日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS02] 台風研究の新展開~過去・現在・未来

2025年5月25日(日) 10:45 〜 12:15 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:辻野 智紀(気象研究所)、金田 幸恵(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、伊藤 耕介(京都大学防災研究所)、宮本 佳明(慶應義塾大学 環境情報学部)、座長:辻野 智紀(気象研究所)

11:30 〜 11:45

[AAS02-04] 鉛直シアが熱帯低気圧発達期の内部構造に与える影響

*村田 博1佐藤 正樹1 (1.東京大学大気海洋研究所)


キーワード:台風、熱帯低気圧、鉛直シア、理想化実験

鉛直シアは、熱帯低気圧の発達に大きな影響を及ぼす。一般に、鉛直シアは熱帯低気圧の発達を抑制することが知られているが、中程度の鉛直シア下では発達する場合がある。先行研究において、鉛直シア下における熱帯低気圧の発達のメカニズムについて様々な仮説が提唱されているが、観測と理想化実験の間で乖離が見られるなど、理解は不十分である。特に、台風として判定される基準値(17m/s)以下や基準値前後の強さの熱帯低気圧(以後、弱い熱帯低気圧と表記)の鉛直シアに対する応答は湿潤過程が支配的になるなどの要因によって複雑であるため、さらなる研究が望まれている。
本研究では理想化実験によって、鉛直シア下における弱い熱帯低気圧の発達や構造の変化を調べた。また、強度、最大風速半径、高さを変えた実験を行い、鉛直シアに対する応答性の違いを調べた。
数値モデルとしては、f 面の非静力学モデルである Plane-NICAM を用いる。領域は菱形であり、一辺 の長さを 4096km に設定した。格子間隔は 8km とした。また、コリオリパラメータは北緯 15 度に対応する値とし、SST は 28 度とした。温度と湿度の基本場の鉛直分布は放射対流平衡実験によって求めた。Plane-NICAMは、南北境界において周期境界条件であるため、熱力学場を周期的に接続しつつ地衡風平衡を保つように鉛直シアを与えるためには工夫が必要であった。弱い熱帯低気圧を模した初期状態の渦として、5つの軸対称な渦を用いた。まず基準となる渦を最大風速15m/sとした。さらに基準となる渦に対し、強い渦、弱い渦、最大風速半径が大きい渦、高さが低い渦の4つを設定した。これらの渦に対し、鉛直シアの大きさを0m/sから20m/sの範囲で変化させて実験を行なった。
まず、基準渦について、鉛直シアの大きさが11m/s以下の実験では渦が発達したが12m/s以上の実験では発達しなかった。なお、鉛直シアの大きさが10m/s, 11m/sの実験では大きな発達の遅れが見られた。このことから、発達についての鉛直シアの大きさの閾値には幅があるということが示唆される。また、渦の傾きに注目すると、発達開始前に反時計回りの歳差運動や直立化が見られた。これらは、先行研究と整合する結果である。
さらに、他の渦の実験によって、渦の強さや最大風速半径、渦の高さといった渦の内部構造によって鉛直シアに対する応答性が異なることが示された。
今後の課題は、より体系的に高解像度な設定で実験を行うことによってより精度の高い結果を得ることである。また、メカニズムの理解を深めることも望まれる。