[U-15] 2024年能登半島地震(1:J)

[U15-P37] 2024年能登半島地震による長周期地震動の空間特性

*久保 久彦¹、山谷 里奈¹ (1.国立研究開発法人防災科学技術研究所)

キーワード：2024年能登半島地震、長周期地震動

2024年1月1日16時10分ごろに発生した2024年能登半島地震（M_JMA 7.6）は、石川県能登地域を中心として、強震動や津波などにより甚大な被害を引き起こした。同地震では顕著な長周期地震動も観測されている。気象庁によると、石川県能登地域において長周期地震動階級４が観測されたほか、新潟県・石川県・富山県・長野県の各地において長周期地震動階級３が観測された。本研究では、同地震による長周期地震動について、石川県・富山県・新潟県における空間特性を調べる。防災科研K-NET, KiK-netの強震波形記録の水平2成分から、減衰定数5%の疑似速度応答スペクトル（pSv）を算出し、各観測点におけるpSvの卓越周期およびピーク値を調べた。
震源域直上にあたる石川県能登地域の観測点では周期1~3秒で大きなpSvが観測された。例えばK-NET正院（ISK002）のpSvは周期3秒前後にピークを持ち、そのピーク値は約580 cm/sであった。ただし石川県能登地域の地震動レベルは既存の距離減衰式による予測の標準偏差の範囲内に収まるものがほとんどであった。石川県中部の邑知潟平野内に位置する観測点であるK-NET羽咋（ISK008）では、周期4.5秒前後にピークを持つpSvが観測されている。そのピーク値は200 cm/sを超えており、距離減衰式による予測値を大きく上回る。また、石川県の金沢平野南部に位置するK-NET小松（ISK011）やK-NET加賀（ISK014）では、周期1秒前後にピークを持つpSvが観測された。それぞれのピーク値は約90 cm/sおよび約130 cm/sであった。
富山県に広がる砺波平野・富山平野は数km以上の厚い堆積層を有する。これらの平野に位置する観測点においては、断層最短距離で約50~70 kmと震源断層から離れているにも関わらず、100 cm/sに匹敵もしくは上回るpSv（卓越周期4-8秒）が観測されている。例えば、K-NET新湊（TYM005）においては、周期6秒前後に約120cm/sのピークを持つpSvが観測された。また、pSvは既存の距離減衰式による予測値の標準偏差を越えるものであり、震源断層近傍の観測点における周期4-8秒のpSvに迫るものであった。またK-NET氷見（TYM002）においては、周期2秒前後に約170 cm/sのピークを持つpSvが観測された。
新潟県の越後平野の中央に位置するK-NET新潟（NIG010）のpSvは、周期2秒前後と8秒前後に2つのピークを持っており、それぞれのピーク値はどちらも約50cm/sであった。この2つのピークを持つpSvは、KiK-net聖籠（NIGH05）やKiK-net荒川（NIGH03）など、新潟平野に位置する他の観測点でも見られた。K-NET新潟で観測された速度波形記録においては、S波主要部では卓越周期が2秒程度であった一方で、その後に続く後続波では卓越周期が8秒程度であった。この後続波は、越後平野および佐渡島の他の観測点における観測波形でも確認された。この後続波が越後平野の広範囲および佐渡海峡を挟んだ佐渡島において確認できることから、越後平野に入射する前の伝播過程にて生成・増幅された後続波が、越後平野の堆積層構造によってさらに増幅されたと考えられる。なお、2023年5月5日に発生した石川県能登地方の地震（M_JMA 6.5）においても、卓越周期8秒前後の後続波が越後平野および佐渡島の観測点で確認されている。またK-NET柏崎（NIG018）では周期1.4秒付近で約100cm/sのピークを有するpSvが、高田平野内に位置するK-NET直江津（NIG025）では周期0.7秒付近で約210cm/sのピークを有するpSvが観測されている。
発表ではM6クラスの地震における観測記録との比較や地震波伝播シミュレーションと合わせた議論も行う。