[U-15] 2024年能登半島地震(1:J)

[U15-P32] 経験的グリーン関数法を用いて推定した2024年能登半島地震の強震動生成域モデル

*染井 一寛¹ (1.一般財団法人GRI財団)

キーワード：2024年能登半島地震、強震動生成域、経験的グリーン関数法

2024年1月1日16時10分（日本時間）に発生した2024年（令和6年）能登半島地震では，震源周辺の強震観測点において，最大震度7（気象庁の震度階）を含む大きな加速度や速度を持つ地震動が観測された．これらの強震動の発生メカニズムを理解するために観測記録から震源特性を把握することは重要であり，本研究では0.1－10 Hzの広帯域の観測記録を対象とした経験的グリーン関数法による地震動シミュレーションによって，強震動生成域モデル（SMGAモデル）の検討を行った．
地震動シミュレーションは，石川県，富山県，新潟県のK-NET観測点10地点，KiK-net観測点8地点を対象に実施した（KiK-net観測点は地中記録を使用した）．ここでは，本震発生後24時間の余震分布等を参考に断層面を設定し，震源周辺で観測された波形の特徴から3枚の正方形のSMGAを断層面上に仮定した（背景領域は考慮しない）．経験的グリーン関数に使用する要素地震記録は，2024年1月2日10時17分のM_w 5.4の余震と，2024年1月9日17時59分のM_w 5.9 の余震の2つのイベントの記録とした．ここでは，各SMGAのパラメータ（SMGAの大きさ，場所，SMGA内の破壊伝播速度，ライズタイム）は，観測記録がシミュレーションによって再現できるよう試行錯誤的に決定した．
18地点の加速度，速度，変位波形は，推定したSMGAモデルによって概ね再現することができた．また，3枚のSMGAは，これらの観測点の地震動に対して別々に寄与していることがわかった．例えば，ISKH01（KiK-net珠洲）やISK001（K-NET大谷）の観測地震動は，震源付近のSMGA1の寄与が大きく，能登半島の東方沖に設定したSMGA2は，佐渡島にあるNIG003（K-NET佐和田），NIG004（K-NET小木）の観測地震動の生成に寄与していた．また，大きな地震動が観測されたISK003（K-NET輪島）やISKH04（KiK-net富来）といった能登半島西部の観測記録は，輪島市の直下付近に存在するSMGA3によって説明できることがわかった．また，暫定的な結果として，本研究のSMGAモデルの大きさや応力降下量から計算される短周期レベルは，既往のスケーリング則（例えば，藤堂・他, 2022, 2023；染井・他, 2023）より若干大きいものの，過去の内陸地殻内地震の結果のばらつきの範囲内程度であることがわかった．推定したSMGAモデルは速報解析に基づく結果であり，今後，断層面設定やパラメータ推定手続きを再検討することにより，モデルの改善を行う必要がある．
謝辞：本研究では防災科学技術研究所のK-NET，KiK-netの強震記録を使用しました．