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[U15-P72] 石川県珠洲市で観察された2024年能登半島地震に伴う津波堆積物
キーワード:令和6年能登半島地震、津波堆積物、珪藻化石、石川県、珠洲市
2024年(令和6年)に令和6年能登半島地震が発生した.この地震により日本海沿岸の広範囲で津波が観測され,特に能登半島の東側で大きな津波浸水があった.本発表では,この津波によって形成された津波堆積物の堆積学的・微古生物学的な特徴を報告する.今回のような所謂「現世の津波堆積物」の記載を詳細に残すことにより,津波とそれに伴った堆積物の関係を明らかにし,地層中から過去の津波堆積物を識別するだけではなく,当時の水理環境の復元等に資するデータとなることが期待される.現地調査は2024年1月及び2月に石川県珠洲市宝立町鵜飼・鵜島地区において行った.津波堆積物の観察及び採取とともに浸水痕の高さやデブリの分布範囲の測量もあわせて行った.調査地は標高1.8 mの堤防により日本海と隔てられている低地であり,海岸線と直交する東西方向に堤防から約50 m程度の範囲に津波堆積物が観察された.この場所より内陸側の水田では津波堆積物は見られなかった.一方,津波によって流されたと考えられるデブリは多数見つかった見つかり海岸線から約210 m内陸まで認められた.また,堆積物の採取を行った低地では,140 cm以上の浸水があったことが浸水痕から確認された.津波堆積物の層厚を0.5 m間隔で測定した結果,堤防から8 m内陸の地点で最大(11.2 cm),33.5 m内陸の地点で最小(0.6 cm)であった.さらに,堤防から40 m以上内陸の複数地点で5 cm以上の層厚を持った津波堆積物が確認された.分析用の堆積物を5地点(海側からSZ01-05)で採取し,軟X線画像およびCT画像で観察した結果,SZ01,03,04においては,津波堆積物が密度の異なる2層で構成されていることが明らかになった.最も海側の地点SZ01においては,引き波によって形成されたと考えられる堆積構造も観察された.粒度分析の結果,津波前の表層土壌の中央粒径が中粒砂を示すのに対し,津波堆積物の中央粒径は細粒砂を示した.津波堆積物の供給源の推定を行うため,津波堆積物中,津波前の土壌中,低地前面の海岸の砂の中に含まれる珪藻とその化石の観察を行った.津波堆積物中には,海岸の砂に含まれるDelphineis surirellaなどの海生種,Catenula adhaerensなどの汽水生種に加えて,低地の土壌中に頻出するHantzschia amphioxys やLuticola属といった淡水生種も確認された.速報的な内容ではあるが,発表時には珪藻分析の結果と併せて,津波堆積物の形成の要因についても考察を行う.