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[AAS11-04] 全球化学気候モデルによるメタン濃度過去再現実験
キーワード:メタン、化学気候モデル、過去再現実験、気候変動
ここ数年における気温の高まりを受けてパリ協定の1.5度目標の達成が危ぶまれる中、二酸化炭素(CO2)の排出抑制に加えて、短寿命放射強制因子(SLCF)の排出削減に向けた努力がより一層重要になっている。中でも、CO2に次いで放射強制力が大きいとされるメタン(CH4)の排出抑制とそれによる気候変動の緩和に寄せられる期待は大きい。大気中におけCH4濃度の決定には、地表からの排出量に加えて、大気による輸送、大気中の化学反応が重要であり、しかもそれらはそれぞれに気候変動からの影響を受けるため、CH4の排出量削減が実現したとしても、それによりどの程度CH4濃度が減少し、その結果としてどの程度の気温上昇の抑制が達成されるのかを定量的に評価することは、簡単ではない。こうした複雑に関連しあった大気中の排出、輸送、化学過程を陽に表現した数値モデルである化学気候モデル(CCM)は、こうした重要な課題に対して科学的にアプローチする際に不可欠なツールである。しかしながら、これまでに行われてきたCH4の変化による気候影響を評価するための数値モデル研究では、多くの場合でCH4の濃度をモデルに与える設定で計算を行っており(濃度駆動実験)、CH4の排出量をCCMに与えモデル内でCH4の濃度を計算する(排出量駆動計算)ことによって、排出量の削減による気候への効果を直接的に評価する研究は限られた数しか行われてこなかった。我々は、全球規模のCCMであるMIROC6-CHASERモデルを使って排出量駆動によるCH4濃度の計算を行い、排出量の変化による気候影響の直接的な評価に取り組んでいる。今回は、MIROC6-CHASERを大気モデルとして用い(SSTと海氷データを外生的に与える)、産業革命以前(1850年)から現在(2014年)までのCH4排出量の変化をモデルに与えて、過去のメタン濃度を再現する実験を行った結果について報告する。
計算に用いたMIROC6-CHEMはOx、NOx、Hox、CH4を含むVOC、ハロゲン化合物、大気エアロゾルの大気中濃度を計算し、それらの濃度変化による大気放射の変調を介した気象場の変化を陽に計算することができる。今回の計算では水平分解能はT42(格子間隔は約320km)、鉛直方向には地表面から高度約55kmまでを36層に分けた設定を採用した。このモデルを用いて、まずは産業革命前の全球地表CH4濃度の推定値である約800ppbvを再現するような排出量を評価したところ、約163TgCH4/yrという値が得られた。この状態から、SSTと海氷の過去から現在の変化をモデルに与え、化石燃料、農業、廃棄物処理などの人間活動に由来する人為起源のCH4排出を現在に向けて増加させ、大気中のCH4濃度の変化を計算したところ、観測された濃度の増加をよく再現することができた。ただし、1970年代以降、観測された濃度を過小評価する傾向があり、最大で100ppbv程度の差を生じる結果となっている。こうした傾向は先行研究におけるCCMの計算結果と整合的であるが、その原因はまだよく分かっていない。観測されたCH4濃度からは、濃度の変化率に大きな経年変化があることが分かっており、2000年代前半に向けてCH4濃度の増加が鈍化した後に再び濃度増加が起こるという特徴が知られているが、MIROC6-CHASERモデルではそうした特徴をよく捉えることができた。この実験の設定のうち、SSTと海氷の値だけ産業革命前の状態で保持し、温暖化などの気候変動が起こらない状態にした感度実験を行ったところ、CH4の地表濃度は気候変動を与えた場合に比べて最大で4%増加した。これは、逆に言えば過去の気候変動にはCH4濃度を減少させる効果があったことを示唆している。発表では、そのメカニズムについての解析結果を報告する予定である。
計算に用いたMIROC6-CHEMはOx、NOx、Hox、CH4を含むVOC、ハロゲン化合物、大気エアロゾルの大気中濃度を計算し、それらの濃度変化による大気放射の変調を介した気象場の変化を陽に計算することができる。今回の計算では水平分解能はT42(格子間隔は約320km)、鉛直方向には地表面から高度約55kmまでを36層に分けた設定を採用した。このモデルを用いて、まずは産業革命前の全球地表CH4濃度の推定値である約800ppbvを再現するような排出量を評価したところ、約163TgCH4/yrという値が得られた。この状態から、SSTと海氷の過去から現在の変化をモデルに与え、化石燃料、農業、廃棄物処理などの人間活動に由来する人為起源のCH4排出を現在に向けて増加させ、大気中のCH4濃度の変化を計算したところ、観測された濃度の増加をよく再現することができた。ただし、1970年代以降、観測された濃度を過小評価する傾向があり、最大で100ppbv程度の差を生じる結果となっている。こうした傾向は先行研究におけるCCMの計算結果と整合的であるが、その原因はまだよく分かっていない。観測されたCH4濃度からは、濃度の変化率に大きな経年変化があることが分かっており、2000年代前半に向けてCH4濃度の増加が鈍化した後に再び濃度増加が起こるという特徴が知られているが、MIROC6-CHASERモデルではそうした特徴をよく捉えることができた。この実験の設定のうち、SSTと海氷の値だけ産業革命前の状態で保持し、温暖化などの気候変動が起こらない状態にした感度実験を行ったところ、CH4の地表濃度は気候変動を与えた場合に比べて最大で4%増加した。これは、逆に言えば過去の気候変動にはCH4濃度を減少させる効果があったことを示唆している。発表では、そのメカニズムについての解析結果を報告する予定である。