日本地球惑星科学連合2025年大会

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[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS06] 大気圏(成層圏・対流圏)過程とその気候への影響

2025年5月27日(火) 10:45 〜 12:15 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:野口 峻佑(九州大学 理学研究院 地球惑星科学部門)、原田 やよい(気象研究所)、西井 和晃(三重大学大学院生物資源学研究科)、江口 菜穂(九州大学 応用力学研究所)、座長:西井 和晃(三重大学大学院生物資源学研究科)、江口 菜穂(九州大学 応用力学研究所)



11:00 〜 11:15

[AAS06-07] 高解像度ハイトップGCMを用いた全中層大気における重力波の力学特性の研究

*山本 蒼一郎1佐藤 薫1渡辺 真吾2 (1.東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻、2.海洋研究開発機構)


キーワード:重力波、中層大気

中間圏・下部熱圏(MLT)の力学において,重力波は重要な役割を担う.砕波やクリティカルレベルにおける吸収に伴う重力波の東西運動量の鉛直フラックスの収束・発散は,中間圏における夏極から冬極向きの子午面循環の主要な駆動力である.中層大気でみられる重力波は主に対流圏で生成され,鉛直伝播してくる.中層大気重力波の波源は,夏半球においてはモンスーン域における強い対流,冬半球においては地形とジェットフロントシステムであることが理論・観測・モデル研究から示唆されている.成層圏の重力波については観測や気候モデルを用いた定量的な研究が多く行われている(e.g. Geller et al., 2013).一方で,MLT領域は観測手段が限られ,ほとんどの気候モデルでも扱うことのできない高度領域である.したがって, MLTを含む全中層大気における重力波の全球的な力学特性は十分に解明されていない.
この問題に取り組むため,地表から下部熱圏までを含み重力波を陽に表現可能な高解像度GCMであるJAGUARが最近開発された(e.g. Watanabe et al., 2022).本研究ではこの高解像度JAGUARによる2022年1年間の全球再現実験を実施し,その出力データを解析した.再現実験の初期値として,地表から下部熱圏までをカバーする長期再解析データJAWARA(Koshin et al., 2025)を用いた.重力波は水平全波数21-639(水平波長λh<2,000km)の擾乱として取り出した.高解像度JAGUARによって再現される重力波の変動は,大気レーダーによる対流圏・成層圏・中間圏各領域における観測と整合的であることが確認されている(Sato et al., 2023).
まず,重力波の全球平均運動エネルギー(GM-GWKE)を時間及び高度の関数として求めた.GM-GWKEは成層圏・中間圏において夏と冬に極大を持ち,春と秋に極小となることがわかった.さらに,DJFよりもJJAが,MAMよりもSONが,より強いことも示された.この結果は,Sato and Hirano (2019)において再解析データを用いて診断的手法により見いだされた,重力波活動は全球的にMAMよりもSONの方が強いという特徴と整合する.一方,下部熱圏については成層圏・中間圏と比べて顕著な季節変化は見られなかった.次に各半球ごとに平均した重力波の運動エネルギーを調べた.いずれの半球も,夏よりも冬に強くなり,冬に限ると北半球よりも南半球の方が強い.このためにGM-GWKEはJJAにおいて1年で最も強くなることがわかった.また,運動エネルギーの極大高度域は,南北半球のいずれも冬と比べて夏の方がより高いこともわかった.さらに,JJA及びDJFにおける重力波の東西運動量の鉛直フラックスの南北・鉛直分布についても調べた.Sato et al.(2009)が示した高度72km以下において下層大気から伝播する重力波が冬(夏)半球で高度と共に西風(東風)ジェットの中心緯度方向に向かう様子は,約90kmに位置する弱風層までであった.また,下部熱圏赤道域においては一年を通して東風が存在し,その東風に向かうように正の運動量フラックスを伴う重力波が伝播している様子が見られた.