日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS09] 応用気象学

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:稲津 將(北海道大学大学院理学研究院)、竹見 哲也(京都大学防災研究所)、日下 博幸(筑波大学)

17:15 〜 19:15

[AAS09-P01] 深層ニューラルネットワークを用いた山形県園地の最低気温予測

*児島 功洋1梶野 瑞王2、奥野 貴士3 (1.筑波大学、2.気象研究所、3.山形大学)


キーワード:深層学習、ディープニューラルネットワーク、気温予測、凍霜害

山形県は全国有数の果樹産地として知られ、さくらんぼをはじめ、りんご、ぶどう、西洋なし、もも、かきなど多くの果樹が栽培されている。しかし、これらの果樹は春先の低温により凍結や降霜の被害(凍霜害)を受けることがある。特に2021年4月には、寒気の流入や放射冷却による低温の影響で、県内4,181haの農作物が被害を受け、被害額は約129億円に達した¹。
凍霜害対策として、燃焼法、散水氷結法、防霜ファン法などがあるが、これらのコストは高いため、効果的な運用には正確な気温予測が不可欠である。気象庁はメソ気象モデル(MSM)を用いて39時間先までの気温予報を提供しており、これにより2日後の夜間気温まで予測可能である。しかし、MSMの時空間解像度は比較的粗く、果樹園の地形や土壌環境などの局所的な気温変動を正確に捉えることは難しい。さらに、聞き取り調査に基づく降霜リスクマップ¹は、凍霜害予測の更なる精度向上を目指すために、気候学的な説明付けが期待される。
そこで本研究では、山形県上山市の果樹園地における最低気温を対象に、深層学習を用いた予測を行い、その精度を評価するとともに、果樹園における低温の要因を気候学的に明らかにすることを目的とする。
本研究では、深層学習モデルとしてディープニューラルネットワーク(DNN)を採用した。DNNは、機械学習と比較してより高精度な学習能力と特徴量抽出能力を備えており、画像認識、音声認識、自然言語処理などの分野で広く活用されている。予測の検証および深層学習の教師データには、山形大学の「かるほく未来創造Lab」²の一環で提供された上山市果樹園地の観測データを使用した。MSMデータから気温、風向・風速、相対湿度、気圧、時刻を特徴量として抽出し、観測データとともにDNNに入力した。学習期間は2021年~2023年の4月、検証は2024年4月とした。DNNの評価関数には2乗平均偏差(MSE)を用い、予測精度の指標として2乗平均平方根偏差(RMSE)を採用した。
図は、上山市果樹園地の一つである相生における2024年4月の日最低気温の解析値補正結果を示す。MSMのRMSEは3.5℃であったのに対し、DNNを用いることで約1.5℃の改善が見られた。学習時のSHAP値を確認すると、気温に次いで風向と時刻が主に精度改善に寄与していることが分かった(図省略)。これにより、気温低下の要因を解明できる可能性が示唆される。
今後は、DNNと機械学習モデルの予測結果を比較し、DNNの低温予測における有用性を検証する。また、低温を記録した際の風向・風速や時刻の特徴を分析し、上山市果樹園地における低温の要因について考察を進める。

謝辞:
本研究の遂行にあたり、観測データをご提供いただきました山形県上山市役所の皆様ならびに上山市の農業従事者の皆様に、心より感謝申し上げます。

1: 山形県農林水産部, 2022. 果樹凍霜害対策マニュアル | https://www.pref.yamagata.jp/documents/21970/houkoku04.pdf, 閲覧日-2025年2月14日
2: かるほく未来創造Lab - 山形市 | https://sdgs.yamagata-u.ac.jp/project/detail_251.html, 閲覧日-2025年2月14日