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[U15-P14] 多数のテンプレート地震を用いた相対震源決定法（hypoTD）による能登半島地震の震源分布
キーワード：hypoTD、hypoDD、相対震源決定、能登半島地震
１． はじめに 海域と陸域での地下構造には、大きな違いがあることが知られている。能登半島地震は、海域と陸域との境界で発生した地震であるため、地下構造の不均質性が、震源決定の大きな誤差要因になる可能性がある。 相対震源決定を行うことにより、地下構造の影響を取り除けることが知られているが、堀内・他（2022、https://www.homeseismo.com/html/sotaijido.html）は、多数のテンプレート地震を用いた相対自動震源決定システムを開発した。堀内・佐藤（本合同大会)は、気象庁一元化震源の到着時刻データを用いた、日本列島全域で発生した地震の相対震源決定方法について示している。本報告では、能登半島地震の相対震源決定結果について報告する。
２．多数のテンプレート地震を用いた相対震源決定法(hypoTD) 従来のテンプレート地震を用いた震源決定法では、一個のテンプレート地震を用いて、複数の地震の震源を決定している。堀内・他(2022)による方法では、地震毎に、多数の(50個)テンプレート地震を用いて相対震源決定を行うものである。以下では、この震源決定法をhypoTDと呼ぶ。気象庁一元化震源には、自動処理により決定された震源が多数含まれており、到着時刻の読み取り精度の低いデータが含まれている可能性がある。hypoTDは地震毎に、多数のテンプレート地震と相対震源決定を行うことから、理論走時と、その分散を利用して、間違った読み取りデータを検出する機能を有している。この機能を用いて、精度の低いと考えられる読み取りデータを削除して、震源決定を行うようにした。一般に、大きい地震は、震源時間関数の影響で、Ｓ波初動がＰ波コーダ波に埋もれてしまい、原理的に読み取ることが難しい。hypoTDは、P波到着時刻データのみを用いても、安定した解が得られことから、マグニチュードが5.0より大きい地震のS波データは、削除するようにした。
３．結果 震源再決定を行ったのは、2002年から2024年に、日本列島とその周辺で発生した、410万個の地震である。震源の３次元表示ソフトを作成し、能登半島の地震のみならず、日本全域のhypoTDによる震源と、気象庁一元化震源の震源分布を比較した。その結果、hypoTDにより、地下構造の不均質性の影響が除去され、精度の高い震源が決定されることが示された。また、首都圏直下の地震、2004年中越地震の余震、2004年東海道沖地震の余震について、Waldhauser & Ellsworth （2002）によるhypoDDによる震源と、hypoTDによる震源を比較した結果、hypoTDは、hypoDD以上に精度が高く、安定した解が得られることが示された。hypoTDによる能登半島地震の震源分布の特徴は、以下である。
１）気象庁一元化震源に比べ、より明瞭な震源分布が得られた。２）震源域の南西側では、南東下がりの面に沿って発生する地震が卓越するが、余震域の北東端では、主断層と直交する南東下がりの面に沿って地震が発生している。３）本震の震源について、テンプレート地震50個をランダムに100組作成し、P波のみを用いて、100組の震源を計算し、震源決定精度を調べた。その結果、100組の震源位置のばらつきは小さく、本震は、余震域の下端に近いところで発生していることが示された（図１）。Ｓ波を用いると、震源がより深く決定され、走時残差が大きくなることから、本震のＳ波初動到着時刻は、正しく読み取れていない可能性がある。
４．震源分布と解析ソフトの公開、 多数のテンプレート地震を用いた、相対震源決定法（hypoTD） を用いることにより、精度の高い震源位置の推定か可能になった。Waldhauser & Ellsworth (2000)によるhypoDDは、不均質性の影響を取り除くことができるすぐれた震源決定法であるが、広域で発生する地震には適用できなく、hypoTDに比べ、解がやや不安定である。このため、今後、hypoTDが、いろいろな地域での地震活動の研究に使われる可能性があると期待される。そこで、hypoTDによる震源決定ソフトを㈱ホームサイスモメータ（https://www.homeseismo.com)から公開する予定である。また、㈱白山工業（https://www.hakusan.co.jp)のウェブサイトでは、日本列島全域で過去２２年間に発生した地震のhypoTDによる震源分布を、３次元表示ソフトで用いて見られるようにする予定である。本研究では、防災科学技術研究所から公開されている、気象庁一元化処理検測値データを使わせて頂きました。
２．多数のテンプレート地震を用いた相対震源決定法(hypoTD) 従来のテンプレート地震を用いた震源決定法では、一個のテンプレート地震を用いて、複数の地震の震源を決定している。堀内・他(2022)による方法では、地震毎に、多数の(50個)テンプレート地震を用いて相対震源決定を行うものである。以下では、この震源決定法をhypoTDと呼ぶ。気象庁一元化震源には、自動処理により決定された震源が多数含まれており、到着時刻の読み取り精度の低いデータが含まれている可能性がある。hypoTDは地震毎に、多数のテンプレート地震と相対震源決定を行うことから、理論走時と、その分散を利用して、間違った読み取りデータを検出する機能を有している。この機能を用いて、精度の低いと考えられる読み取りデータを削除して、震源決定を行うようにした。一般に、大きい地震は、震源時間関数の影響で、Ｓ波初動がＰ波コーダ波に埋もれてしまい、原理的に読み取ることが難しい。hypoTDは、P波到着時刻データのみを用いても、安定した解が得られことから、マグニチュードが5.0より大きい地震のS波データは、削除するようにした。
３．結果 震源再決定を行ったのは、2002年から2024年に、日本列島とその周辺で発生した、410万個の地震である。震源の３次元表示ソフトを作成し、能登半島の地震のみならず、日本全域のhypoTDによる震源と、気象庁一元化震源の震源分布を比較した。その結果、hypoTDにより、地下構造の不均質性の影響が除去され、精度の高い震源が決定されることが示された。また、首都圏直下の地震、2004年中越地震の余震、2004年東海道沖地震の余震について、Waldhauser & Ellsworth （2002）によるhypoDDによる震源と、hypoTDによる震源を比較した結果、hypoTDは、hypoDD以上に精度が高く、安定した解が得られることが示された。hypoTDによる能登半島地震の震源分布の特徴は、以下である。
１）気象庁一元化震源に比べ、より明瞭な震源分布が得られた。２）震源域の南西側では、南東下がりの面に沿って発生する地震が卓越するが、余震域の北東端では、主断層と直交する南東下がりの面に沿って地震が発生している。３）本震の震源について、テンプレート地震50個をランダムに100組作成し、P波のみを用いて、100組の震源を計算し、震源決定精度を調べた。その結果、100組の震源位置のばらつきは小さく、本震は、余震域の下端に近いところで発生していることが示された（図１）。Ｓ波を用いると、震源がより深く決定され、走時残差が大きくなることから、本震のＳ波初動到着時刻は、正しく読み取れていない可能性がある。
４．震源分布と解析ソフトの公開、 多数のテンプレート地震を用いた、相対震源決定法（hypoTD） を用いることにより、精度の高い震源位置の推定か可能になった。Waldhauser & Ellsworth (2000)によるhypoDDは、不均質性の影響を取り除くことができるすぐれた震源決定法であるが、広域で発生する地震には適用できなく、hypoTDに比べ、解がやや不安定である。このため、今後、hypoTDが、いろいろな地域での地震活動の研究に使われる可能性があると期待される。そこで、hypoTDによる震源決定ソフトを㈱ホームサイスモメータ（https://www.homeseismo.com)から公開する予定である。また、㈱白山工業（https://www.hakusan.co.jp)のウェブサイトでは、日本列島全域で過去２２年間に発生した地震のhypoTDによる震源分布を、３次元表示ソフトで用いて見られるようにする予定である。本研究では、防災科学技術研究所から公開されている、気象庁一元化処理検測値データを使わせて頂きました。