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[U15-P98] 地質区分と斜面傾斜方向に基づく2024年能登半島地震で発生した斜面崩壊の解析
キーワード:2024年能登半島地震、能登半島、斜面崩壊、地質区分、斜面傾斜方向
能登半島には漸新世~中新世の堆積岩類や火山岩類が主に分布する.2024年能登半島地震に伴う斜面崩壊が集中した能登半島北東部ではNE–SW走向の褶曲軸や断層が発達する.本地震は,全体的としてはNE–SW走向のSE傾斜の逆断層の活動によって発生したと考えられている.これまで,能登半島全域では20万分の1日本シームレス地質図V2(以下,シームレス地質図),半島北東部では5万分の1地質図幅「珠洲岬,能登飯田及び宝立山」(以下,珠洲岬図幅)のベクトルデータが産総研地質調査総合センターによって公開されている.珠洲岬図幅では,シームレス地質図よりも詳細な地質区分・分布が示されているため,それぞれで解析を行った.本地震に伴う斜面崩壊については,国土地理院が斜面崩壊・堆積分布図を公開している.しかし,この分布図は崩壊域と堆積域が一括されているため,地形情報に基づき崩壊源頭部を判読・抽出し,これを崩壊地として解析に用いた.崩壊地の斜面傾斜方向については国土地理院の10 mDEMを用いて解析した.
シームレス地質図を用いた能登半島全体の解析から以下の結果が得られた.1 km2あたりの崩壊数は,中新世の溶岩・火砕岩や中新世の礫岩,中新世の珪質泥岩などで多かった.このように,地質区分毎に崩壊の多寡があることが認められた.また,崩壊地の斜面傾斜方向は,地質区分に関係なく,S–SE方向が多い.
珠洲岬図幅を用いた能登半島北東部の解析から以下の結果が得られた.1 km2あたりの崩壊数は中新世の火砕岩や中新世の溶岩,中新世の泥岩などで多い.このように,半島北東部でも地質区分毎に崩壊の多寡があることが認められた.崩壊数が多く,シームレス地質図ではデイサイト・流紋岩の溶岩・火砕岩と一括されている地層で,本図幅地域内に広く分布するのは,前期中新世の宝立山層と中期中新世の粟蔵層である.宝立山層は,デイサイト火砕岩(陸上の火砕流堆積物を主体とし,シルト岩・砂岩・礫岩を伴う),及びデイサイト~流紋岩溶岩から成る.粟蔵層は,流紋岩火砕岩(水底火砕流堆積物を主体とし,ときにシルト岩と互層する),流紋岩溶岩,凝灰質砂岩及び凝灰岩から成る.宝立山層と粟蔵層はともに溶岩分布域より火砕流堆積物を主体とする火砕岩分布域において,1 km2あたりの崩壊数が多いことが認められた.崩壊地の斜面傾斜方向は,粟蔵層を除いて,S–SE方向が多い.本図幅内の地層の傾斜はSSE傾斜もしくはNNW傾斜が優勢である.このように,大局的には,崩壊地の斜面傾斜方向は,地層の傾斜方向と同じ向きもしくは反対向きが優勢である.
以上のように,本地震によって能登半島で発生した斜面崩壊は,地質区分毎に崩壊の多寡があり,火砕流堆積物を主体とする中新世の火砕岩分布域で特に集中している傾向が見られた.また,崩壊地の傾斜方向は,大局的には,本地震で活動した逆断層の傾斜方向と同じ方向が優勢であった.
シームレス地質図を用いた能登半島全体の解析から以下の結果が得られた.1 km2あたりの崩壊数は,中新世の溶岩・火砕岩や中新世の礫岩,中新世の珪質泥岩などで多かった.このように,地質区分毎に崩壊の多寡があることが認められた.また,崩壊地の斜面傾斜方向は,地質区分に関係なく,S–SE方向が多い.
珠洲岬図幅を用いた能登半島北東部の解析から以下の結果が得られた.1 km2あたりの崩壊数は中新世の火砕岩や中新世の溶岩,中新世の泥岩などで多い.このように,半島北東部でも地質区分毎に崩壊の多寡があることが認められた.崩壊数が多く,シームレス地質図ではデイサイト・流紋岩の溶岩・火砕岩と一括されている地層で,本図幅地域内に広く分布するのは,前期中新世の宝立山層と中期中新世の粟蔵層である.宝立山層は,デイサイト火砕岩(陸上の火砕流堆積物を主体とし,シルト岩・砂岩・礫岩を伴う),及びデイサイト~流紋岩溶岩から成る.粟蔵層は,流紋岩火砕岩(水底火砕流堆積物を主体とし,ときにシルト岩と互層する),流紋岩溶岩,凝灰質砂岩及び凝灰岩から成る.宝立山層と粟蔵層はともに溶岩分布域より火砕流堆積物を主体とする火砕岩分布域において,1 km2あたりの崩壊数が多いことが認められた.崩壊地の斜面傾斜方向は,粟蔵層を除いて,S–SE方向が多い.本図幅内の地層の傾斜はSSE傾斜もしくはNNW傾斜が優勢である.このように,大局的には,崩壊地の斜面傾斜方向は,地層の傾斜方向と同じ向きもしくは反対向きが優勢である.
以上のように,本地震によって能登半島で発生した斜面崩壊は,地質区分毎に崩壊の多寡があり,火砕流堆積物を主体とする中新世の火砕岩分布域で特に集中している傾向が見られた.また,崩壊地の傾斜方向は,大局的には,本地震で活動した逆断層の傾斜方向と同じ方向が優勢であった.