日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS09] 応用気象学

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:稲津 將(北海道大学大学院理学研究院)、竹見 哲也(京都大学防災研究所)、日下 博幸(筑波大学)

17:15 〜 19:15

[AAS09-P05] GNSSを用いた可降水量の推定手法とその精度評価

*上原 綾悟1山田 卓司1若月 泰孝1 (1.茨城大学)


キーワード:GNSS気象学、可降水量、GEONET

GNSS(Global Navigation Satellite System)などの宇宙測地技術では、大気中の水蒸気によるマイクロ波の伝搬遅延が精密測地や地殻変動観測の誤差源となる。測地観測では誤差源となる水蒸気遅延を信号として利用することにより、GNSSデータから可降水量(Precipitable Water Vapor:PWV)の推定が可能である。PWVとは単位面積の大気柱における水蒸気量の総量であり、GNSSデータを用いたPWV(GNSS-PWV)この情報は豪雨の発生予測精度の向上等へ応用できると期待されている。
 一般的にGNSS-PWVを推定する際には、まず地上受信局の天頂大気遅延量(Total Atmospheric Delay:TAD)を観測方程式から最小二乗法で求める。この時、視線(衛星方向)大気遅延量はTADと仰角に依存するマッピング関数の積で表せる。受信局の位置が近い地点同士では、マッピング関数が非常に似た値になってしまい、各受信局の大気遅延パラメータを安定して求めることができない。したがって、受信局から1000 km以上離れたIGS(International GNSS Service)観測点を座標基準点として観測方程式を解き、TADを推定する。また、受信局の座標を国土地理院のF5解で固定して解く方法もある。
 本研究では、2024年1月~8月の1ヶ月毎における、全国14地点の気象庁のラジオゾンデ(RS)観測から得られたRS-PWVとその近傍のGEONET(GNSS連続観測システム)電子基準点のGNSS-PWVの比較を行った。また、座標基準点の選択の違いや電子基準点の座標の固定の有無におけるGNSS-PWVの精度を評価し、日本における最良の解析手法を検討した。GNSS観測データからPWVの算出には、GAMITソフトウェアと気象庁AMeDASのデータを使用した。
 解析の結果、電子基準点から1000 km以上の基線長を形成する座標基準点では、その組み合わせによらず、GNSS-PWVとRS-PWVの差(二乗平均平方根:r.m.s)は3.00 mm代であることが分かった。また、座標基準点にグアム、ホノルル、香港、ウランバートルを選択し、電子基準点の座標を固定すると両者のr.m.sは3.00 mm以下となり、15分毎の解析でもその精度は保たれた。この4地点は本研究において、比較的日本から遠方に位置しているため、衛星との仰角差が大気遅延パラメータの推定に影響を与えたと考えられ、正確な座標の固定も同様の結果をもたらした。一方、北・東日本の電子基準点では夏季に高PWVの精度がやや低下することが分かった。この原因としてGNSS-PWVは時空間的に平均の値を示すため、特に高いPWVを推定するのがやや困難になると考えられる。しかし、電子基準点とRS放球点の標高差では説明できないバイアスが各電子基準点で見られたため、TADからPWVを算出する際に局地的な影響の除去ができていない可能性も示唆された。
 今後は気象庁メソ客観解析データを用いて、近年の大雨事例について解析し、時空間的なGNSS-PWVの変化について研究を進めたいと考えている。