日本地球惑星科学連合2025年大会

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[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS02] 台風研究の新展開~過去・現在・未来

2025年5月25日(日) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:辻野 智紀(気象研究所)、金田 幸恵(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、伊藤 耕介(京都大学防災研究所)、宮本 佳明(慶應義塾大学 環境情報学部)

17:15 〜 19:15

[AAS02-P05] 航空機観測フライトデータを用いた台風上層の解析

*松井 龍1坪木 和久1 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所)


キーワード:台風、航空機観測

航空機を用いた台風の直接観測では、ドロップゾンデやレーダーを用いて台風の構造や環境場が観測されている。それらのデータは構造解明やデータ同化に使われるなど重要な役割を果たしている。航空機には安全航行のため気温や風速をはじめとしたデータが記録されているが航空機は観測を行うための道具の一つとされ、機体に搭載された計器から取得されるフライトデータを使用した研究はあまりない。使用されても限定的であり、ドロップゾンデの補正に使われるのみに留まっている。そこで本研究では台風直接観測時に取得されたフライトデータを用いて、巡航高度の高度約13000m付近の水平構造を明らかにすることを目的とした。

本研究では、T-PARCII によって直接観測が行われた台風 Nanmadol(2022)を対象とし、台風の目への貫通飛行を行った9 月 16 日(発達期)および 17 日(最盛期)の観測を解析した。コックピットで撮影されたレーダーの映像から、台風の目の半径 は16日がおよそ20 km、17日がおよそ15 kmであったと考えられる。使用したフライトデータには気温、風向・風速、気圧をはじめとした機体の位置情報や加速度情報が約5~100Hzで記録されている。本研究では各データに対して1秒ごとに平均化し1Hzのログデータに直し使用した。巡航高度において飛行速度は約405 Knotでありデータはおおよそ200m間隔となる。フライトデータを台風中心の極座標系で表すため、対象の台風についてHimawari-8が行った30秒ごとの軌道観測データからバンド13(赤外)を使用して中心を推定し、1秒ごとの線形内挿を行って台風の中心座標とした。解析の結果水平方向における構造の変動を見ることができた。気温では両日とも壁雲領域から目の領域にかけて正の温度偏差が確認された。発達期である16日には約6度の偏差であったが最盛期になった17日は約10度まで大きくなり、台風中心にみられる暖気核構造及びその発達も確認できた。接線風では17日の観測において台風中心から約40kmの位置に風速最大のピークが現れた。16日の観測ではこのピークは確認できず10m/s程度と風速は弱かった。

フライトデータには気温、風場、圧力をはじめとしたデータが高頻度で記録されており、これらのデータが台風構造の解明に活用できることがわかった。一方で、各データセットにはノイズが含まれており、例えば温度ではセンサーの凍結、風速場では航空機の進路変更に影響を受けている可能性が高い。これらの発生傾向を掴むことも今後の研究で重要だと考える。