[U-15] 2024年能登半島地震(1:J)

[U15-P76] 2024年能登半島地震津波の山形県酒田市～島根県松江市における現地調査結果

*行谷 佑一¹、伊尾木 圭衣¹、今井 健太郎²、楠本 聡²、王 宇晨²、堀川 博紀²、村上 雅亮³ (1.国立研究開発法人　産業技術総合研究所、2.国立研究開発法人　海洋研究開発機構、3.和歌山県)

キーワード：2024年能登半島地震、津波、現地調査、遡上高、浸水高

2024年1月1日に発生した能登半島地震について、津波の現地調査を実施したので報告する。調査範囲は山形県酒田市～富山県氷見市（調査日は2024年1月30日～2月2日）、佐渡島（同2月19日～21日）、および石川県羽咋市～島根県松江市（同3月25日～27日）の沿岸である。ただし、能登半島北部沿岸（輪島市や珠洲市など）は対象外である。
現地調査では、おもに漁協関係者や漁港周辺の住民等から聞き取り調査を行うことを基本とした。おもには、津波浸水の目撃情報、浸水痕、および津波が到達した時刻といった点を中心に情報収集を行った。さらに、証言による遡上限界や浸水痕の情報等をもとにGNSS測量を実施し、津波の高さを推定した。
震源域の東側にあたる、山形県酒田市～富山県氷見市のおもな調査結果は次の通りである。最も津波が高かったのは、新潟県糸魚川市市振での2.7 m（T.P.、以下同）であった。これは漁協職員が撮影した、岸壁に残された津波の浸水痕をもとに測量した値である。ここよりも北側に行くに従い津波の高さはゆるやかに減少し、新潟県柏崎市で0.9-1.4 mの高さを記録した。さらに北側では、聞き取り調査の範囲では、陸上での浸水は確認できなかった。なお、山形県酒田市においては新井田川の中流で屋台船が一隻転覆した。また、糸魚川市市振よりも西側では、氷見市島尾で2.1 mの遡上高を記録した。ただし、この調査範囲では気象庁機動調査班が新潟県上越市船見公園において5.8 mの遡上高があったことを報告している（https://www.jma.go.jp/jma/press/2401/26a/20240126_tsunamichousakekka.pdf）。
同じく震源域の東側にあたる、佐渡島内でのおもな調査結果は次の通りである。佐渡島南部沿岸で比較的高く、例えば三瀬漁港で2.3 m、羽茂漁港で1.8 mの遡上高であった。しかし、三瀬漁港から東側の沿岸では島内北部の鷲崎に至るまで、津波が岸壁を超えなかったという証言を得ている。鷲崎では、津波は岸壁を乗り越えることはなかったが、当日の16時半ごろの暗くなる前に、「さーっと」津波が入ってきたとの証言を得た。鷲崎から南に向かう西海岸においては、同様に津波が岸壁を越していない地点が多かったが、高瀬（たこせ）漁港では目撃証言から津波が岸壁を越えたことがわかり、第1波で1.3 m、第２波で1.6 mの遡上高と推定された。第1波については、津波警報が鳴ってから5分くらいで到達した、とのことである。また、さらに南の江積漁港では漂着物の散乱や目撃証言から1.4 mの遡上高であった。
震源域の西側にあたる、石川県羽咋市～島根県松江市でのおもな調査結果は次の通りである。震源域に近い羽咋市柴垣では、海岸沿いの家の近くまで浸水したという住民からのヒアリングにより、3.2 mの遡上高であったと推定された。それよりも西側については、金沢市、小松市、加賀市、京都府舞鶴市、伊根町、および京丹後市に至るまで、津波は岸壁を越えていない、という証言を得た。その西の兵庫県香美町では、漁協職員から港の橋の岸壁で津波がほんの少しあふれたくらい、との証言を得て、1.4 mの遡上高を得た。証言によればこの浸水は1日20時～20時半のことだという。さらに西側では、津波が岸壁を超えたという証言は得られなかった。松江市美保関町の諸喰漁港では、目撃証言として津波が30 cm程度上がったとのことである。
以上の情報を整理すると、震源域の東側の富山県氷見市や糸魚川市、柏崎市、佐渡島南岸や、震源域の西側の羽咋市で比較的高い津波の高さであったことがわかったが、それ以外の多くの地域ではそもそも津波が岸壁を越さない、比較的小さな津波の高さであったことが確認された。