[U-15] 2024年能登半島地震(1:J)

[U15-P67] 2024年能登半島地震の今後の余効変動に地下の三次元不均質がどのような影響を及ぼし得るか?

*大舘 未来¹、太田 雄策¹、三井 雄太² (1.東北大学、2.静岡大学)

キーワード：地殻変動、2024年能登半島地震、余効変動、粘弾性緩和

本研究は、2024年1月1日に石川県で発生したMj 7.6の能登半島地震に伴う地殻変動へ着目する。能登半島には海食台や段丘が発達しており、地震のような突発的なイベントを伴いながら長期的に隆起してきたことが知られているが(e.g., Hiramatsu et al., 2008)、形成過程の詳細については明らかになっていない。特に、地震後の余効変動を始めとした、ゆっくりした変動の影響を野外地質調査などから知ることは困難である。また、内陸地震の発生過程には未だ謎が多いが、とりわけ、応力・ひずみ分布の時空間発展には、粘性率の不均質構造が重要な役割を果たすと考えられる(e.g., Yamasaki and Seno, 2005)。
そこで、2024年能登半島地震後の粘弾性緩和がこれからどのように生じていくか、地下の三次元不均質場を考慮したモデル計算を行う。半解析的境界要素法（Barbot and Fialko, 2010）を用いたマクスウェル粘弾性緩和のシミュレーションを用いて、国土地理院が公開した矩形断層モデルから生じる応力擾乱に伴う10年分の粘弾性緩和変位を計算した。粘性率構造として、上部地殻・下部地殻・マントルの一次元成層モデルに加えて、先行研究(Nakajima et al., 2022; Nishimura et al., 2023)で指摘された流体に富む下部地殻の存在を参考に、低粘性領域を考慮した三次元不均質モデルを設定した。
まず一次元成層モデルの数値計算結果は、能登半島北部が周辺の海域まで含めて10 cm程度、余効変動で沈降することを示した。これは、地震時の地表変位パターンとは明らかに異なる。次に、三次元不均質モデルと一次元成層モデルを比較したところ、低粘性領域を入れることでその直上は相対的に隆起傾向を示すことがわかった。低粘性領域が広域に広がっているほど、隆起範囲だけでなく隆起量も大きくなる。例えば、震源断層の南側(逆断層の上盤側)に沿って低粘性領域が拡がっていれば、能登半島北部の内陸側が海域に対して数十cm隆起するという、地震時の地表変位パターンと同じ傾向の変動となる。もしこのようであれば、余効変動の影響は、地震時の地表変位をそのまま増幅するような比較的シンプルなものと考えられることになる。