17:15 〜 18:45
[U15-P74] 富山湾沿岸で測定した2024年能登半島地震による津波
キーワード:ライブカメラ、能登半島地震、富山湾沿岸、津波到達時刻、津波現地調査、津波波源域
1. はじめに
2024年1月1日に石川県能登地方で発生したマグニチュード7.6の地殻内地震(以下,能登半島地震)により,北海道から九州地方にかけての日本海側で津波が観測された(地震調査委員会,2024年1月2日の評価).「令和6年1月地震火山月報(防災編)」(気象庁,2024)で報告された津波観測値のうち最も早い到達は,富山検潮所への地震(震源時刻)後3分で始まる引き波である.対馬・他(2024,本大会HDS11-12)は,各潮位観測施設への津波到達時刻を用いて逆伝播で波源域を推定し,地震による地殻変動で生じる津波波源とは別に,富山検潮所近傍にも波源が存在した可能性を指摘した.気象研究所では富山湾沿岸に注目して津波現地調査を実施するとともに,富山湾内の波源から生じた可能性がある津波の最大波と到達時刻を抽出しうる他の観測データも収集した.
2. 現地調査で得た津波高
1月と3月に各一班で石川県七尾市から富山県黒部市の海岸を踏査し,津波の痕跡(a, c, d),住民と施設利用者からの聞き取り(a, c),ライブカメラ映像との照合(b, d)を基にして,次の4地点で津波高を得た.
a. 石川県七尾市下佐々波漁港 遡上高2.0mと2.4m
b. 富山県高岡市雨晴海岸 浸水高1.1m
c. 富山県射水市海竜新町 遡上高1.5m
d. 富山市岩瀬浜 遡上高2.2m
また,富山地方気象台は現地調査で,富山湾東部の富山県朝日町宮崎漁港で港内津波高1.3mの測定値を得た(気象庁, 2024).以上の結果と潮位観測施設における津波観測値をまとめると,富山県沿岸の最大波は概ね0.5~2m強だった.
3. ライブカメラの解析から得た津波到達時刻
現地調査での聞き取り対象者のほとんどは津波警報発表時に適切に避難しており,インタビューから正確な津波到達時刻につながる目撃情報を得ることはできなかった.富山湾沿岸の潮位観測施設での観測データから津波第一波の到達時刻と極性を読み取れた.黒部市の生地では地震発生から約4分後に引き,高岡市の伏木富山では同約3分後に押しだった.さらに,南・他(2024,本大会HDS11-11)は,テレビ局が固定視点で撮影しているライブカメラの映像を分析して津波時系列波形を再現しており,高岡市雨晴海岸では約7分後に押しで津波第一波の到達が読み取られている.以上のように,富山湾沿岸では,地震発生後3~7分という非常に早くに津波が到達したことを多くの場所で確認できた.
4. まとめ
早い津波到達が富山検潮所以外でも認められること,富山県沿岸では最大波が概ね0.5~2m強だったことなど,能登半島地震に伴う富山湾内の津波波源を詳細に推定するための拘束条件となる観測成果を得られた.
謝辞
高岡ケーブルネットワークから高岡市雨晴海岸の,ケーブルテレビ富山から富山市岩瀬浜のライブカメラ映像をそれぞれご提供いただきました.また,国土交通省港湾局ならびに水管理・国土保全局所管の潮位観測施設の観測成果を利用しました.本研究の一部は科研費23K17482の助成を受けました.
2024年1月1日に石川県能登地方で発生したマグニチュード7.6の地殻内地震(以下,能登半島地震)により,北海道から九州地方にかけての日本海側で津波が観測された(地震調査委員会,2024年1月2日の評価).「令和6年1月地震火山月報(防災編)」(気象庁,2024)で報告された津波観測値のうち最も早い到達は,富山検潮所への地震(震源時刻)後3分で始まる引き波である.対馬・他(2024,本大会HDS11-12)は,各潮位観測施設への津波到達時刻を用いて逆伝播で波源域を推定し,地震による地殻変動で生じる津波波源とは別に,富山検潮所近傍にも波源が存在した可能性を指摘した.気象研究所では富山湾沿岸に注目して津波現地調査を実施するとともに,富山湾内の波源から生じた可能性がある津波の最大波と到達時刻を抽出しうる他の観測データも収集した.
2. 現地調査で得た津波高
1月と3月に各一班で石川県七尾市から富山県黒部市の海岸を踏査し,津波の痕跡(a, c, d),住民と施設利用者からの聞き取り(a, c),ライブカメラ映像との照合(b, d)を基にして,次の4地点で津波高を得た.
a. 石川県七尾市下佐々波漁港 遡上高2.0mと2.4m
b. 富山県高岡市雨晴海岸 浸水高1.1m
c. 富山県射水市海竜新町 遡上高1.5m
d. 富山市岩瀬浜 遡上高2.2m
また,富山地方気象台は現地調査で,富山湾東部の富山県朝日町宮崎漁港で港内津波高1.3mの測定値を得た(気象庁, 2024).以上の結果と潮位観測施設における津波観測値をまとめると,富山県沿岸の最大波は概ね0.5~2m強だった.
3. ライブカメラの解析から得た津波到達時刻
現地調査での聞き取り対象者のほとんどは津波警報発表時に適切に避難しており,インタビューから正確な津波到達時刻につながる目撃情報を得ることはできなかった.富山湾沿岸の潮位観測施設での観測データから津波第一波の到達時刻と極性を読み取れた.黒部市の生地では地震発生から約4分後に引き,高岡市の伏木富山では同約3分後に押しだった.さらに,南・他(2024,本大会HDS11-11)は,テレビ局が固定視点で撮影しているライブカメラの映像を分析して津波時系列波形を再現しており,高岡市雨晴海岸では約7分後に押しで津波第一波の到達が読み取られている.以上のように,富山湾沿岸では,地震発生後3~7分という非常に早くに津波が到達したことを多くの場所で確認できた.
4. まとめ
早い津波到達が富山検潮所以外でも認められること,富山県沿岸では最大波が概ね0.5~2m強だったことなど,能登半島地震に伴う富山湾内の津波波源を詳細に推定するための拘束条件となる観測成果を得られた.
謝辞
高岡ケーブルネットワークから高岡市雨晴海岸の,ケーブルテレビ富山から富山市岩瀬浜のライブカメラ映像をそれぞれご提供いただきました.また,国土交通省港湾局ならびに水管理・国土保全局所管の潮位観測施設の観測成果を利用しました.本研究の一部は科研費23K17482の助成を受けました.