日本地球惑星科学連合2024年大会

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[J] ポスター発表

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[U-15] 2024年能登半島地震(1:J)

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

17:15 〜 18:45

[U15-P18] 長期型海底地震計による新潟県上越沖における2008年12月から2009年10月にかけての地震活動について

*町田 祐弥1篠原 雅尚2山田 知朗2中東 和夫3金沢 敏彦4 (1.海洋研究開発機構、2.東京大学地震研究所、3.東京海洋大学、4.地震予知総合研究振興会)

キーワード:令和6年能登半島沖地震、上越沖、地震活動、長期型海底地震計、メカニズム

日本海東縁部等のひずみ集中帯において、2024年1月1日に能登半島地震(Mj=7.6)が発生した。この地震は2020年12月頃から群発地震が活発に発生しており、これら一連の中で発生したと考えられている。またこの地震は能登半島の沿岸部で発生し、その余震域は上越沖まで発生しているが、この上越沖は海底における定常的な地震観測網がないため、本震が発生する以前の定常的な地震活動を高精度に把握することが困難な領域と考えられる。
東京大学地震研究所では2007年中越沖地震発生後に海底地震計を用いた余震観測,および構造探査を実施した(Shinohara et al., 2008; Nakahigashi et al., 2011).その結果,2007 年中越沖地震では,上部地殻内に多くの余震が発生していることが明らかにされたが、ひずみ集中帯の周辺域の一部は海域であるため,ひずみ集中帯を含むより広範囲での定常的な地震活動の正確な把握を目的として上越沖に長期観測型海底地震計を設置し、2008年12月から2009年10月までの詳細な地震活動の把握を試みた。
本研究では観測期間中の気象庁一元化震源リストを基に,海底地震計で得られたデータから目視により,これらの地震のP波とS波の読み取りを行った.陸域観測網では捉えられていない多くの微小地震も発生していることがわかり、読み取り、P 波の読み取り値が3 個以上,S 波の読み取り値が1 個以上の1230個の地震についても震源決定を行った.震源決定にはhypoMH (Hirata and Matsu’ ura, 1987) を用い,2007 年に本観測域を縦断するように行われた海陸統合地殻構造探査の結果(Nakahigashi et al., 2011)を基に作成した一次元速度構造モデルを用いた.震源決定には観測点毎の堆積層による走時の遅れを考慮した震源決定を行い、このうち,水平方向および深さ方向の誤差がそれぞれ1km,2km 以内の精度のよく震源決定された地震は1101 個となった.ここで得られた初期震源を基に、ひずみ集中帯を含む海域での3次元速度構造を求めた。地震波速度構造の推定にはZhang and Thurber (2003) によるDouble-difference tomography method を用いた。
解析の結果、以下のことが本研究により分かった。1) 2007年中越沖地震周辺においては地震活動は活発に見える。2)それより北西側の領域でも深さ8-13kmにおいて比較的地震が活発に発生しているように見える。これは上部地殻に相当すると考えられる。2) さらに北西側にあたる富山トラフにおいては、地震活動は低調で、ほぼ地震は発生していない。一方でさらに北西側には15-18km程度のやや深部まで地震が発生している領域が見られ、これは能登半島地震余震域の北東端と対応するように見える。
引き続き中越沖で発生する定常的な地震のメカニズム解を推定し、地震活動、地殻構造と合わせて議論を行う。