17:15 〜 18:45
[U15-P82] 岩礁付着生物遺骸に基づく2024年能登半島地震（Mw 7.5）の最大海岸隆起量
2024年1 月1 日に発生した能登半島地震（Mw 7.5, Mj 7.6）は能登半島北岸に沿って分布する複数の海底活断層（逆断層）の連動によるものと考えられ，この地震により能登半島北部沿岸で顕著な海岸隆起が生じた．だいち2号による合成開口レーダー画像のピクセルオフセット解析結果（速報）によると，輪島市西部の猿山岬付近で最大約4 m（国土地理院，2024a）ないし約4.9 m（福島ほか，2024）に達する隆起が推定され，実際，猿山岬の3 kmあまり南方に位置する輪島市門前町鹿磯漁港では，現地で約3.6 m（石山ほか，2024），3.8〜3.9 m（宍倉ほか，2024）ないし約4 m（国土地理院，2024b）の海岸隆起が確認されている．しかし，猿山岬〜大長崎を中心とする能登半島北西部沿岸一帯は地形的に険しい岩石海岸で，地震に伴う斜面崩壊も多発したことから，この最大隆起量推定区間の詳細な現地調査は実施されていなかった．そこで，余震活動および海況の落ち着いた3月下旬〜4月上旬の天候の良い日を活用し，この区間の海岸隆起量調査を実施した．
隆起の指標としては，岩礁に付着する石灰藻であるピリヒバCorallina piluliferaを用い，地震隆起によって死滅・白色化したピリヒバ群集の上限と，その極近傍で地震後3ヶ月を経ても生存しピンク色を呈するピリヒバの上限（＝死滅・白色化したピリヒバ群集の下限）の比高を地震時隆起量と見なした．比高測量には，カメラ用三脚上に設置した高精度レーザー距離計（Laser Technology TruPulse 200X）およびレーザースキャナターゲットを用いた．TruPulse 200Xの測距精度は4 cm，測角精度は0.10°，水平距離10 mの場合の高度測定精度は1.7〜4.3 cm（仰角による）である．死滅／生存ピリヒバ上限の位置決定の不確定性（それぞれ±5 cm程度）も考慮すると，今回測定した隆起量は±15〜20 cm程度の誤差を伴うと考えられる．
輪島市門前町深見から猿山岬，門前町吉浦，門前町皆月，大長崎を経て上大沢町に至る距離約10 kmにわたる岩石海岸沿いの24地点で測量を実施した結果，猿山岬を中心とする沿岸約2.5 kmの区間の隆起量は概ね5 mを越え，とくに門前町吉浦西方約0.6 kmの地点では最大隆起量5.46 mが計測された．一方，その北東方の大長崎周辺では隆起量は有意に小さく，門前町皆月北方の3.90 mから大長崎の3.46 mを経て上大沢町の2.65 mへと東方に向かって全体として隆起量が減少する傾向が認められた．今回得られた2024年地震時の海岸隆起量分布は，合成開口レーダー画像のピクセルオフセット解析結果と概ね整合するとともに，今回の地震で活動したとみられる猿山岬〜大長崎のすぐ沖合の海底活断層の位置・すべり量分布や，完新世／更新世海成段丘の高度・年代に基づく海岸隆起履歴を今後検討するうえでの重要な基礎情報となると考えられる．
＜引用文献＞
福島 洋・石村大輔・髙橋直也（2024），令和６年能登半島地震（M7.6）のSAR画像解析による地盤変動の特徴，https://yofuku.github.io/files/column_20240109_2024Noto.html．
石山達也・廣内大助・松多信尚・立石 良・安江健一（2024），令和６年能登半島地震（M7.6）で生じた海岸隆起【速報その3】，https://www.eri.u-tokyohttps://www.eri.u-tokyo.ac.jp/news/20465/.ac.jp/news/20465/．
国土地理院（2024a），だいち２号観測データの解析による令和６年能登半島地震に伴う地殻変動（2024年1月19日更新），https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/20240101noto_insar.html.
国土地理院（2024b），【現地調査報告】鹿磯漁港の隆起量，https://www.gsi.go.jp/BOUSAI/20240101_noto_earthquake.html#8-2．
宍倉正展・行谷佑一・越後智雄（2024），2024年能登半島地震の緊急調査報告（海岸の隆起調査），https://www.gsj.jp/hazards/earthquake/noto2024/noto2024-04.html．
隆起の指標としては，岩礁に付着する石灰藻であるピリヒバCorallina piluliferaを用い，地震隆起によって死滅・白色化したピリヒバ群集の上限と，その極近傍で地震後3ヶ月を経ても生存しピンク色を呈するピリヒバの上限（＝死滅・白色化したピリヒバ群集の下限）の比高を地震時隆起量と見なした．比高測量には，カメラ用三脚上に設置した高精度レーザー距離計（Laser Technology TruPulse 200X）およびレーザースキャナターゲットを用いた．TruPulse 200Xの測距精度は4 cm，測角精度は0.10°，水平距離10 mの場合の高度測定精度は1.7〜4.3 cm（仰角による）である．死滅／生存ピリヒバ上限の位置決定の不確定性（それぞれ±5 cm程度）も考慮すると，今回測定した隆起量は±15〜20 cm程度の誤差を伴うと考えられる．
輪島市門前町深見から猿山岬，門前町吉浦，門前町皆月，大長崎を経て上大沢町に至る距離約10 kmにわたる岩石海岸沿いの24地点で測量を実施した結果，猿山岬を中心とする沿岸約2.5 kmの区間の隆起量は概ね5 mを越え，とくに門前町吉浦西方約0.6 kmの地点では最大隆起量5.46 mが計測された．一方，その北東方の大長崎周辺では隆起量は有意に小さく，門前町皆月北方の3.90 mから大長崎の3.46 mを経て上大沢町の2.65 mへと東方に向かって全体として隆起量が減少する傾向が認められた．今回得られた2024年地震時の海岸隆起量分布は，合成開口レーダー画像のピクセルオフセット解析結果と概ね整合するとともに，今回の地震で活動したとみられる猿山岬〜大長崎のすぐ沖合の海底活断層の位置・すべり量分布や，完新世／更新世海成段丘の高度・年代に基づく海岸隆起履歴を今後検討するうえでの重要な基礎情報となると考えられる．
＜引用文献＞
福島 洋・石村大輔・髙橋直也（2024），令和６年能登半島地震（M7.6）のSAR画像解析による地盤変動の特徴，https://yofuku.github.io/files/column_20240109_2024Noto.html．
石山達也・廣内大助・松多信尚・立石 良・安江健一（2024），令和６年能登半島地震（M7.6）で生じた海岸隆起【速報その3】，https://www.eri.u-tokyohttps://www.eri.u-tokyo.ac.jp/news/20465/.ac.jp/news/20465/．
国土地理院（2024a），だいち２号観測データの解析による令和６年能登半島地震に伴う地殻変動（2024年1月19日更新），https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/20240101noto_insar.html.
国土地理院（2024b），【現地調査報告】鹿磯漁港の隆起量，https://www.gsi.go.jp/BOUSAI/20240101_noto_earthquake.html#8-2．
宍倉正展・行谷佑一・越後智雄（2024），2024年能登半島地震の緊急調査報告（海岸の隆起調査），https://www.gsj.jp/hazards/earthquake/noto2024/noto2024-04.html．