日本地球惑星科学連合2024年大会

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[J] ポスター発表

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[U-15] 2024年能登半島地震(1:J)

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

17:15 〜 18:45

[U15-P110] 複数波長の干渉SAR解析に基づく令和6年能登半島地震の建物被害推定

*本田 謙一1、田口 智大1、浅田 典親1、虫明 成生1、今井 靖晃1、西村 智博1向山 栄1、村上 健治郎2 (1.国際航業株式会社、2.株式会社Spectee)

キーワード:建物被害、干渉SAR、ALOS-2、Sentinel-1、コヒーレンス変化

地震国である日本にとって、地震が発生した際、迅速に建物の被災状況を把握することは、災害の初動対応において非常に重要である.令和6年能登半島地震は震度7という烈震により甚大な建物被害が当初より想定された。しかし現地を調査する余裕もインフラもなく、その建物被害の全容把握は困難を極めた。
衛星リモートセンシングは,広域を計測できることから,災害時の被害把握が期待されている.令和6年能登半島地震においても、発災直後から政府系衛星、民間衛星を含め多くの光学衛星、SAR衛星が観測を行い現地の情報を提供した。
 本発表では,令和6年能登半島地震において、衛星SARを用いて建物被害を抽出した事例について紹介する.
 干渉SAR解析と同時に得られるコヒーレンスは2時期の位相と強度の複素相関であり、干渉性の指標であるが、建物被害が発生すると干渉性が低下することが知られている。
能登半島地震では発災一週間後までにLバンドのALOS-2とCバンドのSentinel-1で干渉可能な観測が行われた。本研究では災害前2時期と災害後1時期のSAR画像を用いて、干渉SAR解析による干渉性の低下と二つの波長のSAR衛星の感度の差を組み合わせた建物被害抽出を行った。
解析結果より、能登半島先端の震源域に近づくにつれて、干渉性の低下が大きくなり建物被害が多くなっている様子が把握できた。特に石川県輪島市の火災焼失地区は他の領域と比較しても大きく干渉性が低下しており、干渉性の低下と建物被害の大きさの相関が認められた。
また、液状化の被害があった石川県内灘町や新潟県新潟市西区では砂丘の縁や旧河道に沿った明瞭な干渉性の低下域が見られた。現地確認の結果やSNSによる投稿の分布から、被害領域や被害規模をよく捉えられていることが分かった。また、波長の違いによる建造物被害への感度の差についても分析する。
衛星リモートセンシングによる被害把握は有用ではあり、能登半島地震で行われたように,衛星データを迅速に撮影し,解析結果を提供することで,初期の災害情報把握の一つの選択肢になり得ることを示した.また,建造物被害域の推定は,光学写真で判読することは難しく,SARの干渉性による推定の意義は大きいと考えられる.
 最後に,このたびの災害で被災された方々に謹んでお見舞い申し上げます.