日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS10] 気象学一般

2025年5月26日(月) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (4) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:清水 慎吾(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、久保田 尚之(北海道大学)、杉本 志織(海洋研究開発機構)、那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、座長:清水 慎吾(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、杉本 志織(海洋研究開発機構)、久保田 尚之(北海道大学)

14:00 〜 14:15

[AAS10-14] ビン雲微物理モデルを用いた二峰性雨滴粒径分布の詳細解析

*岡崎 恵1、山口 弘誠2、鈴木 健太郎3、柳瀬 友朗4、佐藤 陽祐5、中北 英一2 (1.京都大学大学院工学研究科、2.京都大学防災研究所、3.東京大学大気海洋研究所、4.兵庫県立大学大学院情報科学研究科、5.北海道大学大学院理学研究院)


キーワード:雨滴粒径分布、ビン雲微物理モデル、水平・鉛直フラックス収束、衝突併合・分裂

雨滴粒径分布は数値気象モデルにおける雲微物理過程の計算において必要な基礎単位である。数値気象シミュレーションの多くは、計算コストの問題から、粒度分布関数を規定した単純なバルク法を用いている。一方で、実大気においては様々な形状の粒径分布が観測される。既存の近似関数で表現することが困難な雨滴粒径分布の一つとして、小さな粒径と中間粒径に二つの数密度のピークを持つ二峰性の雨滴粒径分布(二峰性分布)がある。二峰性分布の形成には雨滴の衝突併合・分裂の平衡過程が関わっていることが、衝突併合・分裂過程のモデルスキーム開発の研究において示され、主となる考え方として扱われてきた。これに対し、近年の観測的な研究において、強い上昇流・風速シアのある環境において雨滴の落下速度の違いに伴って発生するサイズソーティングが二峰性分布形成に寄与することが示唆されている。しかし、二峰性分布形成に関与するサイズソーティングの発生について雨滴ごとの動きに着目した定量的な解析は未だ為されていない。そこで本研究は、粒径分布を陽に計算可能なビン法を採用した理想化シミュレーションを実施し、サイズビンごとの雨滴の数密度変化を調べることで二峰性分布形成の背景にある物理過程を明らかにすることを目指した。本研究は領域雲解像モデルSCALE-RM(Scalable Computing for Advanced Library and Environment-Regional Model)を用いた。シミュレーションでは対流性降水システムが発生し、二峰性分布が複数形成された。中でも、上昇流が弱まった衰退期において形成された二峰性分布に着目した。二峰性分布の形成に寄与した物理過程を明らかにするために、局所極小値と局所極大値を構成する粒子の各物理過程による数密度変化をそれぞれ比較した。その結果より、二峰性分布が存在した領域における水平・鉛直フラックス収束は局所極小値の粒径ビンで負のパターンが確認されたのに対し、局所極大値の粒子は正のパターンが確認された。よって、二峰性分布の形成には水平・鉛直フラックス収束が寄与していたことがわかった。これは、雨滴のサイズごとの落下速度の違いに伴う移流過程の異なりが原因となって発生したと言える。以上に述べたシミュレーションにおいては、雨滴の分裂過程が計算されていなかった。そこで、SCALE-RMのビン法へ分裂過程を実装し、その影響を調べた。その結果より、分裂過程を含む場合においても、水平・鉛直フラックス収束過程が要因となって二峰性分布が形成されていたことがわかった。その一方で、衝突併合・分裂過程が寄与した二峰性分布も形成されていた。そのため、二峰性分布を最も寄与する物理過程ごとに分類し、それぞれの特徴を比較することで包括的にメカニズムを理解する必要があると考えられる。また、実装された分裂過程の正確性について観測データと比較することで検証することも今後求められる。