15:30 〜 15:45
[AAS09-06] 再解析等の過去データと社会応用とのインターフェースについて
キーワード:再解析、社会応用、機械学習、地球デジタルツイン
再解析データには高い情報価値があるのにも関わらず、産業界等社会での利活用は限定的である。しかし、近年、機械学習・人工知能の急速な発展という背景のもと、領域再解析という形で利用者ニーズに近い高解像化されたプロダクトが提供されつつあることで新たな展開に踏み出す段階になっている。
JSTの共創の場形成支援プログラム(COI―NEXT)により東京大学先端研を拠点として推進しているClimCOREプロジェクトでは、気象庁との共同研究によりメソモデルMSMのデータ同化システムを基本とする5kmメッシュの領域再解析を作成中である。また、MSMでは降水予測精度を高めるために解析雨量をデータ同化に用いていることから、解析雨量についても過去に遡って再処理を実施中である。これらプロダクトは一部作成されており、利活用研究をプロジェクト内で展開しているところである。ここでは、プロジェクト内での利活用研究等の経験を踏まえつつ、再解析データ等について作成側と利用側の接点からの整理を試みる。
まず、過去データ自体が社会応用における利用価値を持つ分野がある。再生可能エネルギーのポテンシャル、各種農業生産ポテンシャル、災害を引き起こす顕著現象の頻度など、過去データに基づく統計自体が大きな意味を持つ利用である。たとえば農研機構のメッシュ農業気象データといった形ですでに過去データが整備されている。ClimCOREプロジェクトでは、このメッシュ農業気象データについて、領域再解析データを取り込むことによる精度改善研究も進められている。再生可能エネルギー業界や保険業界では再解析データの利用が早くから進められている。これらの社会応用における一つの課題は情報のきめ細かさである。たとえば、アメダスは観測開始から50年程度が経過して統計的にかなり長期間のデータとして蓄積されている一方、水平分解能としては20km程度のオーダーであり、洋上には島嶼部を除き観測データはない。ここは、領域再解析データに期待される部分である。
日射量については、近年ひまわりベースのデータの精度が向上していて、雲の表現等に難がある再解析データよりも信頼度が高い一方、衛星の切り替え等に起因して過去の長期間均質なデータとしての課題はある。風力発電のポテンシャルとなる風については、再解析データの優位性が高いと考えられるが、風は地形に強く影響されるため、数値モデルの分解能が重要となる。過去の災害をもたらすような顕著現象については、再解析データは研究の基盤データでありメソスケール現象については領域再解析データが期待されている。
一方、多くの分野では、明日の予報や数十年後の気候変化といった将来予測へのニーズが高い。こうしたニーズへの対応においては、数値天気予報や気候予測といった予測データと再解析データとの組み合わせが必要となろう。数値天気予報においては、従来から用いられているガイダンス手法の発展形として、過去の均質な再解析データで学習させ、それを日々の予測データに適用して精度向上を図ることができよう。従来のガイダンスでは、観測点で学習させてその観測点での精度を向上させる、予測要素の翻訳プロダクトを作成する、といった形であったのを、深層学習に基づく超解像等の技術を用いて、メッシュデータのダウンスケールも良質な教師データさえあれば可能となってくる。
AI気象予測は、過去データである再解析データを予測に活用する技術として近年急速に進展している。こちらは上記のガイダンス的な利用とは異なり、再解析データを機械学習してAIで気象予測自体を実施するというものである。物理法則に基づく伝統的な数値天気予報を一部凌駕するような結果も報告されている。しかし、このAI気象予測でも、この伝統的な数値予報システムに基づく再解析データが使われていることは忘れてはならない。
気候予測においても、超解像技術によるダウンスケールは可能であり、その教師データとしての領域再解析データは重要である。また、地域気候モデルのバイアス等は適応策を具体化する上でなるべく軽減しておきたい。領域再解析データを利用した地域気候シナリオ予測のバイアス軽減については、国立環境研究所で研究が進められている。
最後に、衛星観測から求めた日射量データ等の観測ベースの解析データに対する再解析データの優位性として、4次元空間上の拡張性という観点を述べておく。再解析データは4次元多要素からなるデータであり、空間方向にはダウンスケール、時間方向には予測、という形で拡張できるデータである。いわゆる地球デジタルツインとしてこの特性は重要であり、社会応用のための基盤データとして位置付けられると考えている。
本研究は、JST 共創の場形成支援プログラムJPMJPF2013の支援を受けたものである。
JSTの共創の場形成支援プログラム(COI―NEXT)により東京大学先端研を拠点として推進しているClimCOREプロジェクトでは、気象庁との共同研究によりメソモデルMSMのデータ同化システムを基本とする5kmメッシュの領域再解析を作成中である。また、MSMでは降水予測精度を高めるために解析雨量をデータ同化に用いていることから、解析雨量についても過去に遡って再処理を実施中である。これらプロダクトは一部作成されており、利活用研究をプロジェクト内で展開しているところである。ここでは、プロジェクト内での利活用研究等の経験を踏まえつつ、再解析データ等について作成側と利用側の接点からの整理を試みる。
まず、過去データ自体が社会応用における利用価値を持つ分野がある。再生可能エネルギーのポテンシャル、各種農業生産ポテンシャル、災害を引き起こす顕著現象の頻度など、過去データに基づく統計自体が大きな意味を持つ利用である。たとえば農研機構のメッシュ農業気象データといった形ですでに過去データが整備されている。ClimCOREプロジェクトでは、このメッシュ農業気象データについて、領域再解析データを取り込むことによる精度改善研究も進められている。再生可能エネルギー業界や保険業界では再解析データの利用が早くから進められている。これらの社会応用における一つの課題は情報のきめ細かさである。たとえば、アメダスは観測開始から50年程度が経過して統計的にかなり長期間のデータとして蓄積されている一方、水平分解能としては20km程度のオーダーであり、洋上には島嶼部を除き観測データはない。ここは、領域再解析データに期待される部分である。
日射量については、近年ひまわりベースのデータの精度が向上していて、雲の表現等に難がある再解析データよりも信頼度が高い一方、衛星の切り替え等に起因して過去の長期間均質なデータとしての課題はある。風力発電のポテンシャルとなる風については、再解析データの優位性が高いと考えられるが、風は地形に強く影響されるため、数値モデルの分解能が重要となる。過去の災害をもたらすような顕著現象については、再解析データは研究の基盤データでありメソスケール現象については領域再解析データが期待されている。
一方、多くの分野では、明日の予報や数十年後の気候変化といった将来予測へのニーズが高い。こうしたニーズへの対応においては、数値天気予報や気候予測といった予測データと再解析データとの組み合わせが必要となろう。数値天気予報においては、従来から用いられているガイダンス手法の発展形として、過去の均質な再解析データで学習させ、それを日々の予測データに適用して精度向上を図ることができよう。従来のガイダンスでは、観測点で学習させてその観測点での精度を向上させる、予測要素の翻訳プロダクトを作成する、といった形であったのを、深層学習に基づく超解像等の技術を用いて、メッシュデータのダウンスケールも良質な教師データさえあれば可能となってくる。
AI気象予測は、過去データである再解析データを予測に活用する技術として近年急速に進展している。こちらは上記のガイダンス的な利用とは異なり、再解析データを機械学習してAIで気象予測自体を実施するというものである。物理法則に基づく伝統的な数値天気予報を一部凌駕するような結果も報告されている。しかし、このAI気象予測でも、この伝統的な数値予報システムに基づく再解析データが使われていることは忘れてはならない。
気候予測においても、超解像技術によるダウンスケールは可能であり、その教師データとしての領域再解析データは重要である。また、地域気候モデルのバイアス等は適応策を具体化する上でなるべく軽減しておきたい。領域再解析データを利用した地域気候シナリオ予測のバイアス軽減については、国立環境研究所で研究が進められている。
最後に、衛星観測から求めた日射量データ等の観測ベースの解析データに対する再解析データの優位性として、4次元空間上の拡張性という観点を述べておく。再解析データは4次元多要素からなるデータであり、空間方向にはダウンスケール、時間方向には予測、という形で拡張できるデータである。いわゆる地球デジタルツインとしてこの特性は重要であり、社会応用のための基盤データとして位置付けられると考えている。
本研究は、JST 共創の場形成支援プログラムJPMJPF2013の支援を受けたものである。