日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] 大気化学

2025年5月26日(月) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (5) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:江波 進一(国立大学法人筑波大学)、入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、石戸谷 重之(産業技術総合研究所)、中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、座長:松井 仁志(名古屋大学大学院環境学研究科)

10:15 〜 10:30

[AAS11-12] 西太平洋暖水プール上空における一酸化ヨウ素・オゾン変動を駆動するプロセスの評価

*関谷 高志1高島 久洋2,1金谷 有剛1竹谷 文一1須藤 健悟3,1、Martina Friedrich4、Michel Van Roozendael4 (1.海洋研究開発機構、2.福岡大学 理学部、3.名古屋大学 大学院環境学研究科、4.ベルギー王立宇宙科学研究所)

キーワード:対流圏オゾン、ヨウ素化学、化学輸送モデル、船舶観測

対流圏オゾンはCO2やCH4に次ぐ強力な温室効果ガスであり、ヨウ素化学は海洋上でのオゾン破壊に無視できない影響を及ぼす。ヨウ素が対流圏オゾンに与える影響については、三次元化学輸送モデル(Chemical Transport Model; CTM)を用いて研究されてきた。しかし、ヨウ素とオゾンの関係を支配する要因が依然として不明であるため、CTMでは、船舶観測によって観測された西太平洋暖水プール(Western Pacific Warm Pool; WPWP)上の一酸化ヨウ素(IO)とオゾンの負の関係を捉えることができていなかった(Takashima et al., 2022)。本研究では、2014年11月から12月にかけての船舶観測と高解像度CTMにより、IOとオゾン濃度における小規模な気象変動とオゾン非依存性の海洋ヨウ素放出過程の影響を調べた。高解像度(0.56°)モデルでは、観測地点におけるIOとオゾンの間に負の相関係数(r = -0.45)が示されたが、これは粗い解像度(2.8°)モデル(r = 0.08)よりも、船舶観測データ(r = -0.70)から得られた相関係数に近かった。モデル感度計算により、0.56°と2.8°解像度CTMにおける相関係数の差異は、大気輸送過程のみ、オゾン依存性の海洋ヨウ素放出過程というよりも、小規模な大気輸送–化学反応過程の相互作用から生じることが示された。0.56°解像度CTMでは、WPWP上の大気境界層内とその外側との混合が減少することで、ヨウ素触媒サイクルを介したオゾン消失量(0.56 ppbv day-1)が2.8°解像度CTMにおける消失量(0.20 ppbv day-1)よりも大きくなるためである。さらに、海洋由来のCH2I2、CH2IBr、CH2IClの光解離など、オゾン非依存性のヨウ素放出過程を組み込むことで、CTMのIO-オゾン相関係数(r = -0.50)が改善した。これらの知見は、WPWP上空のIOとオゾンの変動において、小規模な大気輸送–化学反応過程の相互作用とオゾン非依存性の海洋ヨウ素放出過程が重要な役割を果たしていることを示唆している。