J)

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

17:15 〜 18:45

[U15-P105] 内灘町及びかほく市における液状化現象の被害特徴

*齊藤 龍1、河井 智弘1、山田 進二1、関井 勝善1 (1.SOMPOリスクマネジメント株式会社)

キーワード:令和6年能登半島地震、液状化、内灘町、かほく市、現地踏査

2024年能登半島地震によって液状化現象が発生した。本発表では、液状化発生域における建物被害と地質(微地形区分)や地形との関係をより深く理解するため、液状化被害が深刻だった石川県河北郡内灘町及びかほく市の一部地域を対象に2024年1月31日に現地踏査を行った。調査で明らかにした被害状況の特徴を報告する。
 調査方法は地表状況(噴砂,地盤の変状や亀裂など)と建物及び構造物の概観(瓦屋根や外壁の損傷、塀や灯篭の倒壊など)に着目し徒歩で踏査し、目視観察でそれらが認められた地点と被害区分を地図上に記載した。調査範囲は、内灘町(鶴ヶ丘、向粟崎、大根布、宮坂、西荒屋、室)及びかほく市(大崎、内日角、宇野気)の県道8号沿い及びその周辺の道路沿いである。なお、地形区分に関する情報は、国土地理院「土地条件図」に、液状化危険度に関する情報は北陸地方整備局「液状化しやすさマップ」に基づく。
 調査対象地域を踏査したところ、液状化による噴砂、電柱や標識など構造物の傾動や沈下、建物の不同沈下、宅地地盤や舗道などの陥没・開口亀裂・波状変形、マンホールや側溝の抜け上がりなどの顕著な被害が多数見受けられた。また、地割れが要因と考えられる地表の亀裂、建物の損壊も確認され、標高の低い干拓地側(南東側)に1m程度崩れている箇所もあった。地割れは内灘町からかほく市にかけて砂丘と干拓地の境界で帯状に沿って点在しており、地割れ直上や極近傍は建物被害が特に集中していた。この帯状の地割れと道路が近接し並行する地区では、道路を挟んだ片側で建物被害が大きく、反対側で比較的小さくなる対極的な分布も見られた。地割れ上にある河川の岸壁は損壊し、砂が河川に噴砂し流出しており、それ以外の岸壁には大きな損傷は見られなった。一方、道路に接道している宅地造成のための1m程度の高さの盛土は、のり面ごと側方移動し道路にせり出していた。そのため、宅地地盤が歪み、建物が基礎ごと傾く甚大な被害となった。このような被害は内灘町宮坂からかほく市大崎の区間で多く見られた。
 盛土造成は標高の高い北西側の砂丘から低い南東側の干拓地への斜面で施工されている。より標高の低い干拓地側(南東側)方向に地区全体の地盤が側方移動したことで、盛土造成地の建物被害が広範囲で生じたと考えられる。その側方移動は、地形区分の境界、すなわち砂丘と干拓地の性質の異なる地質の境界付近に点在していた地割れが発生起点となり、高所(北西)から低地(南東)に地盤がそのままずり動いたと考えられる。内灘町の北西(海側)にそびえる砂丘は、内灘町宮坂からかほく市宇野気に向かうにつれて標高が低くなっていく。砂丘の標高が高い内灘町宮坂からかほく市大崎の区間は、液状化現象に加えて地割れや側方移動も発生し被害を助長させたと考えられ、一方、砂丘の標高が低いかほく市宇野気周辺では、液状化現象の被害は比較的小さく、地割れにおいては観察できなかった。砂丘の標高が低くなるにつれて、麓の被害が比較的小さくなる傾向があることを示唆している。
 今後、液状化発生域において、建物のリスクをより詳細に評価する際には、側方移動の起点となるであろう地形区分の境界近傍の被害関数を検討する必要である。また、建物被害が比較的軽微な場合でも、生活インフラの寸断や主要道路の不通によって生活や事業の継続に大きな支障をもたらすため、このような間接被害によるリスク評価についてもさらなる調査研究が必要である。