日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS10] 気象学一般

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:清水 慎吾(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、久保田 尚之(北海道大学)、杉本 志織(海洋研究開発機構)、那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

17:15 〜 19:15

[AAS10-P07] 2023年7月中旬に秋田で発生した豪雨の数値シミュレーション

★招待講演

*室井 清雅1、川村 隆一1、川野 哲也1望月 崇1 (1.九州大学 大学院理学府 地球惑星科学専攻)


キーワード:梅雨、豪雨、日本海

2023年7月14日から16日にかけて秋田県では記録的な大雨となった。本事例では東北地方北部に停滞した梅雨前線、ユーラシア大陸から日本海を東進した温帯低気圧、そしてフィリピン付近を西進する台風の三者の影響が複合して大雨をもたらした可能性がある。Hirata and Kawamura (2014)では北西太平洋から海南島にかけて西進する台風が梅雨期の中部日本の日本海側で大雨を誘起することを示しており、本事例の台風Talimも同様の経路をたどった。本研究では数値シミュレーションを用いて詳細な解析を行い、秋田県に大雨をもたらした要因を調査した。
数値シミュレーションには領域気象モデルWRF version 4.5.1を用いた。領域は水平解像度がそれぞれ9 km (D1)、3 km (D2)の2つのドメインからなり、双方向ネスティングを適用した。初期値と境界値にはNCEP-FNL、OISSTデータを用いて、2023年7月12日00UTCから16日12UTCまで108時間計算を行った。シミュレーションの降水について解析雨量との比較を行い、降水量は過小評価であったものの、降水分布は概ね再現できていたことを確認した(Fig.1)。
降水量極大期では、台風と太平洋高気圧の間で東西気圧勾配が強まり、台風の東側や太平洋高気圧の西縁から北向きに水蒸気が輸送されていた。またユーラシア大陸の温帯低気圧と太平洋高気圧の間でも南北気圧勾配が強まったことで、日本海で1500 kg m-1 s-1を超える鉛直積算水蒸気フラックス帯が形成され、多量の水蒸気が秋田県に流入していた。さらに秋田県沖では小低気圧の発達に伴う収束帯が形成され、秋田県に豪雨がもたらされた。
湿潤空気塊の流入をラグランジュ的観点から調べるため、RIP version 4.7を用いて秋田県付近の降水域の高度0.5 kmと1.5 kmに空気塊を配置して、7月14日22UTCから70時間後方流跡線解析を行った(Fig.2)。太平洋高気圧の西縁や台風北東周辺部など遠隔海域を起源とする空気塊は豊富な水蒸気を維持して降水域へ流入していたのに対して、大陸付近を起源として大気境界層へ流入する空気塊は14日以降高度を急激に下げて、日本海で湿潤化して降水域へ流入していた。
以上より台風と温帯低気圧の複合作用によって遠隔海域からの豊富な水蒸気が輸送されたことに加えて、秋田県沖での小低気圧の発達が下層収束帯の形成を促進したことで豪雨が発生したことが示唆される。小低気圧の形成・発達過程について朝鮮半島の地形も影響している可能性があるため、地形改変実験も行った。詳細は当日発表する予定である。