[U-15] 2024年能登半島地震(1:J)

[U15-P107] 2024年能登半島地震における石川県中部，富山県，新潟県新潟市信濃川旧河道の詳細な現地踏査に基づく液状化地図の作成

*青山 雅史¹ (1.群馬大学共同教育学部)

キーワード：液状化、液状化地図、現地踏査、地形条件、土地履歴、2024能登半島地震

2024年能登半島地震により液状化が発生した地域のうち，石川県中部，富山県，新潟県新潟市信濃川旧河道などの地域を対象として，詳細な現地踏査に基づいた液状化地図を作成した。また，そのうちのいくつかの地域を対象として，本地震における液状化発生域の地形条件や土地履歴を検討した。
現地踏査は，石川県金沢市，内灘町，かほく市，宝達志水町，羽咋市，七尾市，富山県富山市，高岡市，射水市，氷見市，新潟県新潟市西区と江南区の信濃川沿岸部を対象として実施した。噴砂はその地点における液状化発生を示す指標となるため，現地踏査において噴砂が確認された道路区間や空き地，農地の噴砂を地図化し，目視観察で確認された液状化に起因するとみられる地盤変状や構造物被害などを記載することで，液状化発生域の分布や液状化被害の概況を把握することが可能となる。また，調査地域のうちのいくつかの地域を対象として，本調査研究で作成した液状化地図と地理院地図地形分類図，旧版地形図や過去に撮影された空中写真などの地理空間情報とのGISを用いた重ね合わせ分析や江戸期に作成された絵図，文献資料などを参考として，本地震液状化発生域の地形条件や土地履歴との関係について検討した。
砂丘縁辺部，浜堤での液状化：金沢市から羽咋市にかけての日本海沿岸部には砂丘が発達しており，砂丘内陸側縁辺部に該当する地域において液状化が多発した。それらの液状化発生域では，液状化に伴う側方流動によるものとみられる家屋や道路，電柱などの構造物や宅地地盤の被害が多数発生した。富山県西部（氷見市，高岡市伏木，射水市）では，沿岸部の浜堤（砂州）において液状化の発生が多数確認された。氷見市では，浜堤上約2kmにわたって多数の戸建家屋の不同沈下，宅地地盤の沈下，傾斜などの液状化と関連するとみられる被害が発生した。本研究では調査未実施であるが，新潟市西区の砂丘内陸側縁辺部においても液状化が多発し甚大な被害が発生したことが確認されている。砂丘縁辺部や浜堤の液状化発生域は，高度経済成長期以降に宅地造成が進んだ地区もあるが，明治期には既に集落が形成されていた地区でも多くの液状化発生が確認された。
旧河道，旧湿地における液状化：新潟県西区と江南区の信濃川沿岸部では，細長い帯状の領域において液状化が発生した。それらの領域は，江戸期や明治期に信濃川の治水対策を目的とした河川改修による河道付け替えとその後の河道埋め立て，その後高度成長期以降に宅地造成が進んだ領域である。この地域では1964年新潟地震でも液状化が発生しており，それから60年経過した本地震において再液状化が生じたことになる。高岡市伏木地区の液状化は，かつての湿地が江戸後期に造成されて市街（宅地）化が進んだ地区において多発し，甚大な液状化被害がもたらされた。氷見市市街地では前述の浜堤の内陸側でも広域的に液状化が発生し，その領域は江戸期以降に旧河道や湿地などを埋め立てた（盛土された）領域である可能性がある。富山市神通川旧河道，高岡市庄川旧河道や羽咋市羽咋川旧河道などでも，多くの地点で液状化の発生が確認された。
臨海部埋立地の液状化：七尾市，氷見市，高岡市伏木地区や射水市では，臨海部埋立地における液状化の発生が多数の地点で見られた。それらの埋立地は，1980年代以降に埋め立てられて造成されたものが多い。