15:00 〜 15:15
[AAS10-18] 関東地方の対流性降水におけるライトニングジャンプの発生タイミング

キーワード:局地的雷雨、極端現象、JLDNデータ、積乱雲
1. はじめに・使用データ
関東地方では,夏季午後に局地的で激しい雷雨が頻発する.局地的雷雨は,しばしば豪雨による内水氾濫や,突風・竜巻による建物への被害などを引き起こし,甚大な被害をもたらす.したがって,局地的雷雨の予測精度をあげることで,これらの災害による被害の軽減が期待される.
近年,雷活動の活発化は,豪雨や竜巻などの極端現象が出現する前兆として注目されている.極端現象の出現前に雷活動が急激に活発化する現象は”Lightning jump (LJ)”と呼ばれ,米国ではすでに竜巻予報に活用されている.関東地方でLJに注目した研究として, 2013年9月2日に関東平野で発生した竜巻について,メソサイクロンと雷活動の活発化との関係を時空間的に解析したNishihashi et al. (2015)が挙げられる.その事例では,LJを検出した約14分後に竜巻が発生していたが,この研究はその事例のみの解析であり,LJと極端現象の発生タイミングとの関係が一般的であるか,複数事例で検証する必要がある.また,LJの発生タイミングと雷雲の発達過程について統計的な解析によりその関係性を解明することで,LJが極端現象に先行する場合には,予測精度の向上にもつながることが期待される.そこで本研究は,2014~2023年の8月に関東地方で発生した対流性降水64事例日を対象に,LJの発生タイミングについて,雷雲の発達段階に注目して解析した.
本研究では,落雷・雲放電データは株式会社フランクリン・ジャパンが保有するJapanese Lightning Detection Network (JLDN;全国雷観測ネットワーク)データを,共同研究として提供を受け,使用した.降水強度データは,気象庁合成レーダーGPVを使用した.
2. 結果・考察
LJの検出には,検出確率が最も高く,誤検出率が最も低いとされている2σアルゴリズム(Schultz et al. 2009)を用いた.LJを検出した日は全64事例日中26事例日であり,検出回数は107回であった.気象庁の突風データベースにおいて,竜巻・ダウンバースト・突風に分類されているものを「突風」とすると,LJ 検出後1時間以内に突⾵が発⽣した回数は12回であった.そのうち,11回は突風発生35分前〜発生直前にLJが検出されていた.Schultz et al. (2009)は,LJ検出後45分間,突風の警報を出す仕組みを提唱しており,本結果は先行研究で想定されているリードタイムの範囲内であった.また,事例日に関東地方で発生した突風の約50%は,発生前にLJが検出されていた.
次に,LJと雷活動や降水との関係に着目した.落雷数と雲放電数はLJ発生10分前からLJ検出時間にかけて急上昇し,LJ発生後20分ほど雷活動が活発な状態を維持してから,徐々に終息した.強雨域(降水強度30 mm/h以上)の面積はLJ検出20分後に最大となり,LJは強雨域の発達ピークに先立って発生していた.
一般的に雷雲のライフサイクルは,発達期,成熟期,衰弱期の3段階に分けられる(北川 2001).本研究では,LJの発生は,強雨域が発達のピークを迎える前,かつ突風が発生する前に相当していた.突風は,積乱雲の成熟期初期から発生することが知られている(石原・田畑 1995).また強雨域の発達ピーク後には,降水システムが再発達して再度強雨域が広がった場合を除き,LJは検出されなかった.これらの結果より,LJは発達期から成熟期に移行するタイミング,もしくは成熟期の初期で発生する現象と言える.
3. 結論
本研究より,LJは極端現象の発生や強雨域の発達ピークに先立って発生し,雷雲のさらなる発達を意味する現象であることが示された.したがって,LJの検出は雷雲の発達段階に対応した雷雨の活発度合いを推測する上で,重要な指標になると考えられる.今後は,LJが極端現象の予測手段として実用的であるか,さらに検証する必要がある.
参考文献
石原正仁・田畑 明 1995. 降水コアの下降によるダウンバーストの検出. 天気 43: 7-18.
北川信一郎 2001.『雷と雷雲の科学──雷から身を守るためには』森北出版株式会社.
Nishihashi, M., Arai, K., Fujiwara, C., Mashiko W., Yoshida S., Hayashi. S. and Kusunoki. K. 2015. Characteristics of lightning jumps associated with a tornadic supercell on 2 September 2013. SOLA 18: 110-115.
Schultz, C.J., Petersen, W.A. and Carey, L.D. 2009. Preliminary development and evaluation of lightning jump algorithms for the real-time detection of severe weather. Journal of Applied Meteorology and Climatology 48: 2543-2563.
関東地方では,夏季午後に局地的で激しい雷雨が頻発する.局地的雷雨は,しばしば豪雨による内水氾濫や,突風・竜巻による建物への被害などを引き起こし,甚大な被害をもたらす.したがって,局地的雷雨の予測精度をあげることで,これらの災害による被害の軽減が期待される.
近年,雷活動の活発化は,豪雨や竜巻などの極端現象が出現する前兆として注目されている.極端現象の出現前に雷活動が急激に活発化する現象は”Lightning jump (LJ)”と呼ばれ,米国ではすでに竜巻予報に活用されている.関東地方でLJに注目した研究として, 2013年9月2日に関東平野で発生した竜巻について,メソサイクロンと雷活動の活発化との関係を時空間的に解析したNishihashi et al. (2015)が挙げられる.その事例では,LJを検出した約14分後に竜巻が発生していたが,この研究はその事例のみの解析であり,LJと極端現象の発生タイミングとの関係が一般的であるか,複数事例で検証する必要がある.また,LJの発生タイミングと雷雲の発達過程について統計的な解析によりその関係性を解明することで,LJが極端現象に先行する場合には,予測精度の向上にもつながることが期待される.そこで本研究は,2014~2023年の8月に関東地方で発生した対流性降水64事例日を対象に,LJの発生タイミングについて,雷雲の発達段階に注目して解析した.
本研究では,落雷・雲放電データは株式会社フランクリン・ジャパンが保有するJapanese Lightning Detection Network (JLDN;全国雷観測ネットワーク)データを,共同研究として提供を受け,使用した.降水強度データは,気象庁合成レーダーGPVを使用した.
2. 結果・考察
LJの検出には,検出確率が最も高く,誤検出率が最も低いとされている2σアルゴリズム(Schultz et al. 2009)を用いた.LJを検出した日は全64事例日中26事例日であり,検出回数は107回であった.気象庁の突風データベースにおいて,竜巻・ダウンバースト・突風に分類されているものを「突風」とすると,LJ 検出後1時間以内に突⾵が発⽣した回数は12回であった.そのうち,11回は突風発生35分前〜発生直前にLJが検出されていた.Schultz et al. (2009)は,LJ検出後45分間,突風の警報を出す仕組みを提唱しており,本結果は先行研究で想定されているリードタイムの範囲内であった.また,事例日に関東地方で発生した突風の約50%は,発生前にLJが検出されていた.
次に,LJと雷活動や降水との関係に着目した.落雷数と雲放電数はLJ発生10分前からLJ検出時間にかけて急上昇し,LJ発生後20分ほど雷活動が活発な状態を維持してから,徐々に終息した.強雨域(降水強度30 mm/h以上)の面積はLJ検出20分後に最大となり,LJは強雨域の発達ピークに先立って発生していた.
一般的に雷雲のライフサイクルは,発達期,成熟期,衰弱期の3段階に分けられる(北川 2001).本研究では,LJの発生は,強雨域が発達のピークを迎える前,かつ突風が発生する前に相当していた.突風は,積乱雲の成熟期初期から発生することが知られている(石原・田畑 1995).また強雨域の発達ピーク後には,降水システムが再発達して再度強雨域が広がった場合を除き,LJは検出されなかった.これらの結果より,LJは発達期から成熟期に移行するタイミング,もしくは成熟期の初期で発生する現象と言える.
3. 結論
本研究より,LJは極端現象の発生や強雨域の発達ピークに先立って発生し,雷雲のさらなる発達を意味する現象であることが示された.したがって,LJの検出は雷雲の発達段階に対応した雷雨の活発度合いを推測する上で,重要な指標になると考えられる.今後は,LJが極端現象の予測手段として実用的であるか,さらに検証する必要がある.
参考文献
石原正仁・田畑 明 1995. 降水コアの下降によるダウンバーストの検出. 天気 43: 7-18.
北川信一郎 2001.『雷と雷雲の科学──雷から身を守るためには』森北出版株式会社.
Nishihashi, M., Arai, K., Fujiwara, C., Mashiko W., Yoshida S., Hayashi. S. and Kusunoki. K. 2015. Characteristics of lightning jumps associated with a tornadic supercell on 2 September 2013. SOLA 18: 110-115.
Schultz, C.J., Petersen, W.A. and Carey, L.D. 2009. Preliminary development and evaluation of lightning jump algorithms for the real-time detection of severe weather. Journal of Applied Meteorology and Climatology 48: 2543-2563.