日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS09] 応用気象学

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:稲津 將(北海道大学大学院理学研究院)、竹見 哲也(京都大学防災研究所)、日下 博幸(筑波大学)

17:15 〜 19:15

[AAS09-P04] ダウンバーストの発生時間帯と総観気象場の分析

*福島 広人1、岡地 寛季2宮本 真希2、Yiwen Mao2、山田 朋人2 (1.北海道大学工学部、2.北海道大学大学院工学研究院)


キーワード:ダウンバースト、総観気象場、ラジオゾンデ、大気安定度

ダウンバースト(以下,DB)とは,積乱雲内で発生した強い下降流が地面に叩きつけられる気象現象である [1].DBの主要な強化要因を以下に3つ列挙する.1つ目は,雨滴の蒸発に伴う潜熱による大気の冷却効果である.大気下層が乾燥している場合,凝結高度は高くなり,凝結高度より下方の降水粒子が蒸発することで空気塊の温度を下げる.その結果,密度が大きくなり,重くなった空気塊によって下降流が強化される.2つ目は,降水粒子による大気の連行である.大気下層が多湿である場合,降水粒子は蒸発しづらく,空気塊を下方へ連行し下降流を強化する.3つ目は,大気中層において相対的に乾燥した風が側方より流入し,積乱雲内部の下降流と合流することで流れを強化する効果である.これらは,大気の状態が不安定な場合や積乱雲の発生・発達過程に伴い発生する現象である[1].本研究においては,大気の安定度に着目して日本全国におけるDBの発生時間および環境場を分析した.

気象庁が発表している竜巻等の突風データベース[2]から現象区別が「DB」とされている195事例(1991年~2024年)を対象として,DBが発生した時間帯を調べた.図1に各月,各時間帯におけるDBの発生確認数を示す.DBの発生確認数は暖候期(6月~8月)の昼過ぎ(14:00~18:59)に多いことが示された.これは,村松ら(2012)でも同様の傾向が報告されている[3].

次に,2002年〜2024年の地上天気図 [4]に基づき,DBが発生した日において大気が不安定となった要因である環境場を特定した.ここでは,DB発生地点から約100 km以内の位置にある気象擾乱を抽出した.
DB発生時における環境場の出現頻度を時間帯(00:00~13:59,14:00~18:59,19:00~23:59)別に分類した結果,停滞前線が発生要因として一番多く,DBの総発生確認数の約33%(60事例)であった。また、太平洋高気圧や台風によるDBの発生は特に14:00~18:59に集中していた.

1日2回(日本時間9:00および21:00)実施されているラジオゾンデ観測[5]から観測後2時間以内にDBが発生した8事例を対象とした.大気の安定度を推定する指標の一つである対流有効位置エネルギー(CAPE)を求めた.8事例におけるCAPEの値は800~1800[J/kg]であり,DB発生直前においては大気が不安定であった.

本研究では,日本全国で発生したDBの抽出を行い,時間帯別の発生確認数および環境場,大気安定度の分析を行った.その結果,DBは停滞前線による発生が多い一方で,6月~8月の昼過ぎに頻出していることが明らかとなった.また,ラジオゾンデによる観測より,DB発生直前における大気の状態は不安定であることが定量的に示された.今後は,DBが昼過ぎに発生する要因を明らかにすることを目指し分析を実施する.

[1]小林文明,2016,ダウンバースト:発見・メカニズム・予測,静山堂出版
[2]気象庁,竜巻等の突風データベース
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/tornado/index.html (2025.1.1閲覧)
[3]村松貴有・川村隆一,2012,日本におけるダウンバースト発生の環境場と予測可能性,天気 59.9 : 827-845.
[4]気象庁,日々の天気図
https://www.data.jma.go.jp/yoho/hibiten/index.html (2025.1.24閲覧)
[5]気象庁,ラジオゾンデによる高層気象観測
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/upper/kaisetsu.html (2025.1.24閲覧)