日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS10] 気象学一般

2025年5月26日(月) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (4) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:清水 慎吾(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、久保田 尚之(北海道大学)、杉本 志織(海洋研究開発機構)、那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、座長:杉本 志織(海洋研究開発機構)、清水 慎吾(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、久保田 尚之(北海道大学)、那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

09:45 〜 10:00

[AAS10-04] 2023年2024年の全球平均気温とその季節予測可能性

★招待講演

*小林 ちあき1、前田 修平2 (1.気象研究所、2.気象庁気候情報課)

キーワード:全球平均気温、季節予測可能性

全球平均年平均気温は2023年に記録的高温となり、2024年はその記録がさらに更新された(WMOPress release 12Jan2024)。このような2023年2024年の異常な全球高温を、季節予報の時間スケールで予測できていたか?
2023年の異常高温の要因は、地球温暖化に加えて、春に発生したエルニーニョ現象に伴って熱帯域のごく浅い海洋表層の水温が上昇したこと、2022/23年冬までほぼ3年間続いたラニーニャ現象の影響などで黒潮続流域など中緯度の海水温が高い状態が持続したこと、北大西洋熱帯域の高い海面水温の影響、などが考えられている。また、大気上端における全球平均正味エネルギー収支に、アルベドの減少が原因とみられる異常が見られ(Minobe et al. 2024)、下層雲の減少がその原因である可能性も指摘されている(Goessling et al. 2025)。
季節予報のために現業運用されている大気海洋結合モデルによる季節予報アンサンブル予報システムが、地球温暖化の影響や、上述のような海洋変動、あるいは大気海洋結合変動をきちんと再現・予測できていれば、2023年2024年の全球平均気温の記録的な高温を予測できていた可能性がある。全球平均気温は、全球で平均することにより大気のカオス的な性質による予測不可能な成分が減少するので、狭い地域の予測に比べ、予測可能性が高いことが期待される。一方、地球温暖化の影響が顕在化する中、全球平均気温の季節予測情報は、地球温暖化の緩和策や適応策の推進にとって、有効な情報となりうる。そこで、気象庁の季節予報アンサンブル予測システムでどのように予測されていたのか、調査を行った。
気象庁の3か月予報に用いられている季節アンサンブル予報システム(結合予測システムCPS3、Hirahara et al. 2023)による数値予報は、毎日00UTCを初期値とした5メンバ―の7か月予測が行われている。また、モデルの系統誤差を求めるため、1991年から2020年の各月半ばと月末を初期値とするハインドキャスト計算も事前に行われている。これらによる全球平均2m気温の予測値をJRA-3Q(Kosaka et al. 2024)の2m気温と比較した。
図は年平均全球平均2m気温の平年偏差の時間発展である。6月を初期値とするCPS3の全球平均2m気温の平年偏差予測(アンサンブル平均)は、JRA-3Qで示される年々変動を良く再現しており、ハインドキャスト期間から求めた偏差予測の誤差の標準偏差は0.04℃だった。しかし、2023年2004年の誤差はいずれも-0.09℃と標準偏差よりも大きな値を示した。ただし、2023年2004年の年平均値が過去最高値を超えることは6月初期値のアンサンブル平均で予測しており、十分ではないが7月の段階で記録的な高温が予測できていた。
2023年と2004年の全球平均気温の記録的な高温はCPS3で7月の段階である程度予測されることが分かった。しかし、ハインドキャスト期間の予測よりは誤差幅が大きかった。この理由について今後検討したい。また、アンサンブルメンバーがどのような予測をしているのか検証を行いたい。