日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS10] 気象学一般

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:清水 慎吾(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、久保田 尚之(北海道大学)、杉本 志織(海洋研究開発機構)、那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

17:15 〜 19:15

[AAS10-P11] 成層圏硫酸塩ジオエンジニアリングによる冬季の偏西風の変化と日本への影響

*長根 汐南1釜江 陽一2 (1.筑波大学理工情報生命学術院、2.筑波大学生命環境系)


キーワード:成層圏硫酸塩ジオエンジニアリング、偏西風、ブロッキング高気圧、冬季東アジアモンスーン

成層圏硫酸塩ジオエンジニアリングとは、成層圏に二酸化硫黄を注入し硫酸塩エアロゾルを発生させることで放射強制力を低下させ、地球温暖化を緩和する手法のことである。この手法には様々な副作用も存在し、冬季の偏西風の変化はその一つである。一方で、偏西風の蛇行に関連したブロッキング高気圧の発生位置や頻度の変化や、偏西風やブロッキング高気圧の変化が日本の気候に与える影響については詳しく分かっていない。本研究では、成層圏硫酸塩ジオエンジニアリングによる冬季の偏西風の変化と日本への影響を調査した。
気候モデルを用いた感度実験の結果を解析することにより、成層圏硫酸塩ジオエンジニアリングの影響を放射強制力弱化による効果と熱帯下部成層圏昇温による効果に分離した。偏西風の変化は後者の影響を強く受け、成層圏で強化された極渦が対流圏に伝播することで、温暖化時よりもさらに極方向へシフトし蛇行しにくくなった。これに対応して、地上の気圧や風も変化し、北極振動と北大西洋振動の正の位相、シベリア高気圧の強化、アリューシャン低気圧の弱化がもたらされ、冬季東アジアモンスーンの風向きはより北へと変化した。一方で、地上気温は両者の影響を強く受け、東シベリアブロッキングや西・中央シベリアブロッキングの増加、北極振動の正の位相、全球的な冷却の影響により、日本を含む東アジアで寒冷化傾向が確認された。本研究により、成層圏硫酸塩ジオエンジニアリングは偏西風の位置のみならず、その蛇行やブロッキング高気圧の発生頻度についても影響を与えることが示された。これが地上の大気循環や気温に影響を及ぼすことで、冬季東アジアモンスーンの風向きは北よりに変化、日本を含む東アジア全域で寒冷化することが示唆された。