日本地球惑星科学連合2025年大会

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[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS01] 気象の予測可能性から制御可能性へ

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:三好 建正(理化学研究所)、Nakazawa Tetsuo(AORI, The University of Tokyo)、高玉 孝平(科学技術振興機構)

17:15 〜 19:15

[AAS01-P08] 気象への介入設計におけるブラックボックス最適化手法の有用性評価

*樋口 裕太1、永井 陸斗3岡崎 淳史2、小蔵 正輝1、若宮 直紀3 (1.広島大学 大学院先進理工系科学研究科、2.千葉大学 国際高等研究基幹、3.大阪大学 大学院情報科学研究科)


キーワード:気象制御、ブラックボックス最適化手法、暖気塊実験、現実大気実験

気象制御は,複雑かつ大規模な気象現象を対象とするため,以下の三つの主要な課題を伴う.(1) 効果的な介入の特定,(2) 実施可能な介入の選択,(3) 介入計算に要する計算時間の削減である.これらの課題を克服するためには制御理論の適用が求められるが,従来の制御理論では気象のような大規模現象を直接扱うことが困難である.
本研究では,これらの課題を踏まえ,介入位置や介入強度といったパラメータの最適化によって効果的な介入を特定することに焦点を当てる.気象介入においては,気象現象の大規模性および複雑性により,目的関数の正確な勾配情報を取得することが困難である.さらに,数値気象予測モデルを用いたシミュレーションには膨大な計算資源を要するため,最小限の関数評価回数によって適切なパラメータを特定する必要がある.
このような制約のもと,ブラックボックス最適化手法は有望なアプローチとなる.ブラックボックス最適化手法とは,関数や制約条件の明示的な定義がなく,入力と出力の関係のみが観測可能な場合に,目的関数の最大化または最小化を達成する最適な入力値を探索する手法である.本手法は勾配情報を必要とせず,評価結果を活用することで効率的な探索を可能とするため,気象介入最適化において適している.しかし,筆者の知る限り,ブラックボックス最適化手法を気象介入最適化に適用した先行研究はなく,どのアルゴリズムが有用であるかは明らかになっていない.
本研究では,ブラックボックス最適化手法を気象介入最適化に適用し,その有用性を数値気象予測モデルSCALE-RMを用いた二つの実験設定で評価する.使用した実験設定は,(1) 人工的な初期条件を用いた2次元モデルによる理想実験である暖気塊実験および (2) 観測データを利用し現実的な大気挙動を3次元モデルを用いて再現した現実大気実験である.評価指標として,介入による累積降水量の削減率を採用し,複数の関数評価回数にわたる変化を検証する.本研究では,代表的なブラックボックス最適化手法であるベイズ最適化,ランダムサーチ,粒子群最適化,遺伝的アルゴリズムの気象介入最適化における有用性を評価・比較する.その結果,ブラックボックス最適化手法の中でも,ベイズ最適化と粒子群最適化が他のアルゴリズムを上回る制御性能を示し,介入位置および介入強度の最適化において有用であることが明らかになった.
本研究の成果は,限られた計算資源のもとでも効率的に気象介入を最適化する手法の設計に寄与するとともに,ブラックボックス最適化手法の気象制御への応用可能性を広げるものである.